双子の片割れの焔への従事

「申し訳ありません、公爵・・・私がこの場にいなかったばかりに・・・!」
「いや・・・外出するように言い渡していたのは私だ、お前のせいではない。それよりも今はルークの行方を探すのが先だが・・・」
「その任、是非このカノンにお任せください。必ずやルーク様を見つけ、無事お屋敷にまでお送り致します」
「・・・うむ、では・・・」
「少々お待ちください、公爵」
その上ですぐに片膝をつき謝罪するカノンに自身が命を出していただけに非はカノンにないと公爵は言いつつ、ルークの身が大事と言う。そう言われすぐさまうやうやしくも固い決意を秘めた目で自分に行かせて欲しいとカノンが見上げて願い出れば、公爵は頷き命令を下そうとしていたが横から入ってきたヴァンの声に阻まれる。
「このような事態になったのも私がティアをちゃんと教育出来ていなかったのが原因であり、その責任は私にあります。ですので私がルークの捜索に行きましょう」
「・・・何・・・?」
そして出てきたのは責任があるから自分が捜索に行くという物だが、聞き捨てならない事を聞きゆっくりとカノンは立ち上がりヴァンを疑惑の視線で見据える。
「・・・謡将は賊の名をご存知のようだが、何故知られているのでしょうか?」
「・・・ティアは私の妹だ。そして元々のティアの狙いは私になる」
「・・・謡将の妹だと?この屋敷を襲った賊が・・・?」
その疑惑は賊の正体を知っているらしき言動。それを突くよう刺々しい口調で問えば苦々しくも妹という身内も身内な答えを返され、一気にカノンの眼差しが冷たく細まる。
「・・・ならばこそ何を言われる、謡将」
「な、何を・・・?」
「とぼけるな!」
「「「「・・・っ!?」」」」
更には温度を感じさせない冷淡な声が飛んできた事にヴァンは動揺かしらばっくれようとしているのか判断しづらい声を上げかけるが、心底からの怒りに気迫がこもった怒声をぶつけられヴァンだけでなく周りにいた三人までもが一気にビクッと萎縮した。だがそんなことなど目にも入らないとばかりに指をヴァンに向けて指すカノンの声は続く。
「この屋敷を襲ったのが貴方の妹で貴方が狙いだったとそれを無条件で信じられるとお思いか!?妹という存在はまだしも貴方だけを狙った物だなどと誰が信じられる!この屋敷には共に飛ばされたというルーク様だけでなく、奥方様に公爵もおられるのだ!それに屋敷の者はことごとく眠らされるという事態に陥っていた!被害にあったものが多数いるというのにあくまで自分だけを狙ったものであり、ファブレを狙っていなかったなどという保証はどこにもあるまい!なのに何故貴方は自身のみを狙った物と言い切れる!?答えよ謡将!」
「そ、それは・・・」
烈火の如く正論に加え下手な言い逃れを出来ない証拠の提示を求める声をぶつけられ、ヴァンはしどろもどろと答えに窮して視線をさ迷わせた・・・ここで中途半端にダアト所属だからと踏み入った質問をしないのは愚の骨頂と、カノンは短くもないヴァンとの付き合いから理解していた。そんなことをすればいかにもそれが正論と言わんばかりの実質は中身がスカスカな、さも自分は潔白ですと言った態度を白々しくも押し通し結局具体的な答えを返さないと容易に予測出来るが為に。
「・・・それに貴方と妹が共謀という考えも捨てきれないが、それ以上に貴方が妹を助ける為に手を打つことも十分に考えられる」
「わ、私がティアを助けるだと・・・!?」
そこで指を下ろし少し口調を元に戻しつつも更なる疑惑を盛大にぶつけるカノンに、ヴァンが何をと動揺に揺れた目を向ける。
「責任がある?そう言われるのは大いに結構・・・だがルーク様にそのティアとやらはこのバチカルから遠く離れた地に飛ばされたのだ。そこで貴方が屋敷を襲った責を負わせない為にその姿を見つけたなら表向きは見つからなかったなどと言い、行方不明扱いにすれば十分にティアとやらの命を助ける事は出来る!」
「ま、待て!私はそのようなこと・・・!」
「・・・成程、カノンの言う通りヴァンとそのティアとやらの関係には信が置けんな」
「・・・公爵・・・っ!?」
尚も続くヴァンに対する不信の想いと取るのではという予測の行動を言葉にされ心外だとヴァンは声を上げかけるが、その異議は公爵の納得の声に止められた。






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