聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

「いや、導師に比べて鍛えている様子があるのは分かるが雰囲気に加え背や髪の色など似た点があったからな・・・それにレプリカの事を聞き、セントビナーという街で遠巻きに見ていたシンクの事が気になっていたんだ」
「あの時から、ですか・・・」
そんな視線にアイオロスは自身が見ていた所を説明し、カミュは感心を深めた声を向ける。
「・・・カミュ、確かローレライ教団で仮面を被る意味は地球の一部の宗教のようにそこに入ることで世俗と断絶すると示すための証だったな?」
「えぇ。ただ宗教は全てという訳ではありませんが、入信者にとって都合のいい戒律がある場合があります。そういったケースは宗教を自分の手で発足させて何か後ろ暗い事の隠れ蓑にせんとするためがほとんどですが・・・六神将率いる神託の盾の場合はそちらの方が当てはまるでしょうね」
そこで確認の声を向けるアイオロスに、カミュは肯定はしつつも宗教独特の闇ともなり得てガンともなり得る可能性を口にする。



・・・宗教という物は一般と違うルールにもとづいた団体で、国にすらその在り方を変えられない程の強大な力を有する存在にもなり得る。そんな一団に身を擁したことで国の追及から逃れることすら可能になる事もある。そこが条件さえ満たせば犯罪者でも受け入れるような場所で大きな力を持っているならだ。そんな宗教の強みを知っているからこそそれを最大限に利用している輩もいるのだ、上にも下にも・・・カミュからして見れば、明らかに神託の盾はそんな嫌な強みを平気で使える輩と見ていた。



「そうか・・・なら仮面を外す事に躊躇いを持つ必要はない、か」
「この仮面が女聖闘士の被る仮面のような意味だったら、と思っていたのですか?」
「あぁ、そうならと思ってな」
アイオロスはその答えに仮面を外す事を口にし、カミュは気を使っていたのだと確認する。



・・・女の聖闘士において仮面と言うのは女性としての幸せを捨て、戦士として生きる証を立てるための物だ。そこには女聖闘士の誇りが確かに存在している。

ただそんな誇りを女だからと嘲り下に見る聖闘士もいたりするが、黄金でもあり次期教皇として選ばれたアイオロスからすれば尊重すべき考えだ。聖闘士としてアテナに忠誠を誓う事を示すのだから。

そしてだからこそアイオロスはカミュに確認を取ったのだ。信念があってのことなのかを間違いのないように。



「・・・すまんな、外させてもらうぞ」
ただそれでも一応の謝罪を口にしながらアイオロスはシンクの仮面に両手を添え、そっと取り外す。
「・・・やはり、か・・・」
「貴方の感じた通りでしたね・・・」
そしてそこにあったのは・・・アイオロスの予想に違わない、イオンとそっくりそのままの顔だった。眠るように気絶しているその姿に二人は何とも言いがたい様子を浮かべていたが、アイオロスはそっと仮面を被せ直す。
「・・・出よう、カミュ。新たな事実はわかったが、これ以上ここで手に入る情報はないだろう」
「えぇ、ですがその前にここで聖衣を着けて行きましょう。この辺りに人は来ないでしょうし見せるつもりもありませんが、聖衣を呼び出す場面など見られては面倒になりかねません」
「あぁ、そうするか・・・来い、射手座の聖衣よ!」
「来い・・・水瓶座の聖衣!」
複雑ではあるが今は放っておく、そんな内心を滲ませるアイオロスに先に聖衣を着ることを提案するカミュ。その勧めに従いアイオロスはカミュと共に指を上にかざし、聖衣を呼び出す。すると指を指した先の異次元空間が開き、そこから二人の宣言した守護星座の聖衣が現れ一気にパーツが外れ各々の身を包みだした。
「・・・よし、これでいいな」
「えぇ、行きましょう」
・・・そしてパーツが全て所定の場所を包んだ時、二人の姿は本来の黄金聖闘士としての姿に戻っていた。アテナに仕える戦士として文字通り光輝く、神々しい姿に。
二人ともに聖衣の装着を終えた事でカミュの言葉を最後に一瞬でその場を後にした、さっき気絶させた二人をその場に残して・・・








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