聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

「・・・こちらに来たか」
「・・・っ、テメェは・・・っ!」
一方その頃のカミュは道中の神託の盾を倒してついた動力室の前にて、後ろから現れたアッシュとリグレットと対峙していた。
「この黄金鎧・・・アッシュ、まさかコイツが・・・?」
「いや、鎧の形が違うが、コイツは前に来た奴と同じ鎧だ!だからあの野郎の仲間だ、間違いねぇ!」
アッシュはカミュの姿に驚きリグレットの問いに激しくカノンの仲間と断定し剣を握るが、すぐにカミュは人差し指に小宇宙を込める。
「一人でまた来やがるとは随分となめられたもんだな・・・だが今度は油断しねぇ!」
「カリツォー」
‘ピキィィィン’
「なっ!?なんだこの氷の輪は!?・・・う、動けねぇだと!?」
「生憎今の私の目的はお前ではない。大人しくしていてもらおう」
それで剣を抜きアッシュは意気揚々とカミュに戦いを挑まんとしたが、すぐさま指を向けられ氷で出来た輪が自身にリグレットの周りを囲んだことに驚愕し、更に自身の身動きが取れなくなった事で困惑も驚愕に加わる。
「・・・っ、おい待ちやがれ!」
カミュは一言残した後、すぐに動力室の中に入っていく。アッシュの怒声を背中に受けながら。






「・・・確かタルタロスは陸海共用の戦艦だったな・・・それにこれだけの巨体だ。多少地球の物と造りが違うのは覚悟はしていたが・・・どこが凍り付かせてはならない核になる部分か、はっきりとは検討がつかんな」
それで動力室の中に入り辺りの観察をするカミュだが、自分の知識でも核がハッキリとは分からないと口にする。
「・・・まぁいい、ある程度ここなら大丈夫だろうというところは把握した。二、三ヶ所程度凍らせておけば核以外でタルタロスの動きを止めれるくらいの場所はな」
しかしそこは応用を利かせて核になり得ない部分を凍らせようと、カミュは近くで忙しなく動いている歯車達へと狙いを定め小宇宙を込めた右手を天井に掲げた。



「フリージングコフィン!」



‘ピキィィィン!’
・・・そして技名を言うと共に放たれたフリージングコフィンにより氷の棺に閉じ込められた歯車達はその動きを止め、氷中でただ姿を現すのみとなった・・・尚カミュはフリージングコフィンを使った訳だが、打ち合わせ通りちゃんと人が溶かせる程度に手加減はしている。あくまでうまく凍らせるイメージを固める為にフリージングコフィンを使っただけだ。でなければ本気のフリージングコフィンなど、この世界の人間に兵器が溶かすにも壊せるような道理もない。黄金聖闘士数人がかりで壊せないとされているものが。
‘ガゴォォォン!’
「っ・・・機能不全に陥り、停止したか」
と、少ししてタルタロスがいきなり大幅に巨体を揺らした事にカミュは体勢を整えつつ自分の行動からとその訳を推測する。
「アイオロスもおそらく私が行動を終わらせたと分かったでしょうが、伝えましょう・・・『聞こえますか、アイオロス。こちらは終わりました。そろそろここを出ましょう』」
『あぁ、分かった。すぐにここを出る』
それで気付いただろうと思いつつも一応小宇宙を介して通信をすれば、すぐにアイオロスが了承と返し返事を切ったことにカミュもさっさとここを出ようと踵を返す。






「・・・テメェ!この妙な氷の輪を解きやがれ!」
「・・・しばらく時間が経てば溶けるように手加減はしておいた、待っていればいずれ動ける」
・・・だが戻った先にいたのは未だカリツォーの緊縛から逃れられず、増えた氷の輪に囲まれカミュを見つけて怒鳴ってきたアッシュ。その姿にカミュは表情を変えず待てと告げ、さっさと横を通っていく。
「待ちやがれテメェ!逃げる気か、あぁ!?」
(・・・騒々しい・・・デスマスク達の読み通り神託の盾にいなければならないことがアッシュのストレスにもなり心境の変化を生んだのだろうが、これで元貴族とは到底思えんな・・・これならまだ生まれの理由で子供らしいところがあるとはいえ、ルークの方が良識がある・・・)
しかし尚も自身に向けて挑戦的な言葉をぶつけてくるアッシュに、カミュは無視して先を行きつつも内心で辟易としていた。そのうるささに加え、自身が襲撃したとは言え剥き出しの敵意を隠しも抑えもしない姿に・・・












・・・その後、タルタロスの異常に残った神託の盾がてんやわんやする姿を尻目にカミュはタルタロスを脱出し、かねてより決めてた合流地点で待機していたアイオロスと合流した。








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