徐々に近付く変革すべき時

「と言ってもルークに言った通りよ?一人にさせないと、そう示すために私の覚悟の程を伝える為のね」
「でも口付けをする必要があったでしょうか?ルークさんにそれを伝えるためとはいえ・・・」
「そうね・・・私がそうしたかったからよ」
「・・・え?」
ジュディスはそこで立ち止まりすずに自分の考えを話すのだが、珍しく理解出来ないとキョトンと目を丸くした。
「フフ、言ったでしょう?私の唇に意志は軽くないって・・・同情や説得力を強調するためだけにあんなことはしないわ。私があぁしたいと思ったのは単純に彼にならいいと思ったからよ。口付けをしてもいいとね」
「・・・ジュディスさんはルークさんの事を好きになったのですか?」
「・・・好意的に思っているのは間違いないわね。でもそれ以上に彼の事を悲しいとも思っている・・・彼の事を彼自身から聞けば聞くほどに・・・」
そっとジュディスは柔らかく微笑み考えを告げるのだが、すずの確認するかのような問い掛けに自身も悲し気に目を伏せる。
「彼は一人で寂しくないと言ったわ・・・私もユーリ達に会うまではろくに仲間と一緒に旅をしたことはなかったけれど、バウルがいたから寂しいと感じたことはなかった。彼とは心を通じあわせていたから・・・けれどルークは寂しいと言わなかった。何人も周りにいても心を本当に通わせていなかったのにね」
「・・・ルークさんの在り方は忍に通ずる所があります。己を殺し、任の為に動く・・・昔のルークさんだったら無理だとは思いますが、今のルークさんはユーリさん以上に忍として滅私奉公出来ると思います・・・ですがそれは普通の人としての在り方とは違う物になりますし、何より自分がそうだという自覚がないのは危険であると同時に・・・哀れだと思います。人として当然に持つべきである感情が薄れていることの証明でもあるのですから」
それで自分の事を例に上げジュディスは話し、すずもその話にルークの在り方を語っていくにつれ暗く表情を落としていく・・・すずとて忍である前に人間である、それもまだ十二という歳の少女だ。いくら心を刃で殺そうとしても殺しきれるものではないし、だからこそ人の心の機微も子供ながらに一端の大人より聡く理解出来るのだ。ルークはすずと違い自覚がないからこそ自らの意思では引き返すことが出来なくなってるのだと。
「それにアニー達とも話したけれど、ルミナシアのローレライは彼が優しいと言った。それは間違いではない・・・けれどその優しさは自分の身を省みない物で、あの姿も含めてティア達が作り上げてきた彼女達にとって分かりやすい優しさを体現させた物・・・そしてそれが彼の考え方までもを狭めた」
「ですがだからと言って無理にその考え方を矯正して変えてしまうことはルークさんの心に負荷をかけることになる。だから無理のないようにしないといけない・・・医者の卵としてのアニーさんの見解も含んだ上でそう決めましたね」
更に話は進みカイツールで話した中身について二人は確認する。ルークについて受けた印象も合わせてその心理を考え無理はしないしさせないようにしようと言ったことを。
「そう・・・ルークの今の姿は普通に見れば歪な物だけれど、彼の優しさだけに限って言えば本質は変わらず純粋なまま・・・それを知れば知るほど私の心の中にルークへの好意と悲しいという気持ちが入り乱れて広がっていった・・・これから私の気持ちがどうなるかは私にも分からないけれど、少なくとも今口付けをしてもいいと思うくらいには彼に惹かれている事は間違いないわ」
「そうなんですか・・・」
それらに今までの歩みを含めた上で自分の気持ちをジュディスはすずに笑顔を浮かべて告げた、ルークへの好意は確かだと。すずはその意思に納得して声を上げた。










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