徐々に近付く変革すべき時

(後は兄さんだけれど、アクゼリュスで教官達全員を相手にする事はないからその場で戦ってもあまり意味はないし、あの場では見逃した方がいいわね・・・教官達の動きが分からなくなりかねないし・・・)
更にヴァンについての考えを巡らせるのだが、それもまた過大評価の極みに到っていた。自分なら兄を倒せると、かつて六人がかりでようやく倒せた相手に対し真っ向から一人で組伏せられると考え。
「・・・ティア、少しよろしいでしょうか?」
「っ・・・イオン様、どうされたのですか?」
そんな時に後ろからイオンが声をかけてきたので少々驚きつつ、ティアは平静を装い振り返る。
「いえ、バチカルに着くまでに話をしたかったのですが・・・貴女はどのような理由でファブレ邸に入り、ヴァンを襲ったのかを聞きたくて」
「っ・・・なんで、その事を・・・っ!」
だが繰り出された気まずげな問いにたまらず動揺しながら問い返した、また聞かれたくない事をぶり返されたのだが他ならぬイオンが言っているために一応は答えねばと拒否を返したいのを抑えつつ。
「いえ・・・何か事情があるのなら僕もせめて貴女を擁護したいと思ったんです。何か力になれるならと・・・」
「っ、イオン様・・・」
「ですが事情がハッキリしない事には僕も貴女の事を擁護出来ないんです・・・あちらがそう思う気持ちも分かりますし、言いたくないで通すことは出来ませんから・・・」
「・・・っ!」
それでイオンがうつむきながらも味方をしたいと言った時には表情をパッと明るくしかけたが、事情を聞かないことにはと言われ息を詰まらせた。それはティアの意に沿うことではないために。
「・・・すみませんがイオン様、それは個人的な事情の為に言えません。ですが大丈夫です。私はやましいと思えるような事をしたという気持ちは一切ありませんから」
「・・・そうですか・・・そういうことでしたら分かりました。僕からは何も言わないでおきます。では・・・」
だからこそその申し出と話を共に拒否するティアにイオンは了承を返し、頭を下げた後で場を離れていく。
「・・・今兄さんの事を言っても誰も分かってくれはしない。せめてアクゼリュスで兄さんが動いてからでないと・・・」
その後ろ姿を見ながら申し訳なさそうにティアは呟くが、それは決してヴァンが悪いからと言ってファブレ邸に侵入したことが許される物ではない・・・ということを全く考えていなかったものだった。






「・・・あ、イオン様戻りましたか?」
「えぇ・・・」
「・・・その様子だと結果はダメだったみたいだな。あの姉ちゃんは」
「・・・はい、その通りです」
・・・それで場所は移り、ルークのいる船室とはまた別の部屋。ここにはアニスにカイツールの港で合流した面子以外のアドリビトムメンバーがいた。
そこに入室したイオンはアニスの出迎えの声を受けるが、暗く冴えない様子を見てユーリが答えを察すると静かに頷く。
「ティアに本音を話してもらいたいと思いせめて話しやすいようにと一人で会いに行きましたけど、彼女の答えは依然として拒否のままでした・・・多分何度言ってもティアの答えは変わらないと思いました」
「それで彼女を擁護するのはやめよう、と決めたのですね?」
「はい・・・」
そして自分がせめてと考えた好意が無にされた事を嘆くイオンは、ヒューバートの声にまた力ない声でうなだれた。










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