徐々に近付く変革すべき時

・・・それでゴールドバーグにより城の中にまで案内されたルーク達。
「・・・これより先が謁見の間になりますが、謡将にティア=グランツの二人はこの兵士に付いていっていただきたい」
「っ・・・!」
「分かりました・・・ティア、ここは抑えろ。不満だと言うなら後で言えばいい。ここで妙に騒ぎだてするようであればお前の心象が悪くなるばかりか、ダアトのイメージまでもみっともなく下げてしまうことになるぞ」
「・・・分かったわ」
そのまま謁見の間に向かう・・・かに思われたが、階段の前で立ち止まったゴールドバーグからのファブレ邸襲撃の件を聞かんとする別行動の要望にティアはハッとする。だがすかさずヴァンが了承と共に滲む怒りをなだめすかすよう声をかけたことで渋々了承を返した。
「では我々はこちらに・・・」
(どうなるんだろうな、ティア・・・)
二人が兵士と共に脇に逸れた事で改めて進み出すゴールドバーグの後ろで、ルークは内心で不安気味にティアの事を考えていた。















・・・そんな風にしてルーク達とティアとヴァンの二人が分けられた状況になったのだが、ルークは謁見の間でのやり取りを特に変える様子もなくいたために前のように終わった。

それで謁見も終わりルーク達は城を出ていくのだが、その一方でティアは一人城の中の一室にいた。



「・・・っ・・・!」
ヴァンと離され、一人部屋で椅子に座りながらもイライラと表情を険しくさせていた。
‘ガチャッ’
「っ・・・モースさ、ま・・・?」
そんな時に部屋の扉が開きモースが入室してきてティアは立ち上がりながら喜色を浮かべかけたが、明らかに不機嫌そうな様子を浮かべるその表情に戸惑いを浮かべる。
「・・・貴様は、なんてことをしでかしてくれたのだ・・・!」
「え?・・・なんてこととは・・・」
「決まっているだろう!ファブレ邸に譜歌を用いて侵入し、ヴァンを襲ったことだ!何故あんなことをした!」
「な、何故って・・・そんなに怒られるようなことは私は、何も・・・」
「何も、だと・・・?・・・貴様は何も分かってはおらん!私がどれだけ陛下に公爵達に頭を下げたと思っているのだ!」
「えっ・・・!?」
そして静かに声を上げる姿にティアは何事かと思っていたが、その様子に瞬時に怒りを爆発させたモースの勢いにおろおろとしだす。だが尚も激昂していく中でモースが口にした事実にティアは今までで最も驚き、目を丸くした・・・モースが頭を下げていたというティアにとって信じられないし、そうする必要がないと思っていた事実に。
「・・・あれだけのことをしておいて、貴様は分からんというのか・・・キムラスカの重臣であり、王族でもあらせられるファブレの家に侵入したという行為がいかに無礼で立場を省みない物かを・・・!」
「ぶ、無礼で立場を省みないなど・・・私は兄を狙っただけで「言い訳などどうでもいい!私が言っているのはキムラスカ、それもファブレ邸でそのような愚行を起こす意味を考えてもいなかった貴様の愚かさだ!」・・・!」
それでもまだ色々言い足りないモースは溢れる怒りを抑えながら話を進めティアは何とか自分は悪くないと言いかけるが、言い訳だと断じ怒りを再度爆発させて愚かと言いきる姿に絶句した。ティア自身色々ありはしたが、敬愛の念はまだ残っているモースからまさかここまでの怒りが返ってくると思わなかった為に。
「それにだ!何故貴様は軍服を着てファブレ邸に侵入するなどという事をした!?今はヴァンを襲った理由については置いておいてやるが、神託の盾の軍服を着た者がファブレの人々を制圧などしたとなれば神託の盾は愚か我々の情操教育が疑われるばかりか体面まで汚された事となったのだぞ!そのような暴挙を自分の判断で易々と行うような者が神託の盾にいるのだとな!もっと言うなら貴様がヴァンという神託の盾においても肉親という事実においても、身内を襲ったことで尚私は陛下に言われたのだ!何故このような事態になったと!」
「っ!」
まだまだ怒りをぶつけていくモースは神託の盾にダアトの面子を汚されたことを上げると、流石にティアも自分の着ている軍服を瞬時に見て表情を青くした。そこまでの事になったのだということを知り。








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