聖闘士と冥府の誘い

・・・黄金聖闘士の身体能力は凄まじいに尽きた。タルタロスの廊下からあっという間に空の見える場所に来たかと思えば、出口として定められた場所から出るでもなくその巨大な船体をなんの苦もなく駆け降りタルタロスの見えなくなる位置にまで走り抜けた。









「・・・この辺りでいいでしょう」
「・・・まさかここまで早かった、なんてな・・・」
「大丈夫ですか、ルーク様?」
「あー・・・ちょっと休めばすぐ治ると思うから、少し休ませてくれ」
「かしこまりました」
そういった位置にまで来た所で背に乗っていたルークを降ろしたカノンだが、腰を折って少し辛そうに膝に手を当てるその姿にすぐさま気を使う。それに少しの休憩が欲しいと顔を上げて返すルークに、カノンはすぐさま礼と了承を持って返す。
「カノン、これからどのような道程でカイツールに向かう?セントビナーを経由するか、もしくはそのままカイツールに直行するか・・・」
「・・・私はそのままカイツールに向かいたいと思っている。だがルーク様の体調が優れないというなら、セントビナー経由でもいいとは思うが・・・っ・・・」
「・・・なんだ、あの魔物の大群は・・・?」
それでルークが地面に腰を落ち着けた所でカミュがこれからの行動の方針を聞きカノンはそれに律儀に答えようとしたが、ルークを除く全員があらぬ方角を唐突に見出し、その方角にいた空を飛ぶ無数の魔物達の姿を見てアイオロスが何事かと呟く。
「・・・おいおい、あの魔物達方角から見てタルタロスのあった方角に向かってんぞ。まさかあいつら、タルタロスを襲うつもりであんな不自然な徒党組んでんじゃねーだろうな」
「不自然な徒党?どう言うことだよ、カノン?」
「遠目ではっきりはしてませんが、あの空を飛ぶ魔物はあそこまで群れを作る習性はありません。その上あそこまでの群れでも人の多数いる場所には攻めこもうとはしません・・・つまりデスマスクが言っているのはあの魔物の大群は何者かにより統制されていて、その何者かによりタルタロスが襲われるのではということです」
「!・・・おいおい、それってまずいんじゃないのか・・・あそこには導師がいるんだろ・・・!?」
それでデスマスクが方角と不自然さからタルタロスが襲われるのではと予想をつければ、ルークは立ち上がりながら何故かとカノンに聞く。しかしカノンから魔物の習性及びこれから取られるだろう行動の予測を聞かされ、ルークはそのまずさに驚きタルタロスの方をたまらず体ごと向く。
「確かにこのままいけば様々な問題が起きる事は容易に予想が出来ます。それで最も大きな問題として容易に予想が出来るのは彼らがバチカルに来れなくなった事により、いずれ今のキムラスカとマルクトでの国家間戦争になりかねないことです」
「それは・・・でもあいつらがダメでも、キムラスカから和平って訳にはいかないのか・・・?」
「それは無理だと思われます。マルクトは何やら重大な理由があって和平に踏み切ったのでしょうが、キムラスカからすればマルクトと和平を結ばねばならないと思えるような理由はありません。ルーク様がもし公爵にそうするよう申し上げても、まず聞き入れられるとはとても・・・こちらから歩み寄る理由はない、そう返されるのが関の山かと」
「・・・やっぱり父上の性格だとそうなるか・・・」
そんな姿にカノンは可能性の高い推測として戦争の可能性を上げルークは振り返り自分達からは和平は出来ないかと問うが、理由がないとの返答に納得して左手で頭を抱える。
「・・・ちなみに聞きますが、ルーク様は和平を結びたいのですか?」
「ん・・・あぁ、まぁな。マルクトも導師も和平を望んでんだしな、あの眼鏡はホントにそう望んでるか別にしても・・・それに一々戦争だからっていがみ合うよりか、仲良くなって争いなんかしない方がいいだろ」
「・・・そうですね」
今度はそこにアイオロスがその真意を問えばさりげにジェイドに対しての毒を交えつつそうだと言い、争いはないと言うルークにアイオロスは微笑を浮かべる。
「・・・カノン。俺は少しタルタロスに戻るよ」
「・・・もしや、導師達を助けるためにか?」
「あぁ、その通りだ」
アイオロスはそこから表情を引き締め戻るとカノンに言う。その目的をすぐにイオン達を助けるためと予測したカノンに、アイオロスは再度の笑顔で返す。
「でも、大丈夫なのか・・・あんな魔物達の群れに向かうなんて・・・?」
だがその無謀と普通なら言える行動にたまらずルークは不安そうにアイオロスを見る。









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