聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

『・・・ということだ』
『・・・タルタロスの足止めが出来たのはまぁいいが、シンクとやらも導師のレプリカってか・・・まさかんなことが明らかになるなんてな・・・』
・・・それでカミュからの報告が終わったのだが、デスマスクはシンクの事で複雑そうに声を上げる。
『・・・なぁカミュ、近くにアイオロスはいるよな?』
『俺になんだ、デスマスク?』
『聞いてたのかアイオロス・・・ならちょっと聞くが、お前は導師がレプリカだって考えてるか?』
『何・・・?』
『いきなりどうした、デスマスク・・・?』
そこでアイオロスの所在を確認するとすぐに返事が返ったことで、デスマスクは自身の感じた事について問う。だがどこか戸惑った二人の声に、デスマスクは眉間に寄ったシワに指を当てる。
『さっき導師達と話をしたんだが、2年前にアリエッタが突然導師守護役の役目を解除させられてあの嬢ちゃんがその立場に代わってついたって聞いた。それに加えてあの導師様の様子を見てて、生きてきた実年齢からの幼さからレプリカだからあの甘さなんじゃねぇかって思ったんだよ。アリエッタから導師守護役を変えたのもそれを誤魔化す為で、それが2年前じゃないかってな』
『・・・まさか、と言いたいが有り得るな。シンクがいる以上、導師もレプリカという可能性は否定出来ないが・・・』
『・・・正直な所、俺もデスマスクの言うことは有り得ない事ではないと感じていた。今話を聞くまでは漠然とした気持ちしか抱いていなかったがな・・・』
そのまま自身の推測を真剣に語るデスマスクに二人も苦い口調ながらも、大方の同意の返答を述べる。
『・・・どうする、二人共?ダアトのゴタゴタなんて俺達には関係無い・・・なんて簡単には言えるような状況じゃねぇと思うぞ。そもそもあの嬢ちゃんの周りの状況ですら色々厄介な上に、そこを紐解いていきゃ嫌でもモースなんて上層部にいる人間にぶち当たる。更に言えばレプリカって存在を造れる上に、ルークなんて存在をキムラスカにまでぶちこめんだ・・・正直ダアトの膿をどうにかしねぇとルークもだが、嬢ちゃんに導師も含めたこの世界があぶねぇと思うぞ』
『そうだな・・・だがカノンがどういった反応を返すか、それが一番不安な所だが・・・』
『そうですね・・・バチカルまで合流はしない予定でしたが、これは出来れば今からでもカノンに話を伝えたいな・・・』
そんな二人にどれだけダアトが危険かをデスマスクが真面目に説くと二人も苦々しく同意をするが、カノンに話をしなければと共に口にする・・・流石にここまで来れば、元々カノンの手助けをするためにここに来た自分達だけで事を判断するのは少々はばかられると思った為に。
『では私がカノンの元に行きましょう』
『っ・・・聞いてたのかよ、ムウ?』
そんな時に会話に入ってきたのはアイオロス達と離れて動いてるはずのムウからだった。
『えぇ、少々失礼かとは思いましたがタルタロスが動いてないのでこちらに意識を傾けてみました。幸いこちらは二人ですから、ミロ一人にしてしまいますが頼めばタルタロスの追跡は快く引き受けてくれると思いますから、私がカノンの元に行きますよ』
『・・・どうする、アイオロス?』
『・・・そうだな、頼むムウ』
『わかりました・・・私はミロに説明してからカノンの元に向かいますので、これで』
『・・・行ったか』
ムウは自分なら自由にカノンの元に行けると主張しデスマスクがアイオロスに判断を仰ぐと、少し間を空け許可を出した事でさっと通信を切り三人の間に妙な空気が流れる。
『・・・アイオロス、話はこのくらいにして我々も港に戻りましょう。大分時間も経っていますのでそろそろ戻らないと導師達も不安がるかもしれません』
『そうだな・・・デスマスク、俺達はそろそろ戻る。話はまた後で』
『あぁ』
カミュはその空気を断ち切るよう戻ることを口にし、アイオロスもデスマスクもさっと了承を返し通信を終える。
「・・・難しいもんだな。単純に戦いやいいってもんじゃないのもな・・・」
それでボソッと声を漏らすデスマスクだが、その声は当惑に満ちていた。頭をフルに使い、武だけでない戦いをしなければいけない今の状況に・・・







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