聖闘士の決断と双子の片割れの苦渋

「・・・成程、趣のある古城だな。ただ、打ち捨てられた土地になったことが景観を不気味に変えてしまっている・・・」
「このような場所だからこそ神託の盾も呼び出しの場所に最適と思ったのでしょうが、カノンの話によるとヴァン謡将はファブレが懇意にしているとのことで元々ファブレの所用地であったこの城でルークも見つかったとのこと・・・この数年で完全に打ち捨てられた土地になった事は確かなようですが、少なくとも私はここを謡将率いる神託の盾が七年前に使っていたのではと考えています」
「だろうな。でなければこのような場を指示することも見つけることもまずないはずだ・・・これは謡将が導師を狙っている神託の盾に深く関与している可能性が高いと見て間違いないだろう」
そしてコーラル城の中に入った二人だが、城内の景観の不気味さと古さに抜け目なく観察をしつつ神託の盾とヴァンの関連性についての推察を立てていく。
「・・・あまりいい予感がしないな。ルークの事もだが元々導師がさらわれた理由がわからないのに加え、何故今それを敢行するのかと言うことが気にかかる・・・事態はカノンが思っている以上に深刻なんじゃないのか、今の状態は・・・?」
「・・・私もそう思います」
更にアイオロスは眉を歪めて難しい表情を浮かべ、カミュも表情は変えないが重く同意する。
「・・・行こう、カミュ。今の俺達の役目は牽制に加え、出来る限り情報を手に入れることだ」
「・・・はい」
少し間を空けこの話を一先ず終わらせんとするアイオロスにカミュも頷き、中へと歩き出す・・・智においては黄金聖闘士の中で秀でた二人ではあるが、不十分な証拠だけでは全てを明らかになど出来ない。それを明らかにするには自身らが動く以外にない、そう考えたが故に・・・









・・・そう二人は会話を交わした後、コーラル城の仕掛けを解除しつつ先に進む(途中音素を使わねばいけない仕掛けはカミュが小宇宙を用いて解除した。こう言った自身の技を音素に合わせる器用さは水と氷の魔術師と言われるカミュであってこそのことだ)。
「・・・アイオロス、どうしますか?」
「・・・欲を言えばここでどちらかを捕らえ尋問をしたいところだが、下手にこちらの手の内を明かす訳にもいかないからな。今後の事を考えると・・・俺達の姿を認識させず手早く気絶させて終わらせる、それが最善だ」
「わかりました、では私は大きい気配の方を抑えます」
・・・と、ふと仕掛けを解いた扉の先に入ったカミュが足を止め慎重に小声で話し掛け、アイオロスのこれまた慎重な返答にそっと役割を決めて・・・その瞬間、二人はその場から姿を消した。



‘トンッ’
「うっ・・・!」
「あっ・・・!」
・・・そして数秒後、少し離れた所にあった何やら仰々しい機械とおぼしき物の前に立っていた二人の後ろにアイオロス達は現れ、同時に相手に気付かれることなく首筋を叩き一瞬で昏倒させ倒れさせた。
「シンクにラルゴ、か・・・神託の盾においてもきっての武闘派と見れる二人が揃い踏みとは、導師の捕縛に余程執着があると見えますね」
「あぁ、出来れば神託の盾の目的を知りたいところだが・・・神託の盾はもちろん、導師は教えてはくれないだろうな」
そんな二人は倒した二人・・・シンクとラルゴの二人を見下ろしながら会話を交わすが、より一層深まる謎に表情は明るくはない。やはりどうにか真相を明らかにしたいと思っているためだ、それも出来る限り早目に・・・ただやはりこの世界においても上位に入るであろう強さを持つ二人をこれだけあっさり御せるという事は、アイオロスとカミュの実力が段違いであることを示していた。
「・・・む・・・」
「どうしました、アイオロス?」
「いや、どうにもこのシンクの被っている仮面が気になってな・・・それにこの気配はどうにも導師に質が似すぎているように思えてならない」
「気配の質?・・・言われてみればそう思いますが、よく気付きますね・・・」
と、ふとアイオロスは倒れているシンクに視線を向け声を上げカミュが何事か問う。それで仮面と気配の質が気になると難しげな表情で言われ、カミュはその感覚に感心したように視線を向ける。







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