聖闘士の躍動と決心

「・・・一言で言うには少し難しいですね。彼らとはあまり長い時間を共にしたことはありませんから」
「そうなのか?」
「えぇ、どちらかと言えば私がほぼ一方的に知っていたと言った方が正しい・・・その上で私の事情を知った彼らが私に協力を願い出て、その結果として彼らは快く協力してくれているというわけです」
「・・・そうなのか・・・」
そんな自分とデスマスク達の関係をカノンは正直にではあるが聖闘士としての立場で起きたことをぼかして話し、ルークは意外そうに目を大きくしながらも話を聞き終わると微妙に表情が寂しそうに変わる。
「どうされましたか?」
「いや・・・俺、屋敷の中でファブレの人間やたまに来るナタリアと接するお前しか見てこなかったから・・・何か妙な気持ちなんだ。俺の知らないカノンがいるって・・・」
「っ・・・知らない私、ですか・・・」
心配になり顔を覗くカノンにルークがうつむきながら答えた中身に、動揺しかけるがなんとか平静を装う。
「・・・なぁ、カノン。これからも俺はお前と一緒にいてもいいんだよな?」
「私と、ですか?・・・私がルーク様にこれからも仕えたいと思っているか、ではなくですか?」
「・・・あぁ」
更に続いた質問にカノンは少しニュアンスが違うのではと確認するが、それでいいとルークは頷く。
「なんかさ・・・こういうこと言うと父上に怒られると思うけど・・・俺はカノンの事、ガイの言葉じゃないけど育ての親だったり兄上のようだって思ってる」
「っ・・・それは、光栄です」
それで出てきた自身を親と呼び兄と思っているとの声に、カノンはまた動揺しかけるが微笑を浮かべて返す。
「・・・でも俺の知らないカノンの姿を見て、なんか・・・カノンが俺の知らないとこに行っちゃうんじゃないかって、そう思ったんだ・・・」
「っ!」
だが続いた視線が伏せられ悲し気に染まった目と声に、今度こそカノンは取り繕えずに表情を驚きに歪めた・・・六年前、かつて自身をファブレに引き止めたその姿と今の姿が想いも含めてオーバーラップして見えた為に。
「・・・カノン、俺はお前と一緒にいてもいいのか?」
「・・・勿論ですよ」
そして確認をするために顔を上げ見上げてくる不安だと語るその顔に、自信を持った笑みをカノンは浮かべ勿論と答えた。
(・・・思えば俺とルークは似ているな。代替え品としての人生を知ってか知らずか歩いてきた・・・その結果として、俺は道を踏み外した。だがまだルークは道を踏み外してもいないし、誰かが側にいてやれることも出来る・・・もうキムラスカがルークを認めるかどうかなど関係ない。俺は守ろう・・・いかな目に合おうとも俺だけはルークを・・・!)
その表情の裏でカノンはかつての自身と照らし合わせながらも密かに強く決心する。どのようなことがあろうとも自分はルークを守ると。
「・・・ありがとう、カノン」
ルークもカノンが本気という事をその姿から理解したのだろう。途端にホッと安心して笑ってカノンに身を寄せ抱き付いた、かつての幼い頃のようにカノンに甘える形で。









END







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