聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

「お待たせしました、アイオロス」
「いや、大丈夫だ・・・これで多少は時間は稼げるな」
「えぇ・・・では呼びましょうか」
「そうだな」
合流した二人は会話もそこそこに頷きあうと、共に目をつぶり集中し出す。
「・・・よし、すぐに来てくれるか」
「すまないな」
数秒後、何かの会話を終えて二人とも目を開けて目の前の平野・・・いや、正確には空間を見ていた。
‘ピッ’
「来たか」
するとその空間に裂け目と言うよりはヒビのような物が入り、アイオロスは静かに呟く。そしてすぐにヒビは大きな異次元へと繋がる穴へと変わり・・・



「・・・お待たせしました。牡羊座のムウ、参上しました」
「同じく蠍座のミロ、参上しました」



・・・そこからアイオロスと同じ黄金聖闘士であり、黄金聖衣をまとったムウとミロの二人がその姿を現した。
「いや、そんな堅苦しくしないでくれ。ここは地球ではないし、こちらが手伝ってほしいと言い出した事なのでな。口調は崩してもらって大丈夫だ」
「・・・それなら構わないが、改めていいのか?カノンは必要以上の聖闘士の介入を避けたがっているという話だが・・・」
「だからこそカノンに許可を取らず三人が我々を呼んだのですよ、ミロ。それに二人にデスマスクも今の状況では他に手を回せないから私達に協力の要請を願ったのではありませんか」
「あぁ、ただ武働きをすれば解決するような単純な案件ではないからこそ必要なのだ・・・お前達が」
アイオロスが形式ばった二人のその様子を手で制すると、すぐにミロは口調を崩すが眉間にシワを寄せ大丈夫かと聞く。その声に一緒にここに来たムウが柔和に必要な事だと言えば、カミュも真剣な面持ちで頷く。






・・・さて、アイオロス達がこのタルタロスの足止めに向かった理由として一番の比重を占めていたのはムウ達を地球から呼び人知れず合流するためだ。

これはカイツール軍港でデスマスクも交えたテレパシーでの会話で出たのは今の自分達には手が少なすぎるのではないか、他の黄金聖闘士の手も借りるべきではないかとそんな話になった時、デスマスクが提案した。カノンがいない今なら他の黄金聖闘士を呼んでもバレないだろう・・・そしてその黄金聖闘士に裏で動いてもらえれば有利に動けるのではないかと。

その意見に二人も賛成し、すぐに三人は綿密な打ち合わせをした上で自分達の為に異次元に意識を巡らせているだろうシャカに連絡を取りムウとミロの二人の協力をもらうことになった。二人とアテナの快い了承も得た事で・・・






「・・・しかし手が欲しいなら一輝がいるんじゃないのか?」
「何?・・・ミロ、一輝はまだそちらに戻っていないのか?」
「え?・・・星矢達からもシャカからも戻ってきたという報告がないからまだいる筈じゃないのか、この世界に?」
「「・・・」」
だがとカノンとの友情を感じるミロは一輝の事を引き合いに出すが、カミュは帰還してないのかと問い返す。しかしそれはない筈ではと首を傾げるミロに、アイオロスとカミュの眉間に共に深いシワが刻まれた。
「・・・成程、どうやら察するに貴方達は一輝に何か役目を果たしたら帰るようにと別行動でもさせていたんですね。しかし簡単な役目であるはずのそれを果たした筈なのに、一輝はまだ地球に戻ってきてないと・・・」
「鋭いなムウ、まさにその通りだ・・・ダアトは海を越えねば行けぬ地と言うから、行くのに時間がかかってる・・・そう思いたいな・・・」
「えぇ、アイオロス・・・」
「お前達は何を一輝に感じているんだ・・・気持ちは分からんでもないが」
そこにムウが一輝と何があったのかを推測して確認を取れば物の見事に正解なだけにアイオロスは称賛の声を向けるが、なんとも言えない声を出し表情を浮かべたと思えばカミュも同意する。そんな二人にミロは同意なのか擁護なのかわからないような事を呆れ気味に呟いた。















・・・それから少し時間は経ち、カイツールの軍港に場面は移る。



「・・・デスマスクさん、少しよろしいですか?」
「どうされましたか、導師?」
・・・アリエッタによりもたらされた戦禍により、けして被害の少なくないキムラスカの兵士が後片付けに奔走する港。
その光景を一人フェンスに背を預け見つめていたデスマスクの元に、イオンがアニスを伴い思い詰めた表情を浮かべながら近付いてきた。







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