聖闘士の躍動と決心

・・・カノン達にとってアッシュの真意は是非とも知らねばならないことだった。

カノンとしてはアッシュがどのような経緯でキムラスカから消えたのか、そしてそれがアッシュの意志も少なからずあるのかどうか・・・それを確かめねばならなかった、もし本意でないとしたらアッシュも助けようと思っていた為に。

しかし実際にアッシュと対して言葉を交わしたカノンが感じた印象は極めて自分勝手・・・それも相当にタチが悪いという物であった。

・・・いずれ来るべき時の為にはアッシュの真意を探らねばならない。それが故にカミュ達と示しあわせた上でのカノンの行動だったのだが・・・アッシュが国を捨てたと取れる発言を容易にしたことは、カノンにとって少なからず落胆を生むものとなった。















・・・そんなアッシュとの初対面を果たしたカノン達。しかし変に行動をしても逆効果になりかねないことから、とりあえずはバチカルに戻ることを目標として動くしか出来ない。故に夜が明けた後、カノン達は表面上ルークには何も起きていなかったように振る舞いながらカイツールへと向かった。









「・・・ここがカイツール、か?」
「はい、ルーク様」
・・・それで辿り着いたカイツール。国境を主張するかのよう大きく作られた壁が長く延びるその姿に、ルークは少し呆然としながら口を開く。
「ここには私と同じくファブレより探索に来た者が待っております・・・あぁ、あそこにいました」
「・・・ルーク様、よくぞご無事で・・・!」
そんなルークにカノンは丁寧に受け答えをしながらも視線を国境の先に向けると、一人の旅人に扮していた男がカノン達に歩いて近づいてきて立ち止まって安堵の混じった言葉を向ける。
「この場で敬礼が出来ないこと、お許しください・・・」
「あー、いいよ。ここはまだマルクトだしな。それよりここを越えればキムラスカなんだろ?だったらちょっと頼まれてくれないか?」
「はっ、なんでしょうか?」
「こっちに屋敷を襲った女がいるんだが、こいつを運ぶ分と俺達の分の馬車をキムラスカ側の方に行って手配してきてくれ。まだ港まで少し距離あるんだろ?」
「はっ、ただちに」
それでその男の申し訳なさそうな姿を見てそこそこになだめてルークはすぐに馬車を二台用意するようにと気遣いのこもった命令を出し、男はすぐにキムラスカの方へと走り出す。
「・・・んじゃ行くか。そろそろそいつ担ぐのも嫌だろ、デスマスクも?そいつの分も呼んでやったぞ」
「・・・お心遣い感謝します、と言いたいのですが私はここでカミュ達を待ちたいのでしばらくここに留まらせていただきます」
「あっ・・・そう言えばカミュ達を置いて大分先に来てたんだな、俺達・・・」
そこからデスマスクを言葉は少し荒いが気遣う声を向けるルークだったが、当の本人が申し訳なさそうにカミュ達と出したことで失念していたと少し考え込む。
「・・・そういう事ならしょうがねぇな。俺の言ったことであいつら導師達の方に行ったようなもんだし・・・カノン、デスマスクからその女を受け取れ」
「はい、ルーク様」
それでルークも負い目を感じたのもあってすんなりとその意志を受け取り、カノンにティアの受け取りを命令する。
「・・・後は頼む」
「任せとけ」
・・・ティアの身柄を受け取った瞬間、カノンはデスマスクと瞬時に小さく言葉を交わす。



・・・ここでデスマスクと別れるのはカノン達の間での打ち合わせがあって故の事だ。

いかに異能の力を持つ黄金聖闘士とは言え、距離が大幅に開けば流石に小宇宙を感じることも難しくなりテレパシーでの会話も難しくなる。故にカノン達は目下安全圏に来たルークを守るのはカノン一人に任せ、デスマスク達三人でイオン達の護衛に回ろうと言うことになったのだ。

それに加えて言うならカミュ達は今、キムラスカ側に越える為の旅券を持っていない状態にある。だからその旅券を渡すためにデスマスクはカノンより旅券を受け取り、カミュ達を待つ事になった。






・・・そんな裏事情をルークに悟られることなく、デスマスクはキムラスカ側の領地に向かったカノン達を見送る。
「・・・さて、俺はしばらく待つかね」
カノン達の姿が一先ず見えなくなったのを確認し、デスマスクは一息吐いて休憩所の方へ歩き出す。カミュ達をゆっくりと待つ為に・・・











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