双子の片割れの焔への従事

・・・その後ヴァンを牢に入れることを皮切りに場は解散となり、疑似超振動で飛んだルーク達の第七音素の行方を探るまでは待機と言われたカノンは一人部屋にて待機していた。



「・・・入るぞ、カノン」
「・・・どうかしたのか、ガイ」
その部屋に一見穏やかな様子でノックも無しに入ってきたガイ。だがその瞳の奥は巧妙に隠しているように見えるが剣呑な感情がこもっている、そう感じ取ったカノンは対応して歓迎しているように目を広げて見せるが、実質は一切隙のない視線で見据える。
「いやなに、お前がルーク様の捜索に行くことになったのは知ってるが・・・その役目、俺に譲ってくれないか?」
「・・・何?」
そんな視線で見ていれば出てきたのは先程役割は決まったばかりというのにそれを譲れというもの。こんな馬鹿正直なアプローチの仕方で来ると思っていなかったカノンは目を細める。
「話を聞いてただろう。お前はここで待機しているように言われたはずだ」
「それはお前がその役割を辞退すれば済むことだ。そしてそうなればやむを得ず公爵も俺をルーク様の捜索にあててくださる。つまりそれで万事解決という訳だ」
「何が万事解決だ。それはあくまでお前の独断だろう。そのようなことに付き合う義理は私にはない」
「万事解決さ。俺が迎えに行けばルークも喜んでくれるからな」
「・・・」
そんなガイを言葉でたしなめようとするカノン。だが全く自分の言葉を聞かずただ自分に都合のいいような展開をルークと呼び捨てにしながら口にするガイに、カノンは眉をしかめて目を閉じる。
「・・・お前が何を持ってルーク様が喜ぶと思っているか知らんが、私にはその気はない。諦めろ」
「ははっ、お前こそ何言ってるんだ?俺はルークの友達で育ての親みたいなもんなんだぞ?喜ぶに決まってるだろ、だから譲れよ」
再度諦めるよう言葉をかけるカノン・・・だがガイはじれったいとでも言っているかのよう、尚も好かれているのだと強調して食い下がってくる。
(このままではらちが明かんな・・・このやり取りをただ続けた所で押し問答になるだけだ)
・・・このガイの譲らない姿を見てカノンは考える、このままでは何の解決策にもならないと。
(・・・むっ、あれなら・・・やむを得ん、俺では完璧には出来んだろうが技を借りるか)
そう打開策を考える中でふと、カノンの中にとある映像が浮かび上がる。それを思い返しカノンは心中で決心を浮かべつつ、そっと目を開く。









「・・・わかった、お前にその役目を譲ろう」
「っ、ホントか?すまないな、カノン」
・・・そして目を開いたカノンが口にしたのは随分とあっさり役目を譲るというもので、まだ時間がかかると思っていたガイは一瞬戸惑いつつも素直に礼を言う。



・・・そこからはガイの中では淡々と話は進みカノンから役目を譲り受けた後バチカルを出立し、それで意外にあっけなくルークを発見するに至った。



「ルーク、無事だったか!」
「っ・・・ガイ・・・」
その姿を見つけいかにも好意的に近づくガイだが、ルークの目には戸惑いがこもっている。そんなことに気付けず近付くガイの顔は笑顔のままである。
「さ、帰るぞルーク」
「・・・なんでお前が来たんだ、カノンは?」
「っ・・・カノンは今関係無いだろ?ほら、行くぞルーク」
それで手を差し出すガイにルークがカノンの存在を口にすると、一瞬ひきつった表情を見せ間こそ空けつつもあくまで優しげにその手を掴もうとする。
‘パンッ’
「っ・・・どうしたんだよ、ルーク・・・?」
だがその手をルークが拒否して弾いた事で、今度こそひきつった表情で止まった。






9/13ページ
スキ