聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

「・・・で、だ。俺に仕えてるかどうかを聞きに来たってことは辞める事も考えてんのか?神託の盾を」
「・・・うん。っていうかかなりの確率で辞めないと危ないことになると思う。今度はあたしの身が・・・」
しかしデスマスクが空気を引き締め辞める気かと問えば、アニスは神妙な顔つきで頷く。
「多分パパやママを無事にキムラスカが保護したってなれば、モースにとってあたしの存在意義なんてなんでもないものにしかならないと思うもん。スパイをちゃんとやったって出来て当然で、それが出来なくなればいよいよお払い箱になっちゃうだろうし・・・あいつならあたしを殺してもおかしくない・・・何かに都合につけて・・・!」
「だろうな。話を聞けば聞く程わかる・・・モースに倫理感なんざ関係ない。人の命なんざなんとも思ってねぇ・・・ただ預言が達成されりゃそれでいいと、それだけしか考えてないクソヤロウだ」
そして次第に声が震えていき自分が使い捨てられる未来に体までも震えさせるアニスに、デスマスクも同意と共にモースに対する感想を述べる。
「・・・それで俺が誰に仕えてるか聞いて、自分の事を雇ってくれって言うつもりだったのか?」
「うん・・・イオン様の事は嫌いとかそういう訳じゃないけど、迷惑かけらんないし働く所がないとまずいかなって思って・・・」
「・・・そう言うことか・・・」
一先ずデスマスクはモースに関する話から戻り真意を問い掛ければ、不安を滲ませ頷き返すアニスに少し考え込む。
「・・・ま、これに関しちゃまだ待てって言うしか出来ねぇな。嬢ちゃんの両親の安全の確保が出来なかったらまだどうにも出来ねぇし、両親やファブレ公爵がどう行動するとか考えるとかってのも聞かねぇとどうしょうもないだろ。まだ嬢ちゃんの周りは事情を把握しきってないんだしな」
「あ・・・うん、そうだよね・・・」
しかしデスマスクも結論をすぐに出すことが出来ないとしか返せず、アニスは影を落として納得する以外に出来ない。
「んなしけた顔すんな。少なくとも両親を助け出せりゃお前はモースの言うことを聞かなくてもよくなんだ。それは前のお前からすりゃ断然いいことだろ?」
「・・・うん、そうだね。ありがと、デスマスク。ちょっと元気出てきた・・・!」
そんな姿に自信を覗かせるニヤリといった笑みを浮かべ励ましの言葉をデスマスクはかけ、アニスもようやく表情を明るくして元気よく頷く。
「分かったんなら導師の所に行ってこい。向こうも向こうで悩んでんだから誰かいてやった方がいいだろうからな」
「うん、分かった。じゃあ後でね、デスマスク」
ようやく明るくなったその姿にイオンの元に行けと送り出し、アニスは笑顔を浮かべイオンの方へと向かう。そしてその姿が見えなくなった時、デスマスクは疲れたようにハァと深いタメ息を吐いた。
「・・・似合わねぇことしてんな、俺。こんな姿をアフロディーテとかに見られたら笑われそうな気がするぜ・・・」
それで出てきたのは自嘲気味た笑みで自分らしくないと漏らす言葉・・・元々その性格もあって同等の立場の人間であったり上の人間とならいくらでも気楽に対せるデスマスクだが、年下であったり立場が下の人間を相手にするのは苦手だった。普段はガラの悪い威圧的な口調で相手と対するのに加えて、黄金聖闘士の立場があるゆえに。星矢達は例外としても、このように年下の相手の事を気を遣った態度と言うのはらしくないと感じていた。
『・・・デスマスク、聞こえるか?』
『・・・カミュか?うまくいったのか?』
『あぁ、神託の盾の足止めも出来てムウ達もこちらに来れた。ただ少し面倒な事が起きた。今港に入って会話をするのは周りの目もあり少し面倒になるからこのまま先程あったことを話すから、聞いてくれ』
『・・・了解』
その時カミュから通信が入った事にデスマスクも気を取り直しながら返すが、また何かあったと思わせる話口に覚悟を決めて一言返した・・・









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