兄弟として、仲間として向かい合う

「・・・ここがアテナに用意していただいた部屋か。ベッドが二つと言うことは、二人でこの部屋に住むのか?」
「あぁ、二つ部屋を用意しようと言われたが世話になる身で贅沢な事は出来ぬと思ったのでな・・・部屋は一つにしてもらった」
「それで今は勉学の為に時間を取っている、と言うわけかな?」
「はい、アテナ・・・ここでは沙織お嬢様と呼ぶように言われたんですがお嬢様がいない時には時間が取れるらしく、こうやって屋敷の人は兄上が直に勉強を見てくれる時間を設けてくれたんです」
「兄上、か・・・まさかカノンがこのような呼ばれかたをされる日が来るとは、実際に見てみねば分からぬ物だな・・・」
そこでサガは何気無い会話から二人へと話を振るのだが、ルークの兄上との言葉に何とも言い難い笑みを見せる。
「・・・何を言う。お前も兄と呼ばれる資格は十分にあるのだぞ」
「・・・何?」
「ほら、ルーク」
「・・・サガ、兄さん」
「っ!?・・・わ、私を兄と・・・!」
「嫌、でしたか?」
「い、いや!嫌というわけではない・・・ただ、いきなりのことで少し驚いただけだ・・・」
カノンはその姿にルークの背を押すようにして兄と呼ばせると、サガは予想以上の衝撃に驚愕して不安そうな瞳に動揺に揺れながらも首を横に振る。
「だ、だがいいのか?私と君はカノンと違い、そんなに時間をかけて君と話したこともないが・・・」
「いえ・・・それはこっちの台詞です。兄上は大丈夫だって言ってくれたけど、最初から兄と呼んでいいのかと思ってしまったから・・・迷惑なら、止めますけど・・・」
「い、いや・・・そういうわけではないが、どうしてそう言った・・・カノン・・・?」
「変に互いに距離を探るよりはこちらから近付いた方がいいと思ったからだ」
すぐに確認を取るサガにルークがまた不安そうな顔をしたことに首を振るが、そう言わせたカノンに何故と視線を向けるとこれで間違っていないとばかりに断言する。
「色々と考えすぎるお前の事だ。どううまくやろうかと失敗することを避けようとして、俺達との事を慎重にいこうとしていただろう。だがそれでまごついていた所で時間がかかるだけなのは目に見えている・・・だからこちらから自分達はこう思っていると告げようと、ルークも賛成の上でこう言ったのだ。妙な空気になるくらいならいっそ、早く話を押し進めようとな」
「っ・・・そういうことか・・・」
それでカノンから気を遣った上での事と配慮を覗かせる言い方をされたことにサガもハッとして、苦笑を浮かべた。カノンの言うよう自分は失敗を恐れて接しようとしていただろうと。
「そういうわけだ。お前の性格だから気にするななどと言ってもどうしてもどこか気になって仕方無いだろうが、それはこちらから行くからそう覚悟しておいてくれればいい」
「それは、分かったが・・・呼び方が違うのは何故だ?言ってはなんだが、兄上と兄さんではどちらかと言えば親密度は兄さんの方が上のような気がするのだが・・・」
「あ~・・・それは俺の中での基準なんです。前は主従って形だったから呼び捨てで呼んでたんですけど、立場が変わったことに兄って存在を気安く呼ぶのはどうかと思って・・・それでカノン兄上はこれまで通り兄上って呼ぶことにしたんですけど、サガさんまで兄上って呼んだら呼び分けが出来なくなるので兄さんって形にしたんです」
「成程、そういうことか・・・」
カノンがだから覚悟をと笑みを浮かべて言う中、サガが向けた疑問の声にルークは自分の基準についてを答えその中身に納得する。別にサガの方を特別扱いしたわけではないとのことに。






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