不死鳥の盲目への怒り

「まだ詳しくは言えんが、いずれそのキムラスカから来る者がお前ら二人の作った借金及び付随する問題を片付けるだろう。だが現状で今のお前達に勝手に動かれても迷惑だ。そいつらが来るまでは黙って待っていろ」
「ま、待ってください!・・・これは私達の問題です、私達が解決しなくては・・・」
「黙って待てと言っているのだ、俺は!」
「「っ!」」
それで再度キムラスカからの迎えを待てと言い含める一輝だが、父親が自分達がやらなければと今更ながらにやる気を出して答えようとしたことに再度怒声を持って萎縮させ二人とも黙らせる。
「貴様らが借りた金は一般家庭ではけして並大抵の働きでは返せん金額だ!それを今から返そうなど一朝一夕に出来る事ではない!」
「で、ですが・・・アニスちゃんがそんな目に合うなら、私達がお金を返そうとしないと・・・」
「・・・今までアニスが金を借りるのは止めろと言っても、自分が受けた仕打ちを何故お前らに明かさなかったと思う?」
「えっ・・・?」
「それはまだ事実は言えんが、お前達にその事実を知られて行動を起こされたらお前達が危険になるからだ」
「「えっ!?」」
それで怒声で話を続ける一輝だが母親が食い下がって来たために、仕方なく全貌は明かさずにその危険があると告げる・・・この二人に黒幕はモースだと言ってもすぐには信じるはずがない、そう考え。
「とある事情からアニスは借金返済を盾に、ある者から脅されていた。両親に手を出さない事を条件にある者の手先となるようにとな・・・だが今お前達が変に行動すれば、その時点でお前達はそいつの手の者に捕縛される可能性が高い。まず間違いなくな」
「そんな・・・まさか、そんなことになるなんて・・・」
「だから言ったのだ、キムラスカの者に付いていけとな・・・今アニスはとあるキムラスカの要人の近くにいて、その要人経由でお前達に助けを寄越すという手筈になっている。そうでもしなければいつまでもアニスはお前達の為に何も出来んまま終わる・・・だからお前達が本当にアニスを助けたいと思っているならこのダアトで黙って待て、それが唯一やれる最善の行動だ」
「・・・はい、分かりました・・・」
それで余計な事をした場合の末路を告げる一輝に呆然とする二人。そしてだめ押しのよう待てと最後に言い含めれば、とうとう両親も抵抗出来ないと諦め、了承して首を縦に振った。助けをただ待つことを。
「・・・わかったのならいい、俺はもう行く・・・ただ再びアニスに会ったら、もう一度アニスと向き合って真剣に話し合え」
「「・・・え?」」
その姿に役目は終えたと早速帰ろうとする一輝は振り返り入口に向かうがふと立ち止まり、そのままアニスと話し合えと告げる。
「お前達は親子だ・・・娘の不幸を見過ごし、両親の不始末を娘がつける。その様なものが正しい親子の姿とは俺は思わん・・・だから、やり直せるうちに向かい合え。取り返しのつかない事態になる前にな」
「は・・・はい、分かりました・・・ありがとうございます・・・」
「私達もアニスちゃんと会って、色々話したいと思います・・・」
「・・・」
‘ガチャ、バタン’
一輝にしては珍しく純粋な助言が出てきた。だがそれを珍しい事態と思わない両親は一輝に深々と礼を言って頭を下げ、その姿を一瞥するでもなく一輝はその部屋を後にした。



・・・恐らく一輝も最初からそう言おうとして言うつもりではなかったのだろう。だが親子関係が破綻しきれてはいないもののおかしいものとは言い切れるその光景に、言わずにはいられなかったのだろう。自身のようにならないうちにせめて何か声をかけずには・・・





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