聖闘士と冥府の誘い

『確かお前はペールとヴァンに対して言っていたな?復讐が終わればマルクトに戻りガルディオスを再興したいと・・・ならば改めて聞くが、何故ファブレへの復讐を未だ為せておらん?本当にガルディオスの再興をしたいと言うなら一刻も早いマルクトへの帰参が必要だったはずだ。ホドの戦争が終わってもう大分時間が経っていて、普通に考えてマルクトから見れば姿形も見せず便りすらも寄越さないガルディオスと名乗る人間が今唐突に現れたとて認めるはずがあるまい。そう考えれば早い内での帰参及び復讐の達成は不可欠だったはずだ』
「!それは・・・!」
『・・・つくづくお前の馬鹿さ加減を認識させられる・・・お前と話をしていると・・・!』
明らかに怯んだその姿に更に追い込むよう今の時点では復讐を為してもマルクトから信じられないと言えば、明らかに今その可能性に気付いたと言わんばかりに驚くガイに伯爵は外聞も気にせず苛立った様子で歯噛みする。
『・・・今までお前は何をしていたというのだ!マルクトの為にもガルディオスの為にも動くこともなく、時間だけを無為に費やして!それでガルディオスの名を継ごうとしていたというのか、お前は!』
「父、上・・・」
『そもそもファブレ公爵とて戦争だからこそ我々と戦って今の地位にいるのだ!キムラスカ上層部よりの命でな!戦争であればこそ罪と言われず敵を倒すことが武勲となり誉れとなるが、戦争も何も起きてない今にお前が復讐を果たしたとてガルディオスにとって何の誉れにもならん!むしろ復讐などという私怨を果たしたならガルディオスの名が貶められるだけだ!ただの人殺しを輩出したという不名誉な名が送られるのだからな!・・・そんなことすらも考えず行動してマルクトが貴族に戻してくれると思ったのか!犯罪行為としか言えぬ行動を犯すだろうお前を!』
「っ・・・!」
・・・そして再び爆発した伯爵の怒りはガイの心を更に深く抉った。
ガルディオスとして相応しくないとその行動がいかに自分の為だけの物かとファブレ公爵の公的な公爵までもを引き合いに出した伯爵に、ガイに返す言葉など出てこようはずもなく下を悔しそうに向く以外に出来なかった。



公私を使い分ける、という事を大人は求められるが国の要職につく人間は息を吐くくらい当然のように求められる。それこそ目の前に親の敵がいたとて、私心を悟らせないくらいに公人としての振る舞いを欲せられる程にだ。ファブレ公爵はその点公人としても軍人としても役割を果たし、国に貢献したと言えるだろう。

・・・だがガイは一人勝手に私心のみで行動をし、マルクトの為になるような事は一切していない。むしろ復讐が成功したならマルクトに多大に迷惑をかけるような事をしようとしていた、下手をすれば即刻開戦も有り得るレベルの事を。

そしてそんなことをすれば当然ガルディオスの名は間違いなく地に落ちる。戦争で滅ぼされた一族から歴史的な大犯罪者を産み出してしまった一族として・・・



『・・・最早これ以上見てはおれん。取り返しのつかん過ちを犯す前に、ここで我らがあの世にガイラルディアを連れて行くのがせめてもの情けか・・・』
「・・・えっ、父上・・・!?」
そんな姿に伯爵は不穏な事を言い出し、ガイはその中身に頭を上げたがその瞳を見て恐怖に震えた・・・何せその瞳が深い悲しみを携えながらも、連れていくという言葉が本気としか言えないと分かるくらいに真剣な物であったために。







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