双子の片割れの焔への従事

・・・そんなありふれた、というには貴族という立場とガイなどという不出来な使用人がいることでそう言いきれない日常を日々過ごしていたカノン・・・だがその日々は唐突に終わりを告げた。















・・・それはとある日の事であった。いつもならカノンはルークの隣について一日を終える、それが日常だ。とは言え厳密に言えばカノンは普段はルーク専属ではあるがルーク個人で雇っている執事ではなく、その所属はあくまでもファブレであり人事権は公爵が握っている。そんな公爵によりカノンは、簡単ではあるが使いを頼まれルークの元を離れファブレの外に外出していた。

本来ならカノンが出ていかねばならないような理由はないのだが、基本的に預言により屋敷を出ないように言い渡されているルークに専属で仕えているカノンには外に自由に出れる時間はたまの休暇くらいしかほとんどない。それもその休暇もほとんど自らの意志によりルークの側にいることで費やしているような物だ(それはあくまで自分とガイの休みが被らないことで不安になったからであって、被った場合は一応休んで息抜きはしている)。

そんな真面目な働きぶりでこの数年で信頼をカノンに絶大に寄せた公爵は、ダアトからヴァンがルークの剣術稽古の為に来て面倒を見ているときは必ずカノンにいつもすぐ済むような簡単な用事を頼み、時間が来るまでは戻るなとの達しを与えていた。それが公爵の嘘偽りのない気遣いであることはカノンにはすぐにわかった。たまには息抜きをさせてやろうという気遣いは・・・だがそのヴァンとガイの二人(厳密に言えばもう一人いるが、直接的な事をするようには観察していて見当たらないから、雰囲気と長年の勘でサポートの役割を担っていると見てカノンは直接の役割からは外している)がその場にいると思うと何が起きるかわからないという不安があり、正直カノンからすればありがた迷惑の面が強い気遣いである。

・・・だが主の気遣いを無下に出来るほど、今のカノンは傲慢な考えを持っていない。その上キムラスカの王族が住むファブレ邸の中で白昼堂々事件を起こすほど二人も大それた事はしないだろうと、今までの行動から見ても感じていた・・・そんな考えがあったからこそ今ではカノンもその時ばかりは外に出ることを了承し、いつものようにルークに挨拶をしてからファブレ邸の外に出ていた。



(・・・なんだ!?第七音素の高まりをファブレ邸から感じる、だと!?)
・・・用事も済み下層にあるミヤギ道場の中にて、かつての力を鈍らせないよう座禅を組みながら力を練っていたカノン。そんな時に自身には使える素養がないとは言え第七音素を感じる力は小宇宙を感じる要領で十二分にあったカノンは、ファブレ邸にて滅多に起こり得ない第七音素の収束を感じ取りカッと目を見開き立ち上がる。
「・・・すまない、出る!」
「お、おいカノン!」
そして慌てて道場の持ち主であるミヤギの制止の声に振り返る事なくカノンは走り出す、ファブレ邸に向かい・・・
「・・・なんだ、あれは・・・っ!」
・・・だが道場を出た瞬間バチカルの空に先程感じた収束した第七音素の塊がどこかに飛んだ姿を目視し、カノンは目を見開いた。と、一瞬でそんな目をバチカルの上の階層へと振り向き急いで走り出す。
「・・・くそっ、ルークの小宇宙が感じれん・・・もしや今の光が何か・・・っ!」
久しく味わわなかった焦燥という感情。それを確かに感じながらカノンは嫌な想像に冷や汗を浮かべながら、天空客車へと向かっていった・・・









「っ・・・これは・・・!」
・・・そして屋敷に急いで戻ったカノンが入り口で見たのは兵士達が寝息を立てて寝ているという物。そんな常では有り得ぬ異常にカノンは今は寝ている者を起こすより先にと、起きている気配を探り屋敷の中へ入っていく。



「・・・これは・・・」
・・・起きた者の気配が集まっていたのは中庭。そこに入ってみればいるのはヴァンにガイにペール、そして何とか意識を保ってこの場に来たであろう様子でいる公爵であった。
「一体、何が・・・?」
「カ、カノンか・・・私も、詳しい事は知らん・・・が、どうやらヴァン達の話ではルークがこの屋敷に侵入してきた賊と共に疑似超振動でどこかに飛ばされたらしい・・・」
「・・・そんなことが・・・!」
誰に訪ねるでもなく独り言を呟くカノンに反応したのは弱った様子を見せた公爵で、なんとか絞り出てきた賊とルークが飛んだという答えにカノンは自身の不覚に悔しく歯を噛んだ。










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