聖闘士と冥府の誘い

『そうではないか・・・復讐をどうするかを子供の態度一つで決めるだと?お前の思う我らの無念にお前自身の怒りとはそのように賭けで決めていいような物だったというのか?』
「!?そっ、それは違います父上!俺はそんなつもりでは・・・!」
『そんなつもりも何もない!百歩譲ってあのルークという子供に情が移り、思い直すのはよしとしよう・・・だが思い直す程の情が湧いたと言うのにそれを自分勝手な賭けのテーブルに乗せ、その結果次第で子供もろとも殺すことが何の意味がある!?全て人任せではないか!復讐も、殺意も、諦めることすらも!そのような我々すらも軽く見られた復讐など、達成されても無念が晴れるどころか、我々に対する侮辱でしかない!間違った想いであっても我々の為になどといった気持ちがないのだからな!』
「!!・・・っ、お、れは、なんて、こと、を・・・」
そんな姿に復讐するか否かをルークの態度で決めようとした事にガイはつもりではないと言おうとしたが、すぐさま伯爵が怒声に加え無念を晴らしてもらう側を最大限に軽く見た態度を取っていると荒々しく告げた事で・・・ようやく自身の取った無礼で愚かな行動に精神的なダメージを負ったようで、力なく下を向きぶつぶつと呟く。



・・・ガイの行動は明らかに復讐をするという行動に考え方からすれば著しくずれていると、そう言わざるを得なかった。それはそうだろう。自分でどうするかを決めずに誰か別の者にその是非を任せるなど、とても復讐をする者の心構えとしては正常とは言えない。

よしんば迷っていたにしても他者に任せるという行動は、それこそ復讐という行動をどうでもいいと言ってしまうのと同義に取れるのだ。そしてそれは復讐をすると決めるに至ったはずの理由を破棄したものと同義である・・・つまりはガルディオスの為にという大義を捨てたということだ。

そして図らずもガイはそうしてしまった、それも家族にそうだと直に示す形で・・・



『・・・ガイラルディア・・・』
「・・・姉上・・・」
そんなダメージを負ったガイに今度は姉と呼ばれた女性が悲し気に声を上げる。
『悲しいわ・・・私は貴方に復讐をして欲しいと願って、貴方を助けた訳ではないというのに・・・』
「姉上、それは・・・」
『それに父上もおっしゃりましたが、貴方が賭けの対象に勝手にしたあの子・・・あの子には何の罪もないわ。なのにその結果であの子もろともファブレを滅ぼすなんて・・・罪もないあの子を殺すことなど望んでないわ、私達は・・・』
「そんなこと・・・だったら何故ガルディオスは一族だけでなく、ガルディオスで働いていた者まで殺されねばならなかったんですか・・・?」
『それが戦争だからだ』
悲痛に歪む声を向けられ尚も自己弁護の言い訳をしようとするもルークは何もしてないという姉の声にガイはガルディオスで働いていた者達の死を引き合いに出したが、伯爵からの声で空気が変わる。
『戦争をしている時に敵味方の区別がついていて敵と分かる相手を一々罪があるかどうかを確認して殺すといった話など聞いたことがあるまい』
「・・・確かに、そうですが・・・父上は悔しくないのですか、ガルディオスが滅ぼされたことが・・・!?」
『・・・無論、口惜しいに決まっているだろう。だが戦争とは元来国の威信をかけて互いの存在をかけて戦う命懸けの物で、そこに身を投じている以上当然死を覚悟し敗北を覚悟した上で戦うことが必要になる。その上で敗北したのだ・・・口惜しさは残れど、結果は受け入れている。そしてそれはファブレ公爵も同様だ』
「っ、あいつが何を受け入れていると言うのですか!?ガルディオスを滅ぼし、のうのうと生きているあいつが!?」
『・・・のうのうと、だと?ふざけるな!その言葉、そっくりそのままお前に叩き返してやろう!』
「っ・・・!?」
・・・重い空気の中で一言一句に盛大に込められた互いの怒りだが、あらゆる意味でガイの言葉は伯爵の物に比べて軽くて安定していない。
交わされていく言葉に次第に劣勢になり怒声でのうのうと生きているファブレ公爵を許せないと責めるガイだが、伯爵の一喝により押されて声を一瞬で失った。









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