聖闘士と冥府の誘い

「・・・少し待っていろ、デスマスク。招かれざる者の気配だ、これは」
「・・・招かれざる者、ねぇ・・・」
招かれざる者。そう表しながらも有無を言わさず待つよう言って動き出すカノンに、デスマスクは意味深に眠っているルークを横目に見てからその姿を見送る。






「・・・まさかお前がここに来るとはな」
「・・・カノン・・・」
・・・そしてカノンが向かった先にいたのは・・・憔悴したような表情を浮かべたガイだった。
まさかと言いつつ油断なくガイを見る鋭い視線に、ガイはすがるような視線を向けてくる。
「・・・なぁ、ルークは・・・ルークはどこだ?」
「ルーク様なら今は連れの下で休んでもらっている・・・だが何故お前はここにいる?お前は屋敷で待機をしているように言われたはずだ」
「そんなこと関係無い、ルークに・・・ルークに会わせてくれ・・・嘘だ、本当のルークは俺を見捨てたりなんかしない・・・俺はルークの育ての親で、親友なんだから・・・」
(・・・これは、鳳凰幻魔拳の効果か。察するにルークに見捨てられる幻を見たと言った所か・・・)
そして再会するなりすぐに力なくルークはと聞いてくるが素直に会わせてやる気など毛頭ないカノンはここにいる訳を聞いて話を反らそうとしたが、焦点の合わない瞳を浮かべ壊れた機械のようにルークと呟き自身に力なく近付いてくる様子に、カノンはこれが自身の放った鳳凰幻魔拳の結果だと推察する・・・その結果どこまでかは知らぬがかなり追い込まれ、周りの制止の声など聞かず今ここまで無理矢理に来たのだと。
「おー、こいつがお前が言ってた屋敷の使用人か?カノン」
「っ・・・デスマスク、何故ここに来た・・・?」
するとそこにデスマスクが歩いて現れてきて、その登場にカノンは非難めかせた口調と視線をぶつける。ルークを放ってきたのかという非難を。
「おいおい、んな目すんなよ。ちゃんと防護壁は敷いて来たんだ。大目に見てくれ」
「そんなことを言っているのではない、何故お前がここに来たのかと言っているのだ」
「ま、どんなヤツなのか興味があった・・・ってのが理由だったが、実際見てみると中々根深いなコイツ」
「根深い・・・?」
そんな視線におどけたように笑いながら小宇宙を用いたとは言わずに防護壁があるから大丈夫とデスマスクは言うが、話を反らすなとカノンは鋭く詰める。その視線に興味があったと正直に答えながらも根深いと表現したデスマスクにカノンもだが、何の事かわからないガイも力なく疑問の視線を向ける。
「積尸気なんてもんを扱ってっとな・・・色々厄介なもんを見れるし聞けるようにもなんだよ。そいつがいかに何かを抱えてるかがわかるかくらいにな・・・で、そいつは俺から見て中々に根深いんだよ。その抱えてるもんがな」
「・・・おい、まさかお前・・・」
その視線に積尸気を扱う者特有の死者を感じる能力をぼかしつつデスマスクは答えるが、その周囲から明らかに積尸気の光が立ち上っていて特に指先に集中していることにカノンはデスマスクがやることの予測を立て目を見開く。
「カノン、ちっと時間使うからあっちに戻っといてくれ」



「・・・積尸気冥界波!!」



「!うっ・・・」
「・・・行ったか」
・・・そして有無を言わさず言いたいことを言いきった後デスマスクは指をガイに向け積尸気冥界波を放ち、ほぼ同時にデスマスクの姿も積尸気で開けられた穴から消えた事でカノンは仕方なしに死んだよう地面に倒れたガイを見る。
「・・・ルークの所に戻るか。デスマスクが何を企んでるかは知らんが、ヤツが何かするだろうからガイはこのままでいいだろう」
そしてガイを気遣うでもなくカノンはルークを優先し、先程いた場所へと戻っていく。元々屋敷に帰ったら始末をつけようとしていた相手、その相手に情けをかける意味はないと全く振り返りもせず・・・












「・・・はっ!ここは・・・?」
・・・そして積尸気冥界波にかけられたガイは倒れていた身を起こし、辺りを見渡すが先程の平野と明らかに違う黒い岩だらけのゴツゴツとした暗い荒野に目を瞬かせる。
「へー、成功するとは思っちゃいたがこっちの方もこんな感じなんだな」
「!誰だっ!?・・・ってお前はさっきの・・・」
戸惑うガイ。そこに後ろから感心したような声が唐突に聞こえてきたことからガイが慌てて立ち上がり振り返った先にいたのは、ニヤニヤとした笑みを浮かべるデスマスクだった。







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