聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋
・・・そして場はカイツールの軍港より移り、バチカルに向かう洋上の船の上になる。
「・・・カノン、この船でバチカルに帰れるんだよな?」
「えぇ、ルーク様。これでこの旅路は終わりになります」
「そっか・・・だったらデスマスク達がバチカルに来たら屋敷に呼んでくれねーか?・・・多分また屋敷に戻ったら俺、ずっと屋敷にいなきゃなんねーだろうしさ・・・だから礼くらいしてーんだ。俺の言うことわざわざ聞いてくれてすまないって・・・」
「っ・・・えぇ、彼らも喜ぶでしょう。是非お伝えします」
・・・ルーク達に与えられた船室の一室。そこで椅子に座ったルークとその横に立つカノンは会話を交わしていた。
しかしその会話で寂しげな表情を見せるルークに、カノンは詰まりそうになりつつも笑顔をそっと浮かべ頷く以外に出来なかった。
(・・・ルークは分かっている。屋敷に戻れば再び外に出ることなどまずなくなる事を・・・本当の事を言うなら俺がファブレの屋敷から出してやりたいが、今まで貴族の生活に慣れてきたルークが馴染めるとは限らん・・・それに地球との繋がりが出来た今、ファブレの屋敷を出るなら俺は地球に戻ることを選ばざるを得ん・・・例え今はサガがいるとは言え、俺は聖闘士なのだからな・・・それで地球に行ったなら、また一層馴染めるか未知の物になる・・・)
カノンはルークのその姿からファブレに戻ることの意味を把握しているからと思うと同時に、自身がルークをファブレの屋敷から連れていけないことに歯痒さを感じていた。軟禁から出したとてそれが幸せに繋がるとは限らないことや、ファブレから出るなら地球に戻る以外に選択肢はないからこそ余計に自分だけの気持ちで巻き込めないと思った為に。
「・・・なぁ、カノン。俺を・・・」
「・・・ルーク様?」
「・・・いや、なんでもない・・・ちょっと外に出ててくれねーか?一人になりたいんだ・・・」
「・・・かしこまりました」
そんな時にルークは思い詰めた表情で何かを言おうとしたが途中で横を向いて中断し、カノンの心配そうな視線にそのまま退出を力なく命じる。しかし命じてはいるが懇願の色の強いその声にカノンも追及はせず恭しく頷き、部屋の外へと向かう。
(ルーク・・・何を考えているんだ?何かを言いかけた上にあんな表情になるとは・・・)
・・・それで外に出たカノンだが、部屋の扉の前で立ち止まり先程のルークの行動の意味を考えていた。
『・・・カノン、聞こえますか?』
『っ・・・ムウか?いきなり何の用だ・・・?』
だが深く考える前に前触れもなくムウから通信が入ってきた事にカノンは少し慌てつつも気を取り直し、用件を伺う。
『色々ありますがまずはこちらの話を聞いてください。もう事は小事で済ませられる事態ではどんどんと無くなりつつあります』
『・・・いきなり何だと言うんだ・・・?』
しかしムウから返ってきたのはまず聞けとの言葉で、カノンは訳も分からず眉を寄せる。
・・・しかしカノンは話を聞いていく内に次第にムウの話した事・・・つまりはデスマスク達が見知った上で取った行動に驚愕せざるを得なかった。
『・・・と言うわけです』
『・・・それでお前とミロがオールドラントに来た、と言うわけか・・・』
『言っておきますがこれは私達にアテナも納得した上での増援です。貴方にその事を黙っていたのは悪いとは思っていますが、妥当な判断だと思いますよ。使える手を増やすのは』
『・・・それはそうだが、お前達まで巻き込むとは・・・』
それでムウからの話は終わった訳だが、やはりカノンは渋い声を上げて唸ってしまう。やはり更に黄金聖闘士を巻き込む事態はカノンからすればあまり望ましい事ではない為に。
『先程も言いましたがこちらに来たのは我々も承知の上です。それに手が足りないのも事実でしょう?・・・今は我らの手を借りてください、カノン。我々がこの世界に来たことを無駄にしないため、この世界にとって最悪の事態を避けるためにも』
『ムウ・・・わかった。お前達の手、ありがたく貸してもらう』
そんな様子にムウは穏和な口調ながらも強く協力を受け入れるように言う、最善の為にもと。そこまで言われようやくカノンも踏ん切りがついたようで、協力を受け入れる旨を伝えた。
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「・・・カノン、この船でバチカルに帰れるんだよな?」
「えぇ、ルーク様。これでこの旅路は終わりになります」
「そっか・・・だったらデスマスク達がバチカルに来たら屋敷に呼んでくれねーか?・・・多分また屋敷に戻ったら俺、ずっと屋敷にいなきゃなんねーだろうしさ・・・だから礼くらいしてーんだ。俺の言うことわざわざ聞いてくれてすまないって・・・」
「っ・・・えぇ、彼らも喜ぶでしょう。是非お伝えします」
・・・ルーク達に与えられた船室の一室。そこで椅子に座ったルークとその横に立つカノンは会話を交わしていた。
しかしその会話で寂しげな表情を見せるルークに、カノンは詰まりそうになりつつも笑顔をそっと浮かべ頷く以外に出来なかった。
(・・・ルークは分かっている。屋敷に戻れば再び外に出ることなどまずなくなる事を・・・本当の事を言うなら俺がファブレの屋敷から出してやりたいが、今まで貴族の生活に慣れてきたルークが馴染めるとは限らん・・・それに地球との繋がりが出来た今、ファブレの屋敷を出るなら俺は地球に戻ることを選ばざるを得ん・・・例え今はサガがいるとは言え、俺は聖闘士なのだからな・・・それで地球に行ったなら、また一層馴染めるか未知の物になる・・・)
カノンはルークのその姿からファブレに戻ることの意味を把握しているからと思うと同時に、自身がルークをファブレの屋敷から連れていけないことに歯痒さを感じていた。軟禁から出したとてそれが幸せに繋がるとは限らないことや、ファブレから出るなら地球に戻る以外に選択肢はないからこそ余計に自分だけの気持ちで巻き込めないと思った為に。
「・・・なぁ、カノン。俺を・・・」
「・・・ルーク様?」
「・・・いや、なんでもない・・・ちょっと外に出ててくれねーか?一人になりたいんだ・・・」
「・・・かしこまりました」
そんな時にルークは思い詰めた表情で何かを言おうとしたが途中で横を向いて中断し、カノンの心配そうな視線にそのまま退出を力なく命じる。しかし命じてはいるが懇願の色の強いその声にカノンも追及はせず恭しく頷き、部屋の外へと向かう。
(ルーク・・・何を考えているんだ?何かを言いかけた上にあんな表情になるとは・・・)
・・・それで外に出たカノンだが、部屋の扉の前で立ち止まり先程のルークの行動の意味を考えていた。
『・・・カノン、聞こえますか?』
『っ・・・ムウか?いきなり何の用だ・・・?』
だが深く考える前に前触れもなくムウから通信が入ってきた事にカノンは少し慌てつつも気を取り直し、用件を伺う。
『色々ありますがまずはこちらの話を聞いてください。もう事は小事で済ませられる事態ではどんどんと無くなりつつあります』
『・・・いきなり何だと言うんだ・・・?』
しかしムウから返ってきたのはまず聞けとの言葉で、カノンは訳も分からず眉を寄せる。
・・・しかしカノンは話を聞いていく内に次第にムウの話した事・・・つまりはデスマスク達が見知った上で取った行動に驚愕せざるを得なかった。
『・・・と言うわけです』
『・・・それでお前とミロがオールドラントに来た、と言うわけか・・・』
『言っておきますがこれは私達にアテナも納得した上での増援です。貴方にその事を黙っていたのは悪いとは思っていますが、妥当な判断だと思いますよ。使える手を増やすのは』
『・・・それはそうだが、お前達まで巻き込むとは・・・』
それでムウからの話は終わった訳だが、やはりカノンは渋い声を上げて唸ってしまう。やはり更に黄金聖闘士を巻き込む事態はカノンからすればあまり望ましい事ではない為に。
『先程も言いましたがこちらに来たのは我々も承知の上です。それに手が足りないのも事実でしょう?・・・今は我らの手を借りてください、カノン。我々がこの世界に来たことを無駄にしないため、この世界にとって最悪の事態を避けるためにも』
『ムウ・・・わかった。お前達の手、ありがたく貸してもらう』
そんな様子にムウは穏和な口調ながらも強く協力を受け入れるように言う、最善の為にもと。そこまで言われようやくカノンも踏ん切りがついたようで、協力を受け入れる旨を伝えた。
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