聖闘士の躍動と決心

「・・・はっ!ここは・・・」
「お目覚めかい、嬢ちゃん」
「っ、貴方は・・・!?・・・動けない・・・!?」
「おっと、嬢ちゃんに今ここで逃げられる訳にはいかないんでな。質問に答えてもらうぜ、俺達の質問にな」
「・・・っ」
それでハッキリと目を覚ましたアリエッタは視線の先に割り込み腰を屈めたデスマスクに怯え身を離そうとするが、カミュがその身体をガッシリと掴んでいる為に全く動けない。その様子にデスマスクは指を突き付けながら愉快そうに質問をすると言えば、アリエッタはすぐに大人しくなって怯えに止まる。
「まず一つ聞くが、なんでここを襲った?」
「・・・それはアッシュに言われて、イオン様をコーラル城に呼び出す為、です」
「は・・・アッシュ?」
それで質問を開始したデスマスクだが、アリエッタからいきなり出たその名に面食らった表情に変わった。
「・・・おい、それ本当か?」
「はい・・・船を壊して船の整備士の人連れてこいってアッシュ、言った、です。それで整備士の人を返してほしかったらコーラル城に来いって言えばいいって・・・」
「・・・『おいカミュ、アイオロス・・・これもう完璧にアウトだろ・・・』」
『・・・そう、だな』
『・・・いかに導師を取り返そうとするためとは言え、こんな行動をされてはな・・・』
気を取り直しなんとか本当かと問い掛ける。だがその手段を細かく話すアリエッタに絶句しながらも、三人はテレパシーで会話をし・・・アッシュがキムラスカに害を成したと確定させた。例え人を使って間接的にとは言うことに。
「・・・さーて、どうすっかなー・・・」
あまりにも状況が飛びすぎている、そういった状態にカノンがいない今どうするべきかと漏らしながらデスマスクは考え込む・・・















・・・そして一方、ルークを護衛する立場にいるカノンはケセドニアにいた。



(・・・どうしたものか・・・)
・・・一先ず手続きを終え、領事館にて船の出港の時間を待つことになったカノン達。その中でカノンは平常に装いながらルークの側にいるが、内心では非常に悩んでいた。
(俺も手を尽くすつもりではいる・・・だがどうしてもルークの事をキムラスカが受け入れないとなったなら、どうすればいい・・・?)
その悩みとはルークをキムラスカが受け入れなかった時、どうするべきかというもの。



・・・アッシュを使いヴァンの企みを白日の元に晒すことは確定してはいるが、そうなればやはりルークの身の安全はカノン達に左右される。しかし身の安全は確保されてもそれでルークの事をキムラスカが受け入れるかとなれば、話はまた別になる。何せレプリカというこちらにおいてのクローンとおぼしき技術により生まれた存在なのだ、ルークは。

その存在をキムラスカが殺しはしなくとも、認めようとしないのであればその時点でルークはレプリカというだけで不遇の扱いを受けることになるのは必至である。本物ではない、その事実を突き付けられて・・・



(どうすればいい・・・?)
だから今までの六年を共に過ごしてきたカノンは考える、ルークをどのように認めさせるべきかを。
「・・・カノン、ちょっといいか?」
「・・・はい、ルーク様。なんでしょう?」
そんな時に当のルークから声をかけられたことで一時考えるのを中断し、カノンは優しく顔を向ける。
「ちょっと思ったんだけど、デスマスク達ってどういう仲なんだ?なんつーかその、友達って言うだけには思えねーんだけど・・・」
「・・・どうして今そのようなことを?」
「いや、屋敷であいつらの事をお前話してくれなかったしさ・・・どういう繋がりなのか気になって、な」
「・・・あぁ、そういうことですね」
それで出てきた質問にカノンは納得する。



・・・元々カノンはファブレ邸に来た後、身元不確かな自分の事を出来る限り話さないよう言葉を選びながら動いていた。その結果として元々は旅人だったが、強い何者かと戦いその時の記憶を失い大怪我を負って疑似超振動で偶然ファブレに飛んできた者という人物設定を背負うことになった。

中々に強引な設定であるとカノンは自分自身で思うが、その方が色々誤魔化せる為に都合がいいために屋敷内では不自然でない態度を装ってそうするようにしていた・・・ただそんな設定でありデスマスク達と会うことになると思っていなかったカノンは、当然三人との事をルークに話したことはなかったのだ。








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