聖闘士と冥府の誘い

「ま、ガイの事はもういい。重要なのはこれからだ」
「・・・これから?」
そんなガイの話題を自ら打ち切った上でこれが本題と言わんばかりに話を切り出すデスマスクに、カノンも眉を寄せる。
「まぁガイに取り憑く形であいつの家族は現世に留まっていた訳だが、そんな魂ってのはその対象から余程離れた場所にいかない限りはある程度行動は自由なんだよ。加えて言うなら動かない場所に執着するんじゃなく、人を対象にしてるからより魂は自由に動きやすい。そんなもんだからガイの家族は屋敷の中にいてガイから少し離れた時、ヴァンの不審な顔と発言を見たとの事だ」
「不審な顔と発言・・・?」
それで魂の執着及び行動パターンについての講釈を交えた上でヴァンの行動の事を上げるデスマスクに、カノンはおうむ返しで聞き返す。
「その家族が言うには誰もいない場で明らかにルークを蔑んだ様子でいて、レプリカごときがと呟いていたらしい」
「レプリカ・・・っ・・・その言葉が指すのは、まさか・・・!」
それで家族からレプリカと聞いたと言うデスマスクに、カノンはその言葉が示す可能性に瞬時に行き着く。
「あぁ、家族の予想じゃ何らかの手段を持って『ルーク』の偽者を用意したんじゃないかって事だ。現に七年前の『ルーク』の誘拐の件で屋敷に連れ戻した後にその蔑み方が一番如実に現れていたらしい・・・以前の『ルーク』を見ていた視線とは明らかに違う態度が尚更印象に残っていたと言ってたぜ」
「・・・っ!」
「おいおいおい、小宇宙高めんな!あんたの小宇宙はサガに匹敵する程でけーんだから、いくらなんでもルークが気付くぞ!」
「っ・・・すまない」
その予想に更にデスマスクが家族からそれを裏付ける観察報告を聞き瞬時にカノンは怒りに震え小宇宙を爆発させようとするが、焦って両手を前に出したデスマスクの制止の声にまだ眠るルークの方を見て気を落ち着けさせる。
「ふぅ・・・」
『・・・何が起きた、二人とも?カノンの異様な小宇宙の高まり方を感じたのだが・・・』
「カミュ・・・」
一先ず落ち着いた事でデスマスクが一息つく中、カミュからテレパシーが入ってきたことで二人は共に意識を集中させる。
「・・・少し知りたくない事実を知り、気があらぶってしまっただけだ。すまない」
『知りたくない事実?・・・まぁいい、それは後で話を聞こう。だがちょうどいい、こちらから報告がある・・・タルタロスが神託の盾により乗っ取られた』
「なにっ・・・タルタロスが神託の盾に・・・!?」
それで少し言いにくそうに先程の事を言うカノンにカミュは後に回すと言いつつ、タルタロスが奪われたとの報告をしカノンを一転させて驚かせた。
『あの魔物の大群は神託の盾の手先で導師を奪還するための物だった。私とアイオロスがタルタロスに到着した時にはもう戦闘が避けられぬ状態だったので導師達の元へ急いで向かい、私はアイオロスと分かれ導師とアニスを引き連れタルタロスから脱出した。今は私の側に二人ともいて、夜営をしている』
「アイオロスと分かれた?どういうことだ?」
『・・・あの大佐のせいだ』
「・・・大佐?」
そして簡潔にさっと報告をしたカミュだがアイオロスと別れたとの言葉に反応したデスマスクに珍しく苦そうな声をあげ大佐と出した事に、カノンは嫌な予感を感じた。
『・・・神託の盾が襲って来たことで私達はさっさと脱出するべきだと言った。中にいたマルクト兵の小宇宙がどんどん感じれなくなってきたことで不利だと判断してな。だが大佐はそのような状況にも関わらずタルタロスを奪還すると言い出したのだ・・・』
「ゲッ・・・マジかよ、あの眼鏡・・・」
それで当時の状況を説明しつつも話を聞こうとしないばかりか不利な状況に自ら飛び込む判断をしたジェイドに、デスマスクの顔が嫌そうに歪む。
『・・・大佐の性格上、説得が難しい上にどんどんと神託の盾が入り込んできたのを感じたのでな。このまま神託の盾がなだれ込めば力を見せねば脱出は難しいと考えた私はテレパシーを瞬時にアイオロスと繋げマルクトの代表と導師を失えば和平は難しいと言って二手に分かれる事を提案し、私は導師達を連れて逃げることになったのだ』
「・・・つまり、今はアイオロスは大佐と一緒にいると?」
『そういうことだ』
「アイオロス・・・」
そんなデスマスクの声にあえて反応せず話を続けたカミュにカノンはアイオロスはジェイドと一緒かと確認を取ると、当の本人が直々にテレパシーに介入してきた。






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