聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

「それよりカノンに御用だったのでは?」
「あっ、そういや・・・つっても大した用じゃねーよ。ただ一人で考え事すんのももういいかってな・・・」
そこで自身から話題を転換するムウにルークは少し気まずげに頭をかきながらも、正直に自身の思ったことを口にする。
『成程・・・話に聞いたよう、素直な子供のようですね』
『あぁ、初めて会ってから誤魔化すとかそう言ったことが苦手だったからな・・・その分、今何か抱えているのも分かりやすいが』
『・・・成程』
そんな姿をテレパシーで微笑ましげに話す二人だが、カノンから訳ありとすぐにわかる言葉を向けられムウはなんとも言えない口調で応える。と、カノンはそこで甲板のある方へと案内するよう手を向ける。
「でしたら甲板に行き、風景を見ながら潮風を感じませんか?部屋の中にずっといるよりは気が楽になるかと思われますが」
「風景に潮風、ね・・・わかった、そうするか。んじゃ行こうぜ、カノン・・・と、ムウも行くか?」
「えぇ、お付き合いさせていただきます」
それで微笑と共に気分転換をしてはと勧めるカノンにルークはすぐに頷き、来るかと視線を向けられたムウも笑顔で頷き二人の後を付いていく。
『気が利きますね。これもファブレという屋敷で執事として過ごしてきた結果ですか?』
『まぁな。ただ作法やらなんやらと面倒な点は多々あったが、慣れてしまえばどうということはない』
『フフ、これなら地球に戻ってもグラード財団で執事として置いてもらえるのではないのですか?』
『冗談はよせムウ・・・と言いたいが、本当に執事として動けるようにしてもらった方がいいかもな・・・もしルークをキムラスカが受け入れないとなったのなら働き口が必要だからな・・・』
『・・・どうやら貴方も色々考えているようですが、とりあえずその考えは甲板に行ってから聞きますよ。貴方の考えを聞かないことには我らも動きようがありませんからね』
そんな中でテレパシーで会話をしていく二人だが、和やかな会話から空気が重くなるカノンにムウは腰を据えて後で聞くと告げる。そのカノンの様子からルークに対する想いが並々ならぬ物であると感じた上、それを解決せねばカノンがこの世界を選ぶかどうかはともかくにしてもしこりが残りかねない為に・・・















・・・ルークとカノン、二人が二人ともに重い何かを抱え込んでいる。

そのような空気を滲ませてこそいるが甲板の上では穏やかに時は過ぎていき、船はバチカルの港へと辿り着いた。



「・・・お待ちしていました、ルーク様。私はジョゼット=セシル少将であります。ルーク様をお迎えに上がりました」
「あぁ、ご苦労」
・・・それで船より降りたカノン達が会ったのは、数人の兵士を後ろにつけて敬礼を行う女軍人のセシル少将だった。
その凛とした女軍人の姿と声にルークは労うように声をかけると、セシル少将は頭を下げた後にカノンへと視線を送る。
「・・・ご苦労様でした、執事カノン。貴方のおかげで無事ルーク様を保護出来たと公爵はいたく感激されておりました」
「ルーク様の身を案じれば当然の事です」
「つきましてはルーク様の護衛にティア=グランツの護送は我々が担当して、執事カノンは今日と明日を休みとした上でささやかながら後に報奨を与えるとのことです。後の事は我々に任せ、貴方は今日に明日の所は自由にされてください。報告は明後日でよいとの公爵よりのお言葉です」
「はっ・・・慎んで承ります」
それでセシル少将から公爵の賛美の言葉の代言を聞いてカノンは頭を下げるが、報奨と共に休みをと言われたことにもう一度頭を下げた時に少し微妙に顔を歪めた。その気遣いは今はあまり望ましい物ではなかった為に。








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