聖闘士の躍動と決心

・・・アテナより公に聖闘士としてデスマスク達をつけられる事になったカノン。だがだからと言って聖闘士としての力をフルに使って力づくで手早く介入するのはルークの事を気遣うカノンの判断もあって、まだ一般人として行動しながら様子を探るという方針でしばらくは動くこととなった。









「・・・大丈夫なのか、カノン?アイオロス達はまだこっちに来ないけど・・・」
「心配はいりません、ルーク様。アイオロス達も私に匹敵する程の強さを持っています。あの二人相手に勝てる者などそうはいません」
・・・それで場はガイを黄泉比良坂送りにして夜が明けた後。
カイツールに再び向かう為に朝になって起きたルークは歩きながらもアイオロス達の安否を確認する声を向ければ、その相手のカノンは執事として安心させるように笑みを向け大丈夫と告げる・・・まぁ標準的な青銅聖闘士ですらもこの世界でトップクラスの強さになるのに、黄金聖闘士たる二人に敵う敵などまずいるはずもないだろう。その点カノンは二人に守られるイオン達の安否を心配などしていなかった。尚デスマスクも二人の後ろにいるが、ティアを荷物のように腰に手を回して小脇に抱えて歩いている・・・最早お姫様だっこすらする気も無くなったようだ。















・・・そして一方、そうやってルークに心配されているアイオロス達。



「・・・さて、夜も明けたことですし行きましょうか」
「えぇ・・・行きましょう」
・・・夜の内に合流を果たしていたイオンとジェイド達。それで夜が明けるまで休息を取っていた一同。
そんな中でジェイドが出発すると言い出し、イオンも頷いた事で一同は先に向かい歩き出す。
「すみません、僕達の為に・・・」
「いえ、気になさらないでください。これはルーク様の願いでもあるのですから」
そんな中でイオンは近くにいたアイオロスに申し訳なさげに小さく謝るが、当の本人は爽やかな笑みを浮かべて首を横に振る。
「それよりバチカルに着くまではあまり我らの元より離れないでください。先に行きましたルーク様に追い付くまでご一緒させていただきますが、おそらく合流出来るのは余程の事がない限りはバチカルになると思われます。それまでの間ですが、我らも貴方をお守り致します」
「アイオロスさん・・・すみません、ありがとうございます・・・!」
それで笑顔を向けたまま時間制限こそあるが守ると告げるアイオロスに、イオンは少しうつむき恥ずかしげにしながらも礼を言う。
「・・・いいんですか、本当に?」
「構わない。タルタロスに君達を助けに来たのもルーク様の頼みであるが、それ以上にこちらから見ればあの大佐だけに任せていては状況が更に混迷しかねないからな。それを避ける為にも我々が君達の供についていた方が面倒を避けやすい」
「・・・ですよね~」
そんな光景を後ろから見ていたアニスは横のカミュに更に小さい声でいいのかと問うが、さりげにジェイドは信用出来ないと冷静に言いつつ構わないと返された事に苦笑気味に同意する。



・・・アニスの心中にはジェイドに対する信用は既に消え去っていた。

アニスからすればジェイドはマルクトから来た皇帝の懐刀と呼ばれる死霊使いという人物で、その名があって切れ者という話もあったため好意的に接しても損はないと踏んでいた。だがそれはタルタロスでデスマスクやカノンにことごとく言い負かされた上で、都合が悪くなったと見て平然とルーク達を力で屈服させようとした光景を見てすぐに考えを変えた。

切れ者とあるがその実態は思い通りに事が進まねば平気で武力を行使し、自身の都合のいいように事柄を歪める・・・そのような人物と仲良くなった所で、自身がどうなるかわからなかったが故に。









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