聖闘士の躍動と決心

・・・カノンとデスマスクが離れた一方、カミュとアイオロスの二人はイオン達と共にカイツールに向かう道中にいた。



「・・・あまり気分が良くないものだな。あぁも露骨に警戒混じりの嫌味を言われると」
「お前なら分かってるだろうが、抑えてくれ。カミュ」
「・・・わかってます、アイオロス」
・・・その道中、先頭を歩くカミュとアイオロスだが珍しくカミュが小声で愚痴に近い言葉をこぼし、アイオロスがなだめの言葉をかけていた。



・・・さて、カミュと嫌味を言う人物・・・単刀直入にジェイドとの間に何があったのかと言えば、ズバリ戦闘での出来事である。

いかにアテナより許可を得たとは言え、表面上かなり戦える程度のレベルで今は事に挑もうと決めているカノン達・・・そんな中でこの世界にいる魔物が先程襲い掛かってきた時、アイオロスに水と氷の魔術師と呼ばれる位に氷の闘技を得意として戦ってきたカミュも氷の闘技を封印して戦うことになった。その時はもちろん氷の闘技無しでも無事に勝利を収めた訳だが、そこでジェイドにカミュは言われたのだ。「おや、譜術は使わないのですか?あれだけの術を瞬時に使えるのですから、戦闘で使っていただきたかったのですがねぇ」と。

それが露骨な当てこすりであることにカミュはすぐに気付いた。タルタロスで氷で扉を凍らせた事に対する嫌がらせであると。だからカミュは変に場がこじれないよう必要ないと思っただけと返したが、ことのほかジェイドは何かにつけて嫌味を言ってくるのだ。これにはカミュがいかに冷静に務めようとしても、煩わしいのに代わりないのは事実だった。















・・・そうカミュが煩わしい思いをする中で数日をかけ、一同が辿り着いたカイツール。
「・・・おう、来たか」
「デスマスク、待っていたのか?」
「あぁ、お前達を待ってたんだよ」
入口前にて近くの壁に背を預けていたデスマスクがカミュ達に近づいていき、懐から旅券を取り出す。
「ほら、これがないとここ通れねーだろ。カノンから頼まれて待ってたんだぜ」
「・・・すまないな、デスマスク」
その旅券をデスマスクから説明を受けてカミュはアイオロスの分も含め、礼を言いつつ受け取る。
「・・・」
「あ?・・・何だよ、大佐殿?」
と、そんな光景というよりデスマスクを真顔が微妙に歪んだ表情でジェイドは見ていた。たまらずデスマスクはその視線に心底から何かと問う。
「・・・いえ、その旅券に予備はありませんか?」
「は?・・・何で俺に旅券を求めてんだよ、大佐殿。普通国境を越える為の旅券とか、そちら側で用意してんじゃねーのか?」
「・・・旅券を発行するとその記録が残るから用意出来なかったんですよ。何せこちらは内密に事を進めなければいけないんですからね」
「・・・ふーん・・・」
それで問いに自分達の分の旅券も欲しいとジェイドは訳付きで答えれば、デスマスクは口元に手を当て少し考え込む様子を見せる・・・ただ、隠れたその口元は分かりやすくゲスく歪んでいた。
「・・・ま、旅券に人数分の予備が無い訳じゃない。けどなんでそれをあんたにくれてやんなきゃいけないんだ?」
「それは和平の為ですよ。それにその為にこちらの二人はわざわざ脱出したタルタロスに来たのでしょう?」
「勘違いしてんじゃねーよ、大佐殿。俺らはあくまでカノンやルーク様の協力者であって、ファブレ公爵じゃねーんだぜ?」
「・・・何を・・・」
少し間を空け手をどかしニヤニヤしながら旅券をやる道理はないとデスマスクが言うと、渡すべきだろうと当然のように言うジェイドは眉を寄せる。
「これはファブレ公爵名義で発行された物だ。この旅券はな。ま、キムラスカ側からルーク様を迎えに来た俺達はともかくとしてだ・・・そんな代物をさも当然のようになんでマルクト軍のあんたが我が物顔のように欲しがってんだよ?それもルーク様を軟禁しようとした奴がな」
「っ・・・貴殿方は和平に協力をしているはず・・・」
「誰が和平に協力だって?・・・勘違いすんなよ大佐殿。アイオロスにカミュはあくまでルーク様の気持ちを汲んであんたらの身の安全を確保しに来ただけで、つまり和平に協力してるって訳じゃねぇ。それにカノンが言っただろ、別に和平を邪魔するわけじゃないって・・・つまり俺らのスタンスとしちゃ邪魔するつもりもねーけど取り立てて擁護するわけでもないってことだが、和平に協力してるって勝手に見られた上に名前を出されたなら軟禁されかけたルーク様に後で話を聞くだろうファブレ公爵はどう思うと思う?」
「・・・っ!」
そんな姿に状況を一つ一つ思い返させるように話をするデスマスクだが、最後の問い掛けをした時ジェイドの目が一気に大きくなって固まったのを見て見下すような笑みを更に深くした。








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