兄弟として、仲間として向かい合う

「ルークはその事実を知ったが、乗り越えることが出来た・・・無論一人でそれら全てを乗り越えた訳ではないが、それでも自分が自分であることをしっかりと強く気持ちに持って旅を完遂できた。腕っぷしは俺達に星矢達のようにはまだ強くはないが、その自分の存在も含めて乗り越えようと前を向いていく在り方は俺達に似ているように思えて違う在り方だ」
「・・・成程、そう言われれば確かにそうだな」
続いたアイオロスのルークの説明の言葉に、サガは納得する・・・サガ達が何も悩みも考えもしていないというわけではないが、基本的に戦う理由に自我というものを既に確立しているのが聖闘士陣である。それも一つの強さと言えば強さなのだが、ルークのように生い立ちなどに不安を抱えながらも立ち向かおうとする気持ちを持つこともまた強さ。その事にサガも気付いたのだ。
「おそらくカノンもだが、ルークもお前に会えるのを待っているだろう。そしてお前がルークを拒否しなければ、ルークはお前を受け入れてくれるはずだ」
「そうか・・・済まなかったな、アイオロス。世話をかけた」
「気にするな」
そしてそんなルークだからこそ会うことを恐れるなとばかりに告げるアイオロスにサガは礼を言い、笑顔の返答を受けた後に人馬宮を後にしていく・・・






「・・・おぉ、サガ。今帰りか?」
「そうだが・・・ここにいたのか、カミュ」
「はい、日本からちょうど戻って来た所です」
・・・そして次の天蠍宮に着くと、そこにいたのは主のミロとカミュの二人だった。
「日本か・・・ちょうどカノン達と行き違いになったといった所か」
「おそらくそうでしょう。二人とは顔を合わせなかったので」
「なんだ?カノン達に会いに行くつもりなのか?」
「流石に今日は行かないさ。シオン様には今日は休むようにと言われている・・・だが近日中には会いに行くつもりだ」
それで二人と会話を交わすのだが、教皇宮にいた時よりも格段に落ち着いて会いに行くと言い切るサガの表情は晴れやかだった。
「そうですか・・・では日本に行った時にはカノン達に氷河達にもよろしく伝えておいてください」
「あぁ、伝えておこう。ではな」
それでカミュから言伝てを頼まれ快く承ったサガは天蠍宮を後にしていく・・・








・・・続いては天秤宮になるのだが、老師こと童虎はハーデスとの戦いが終わった今も五老峰に住んでいる。勿論有事があれば即座に聖域に来るようにはしているのだが、それ以外は五老峰からはあまり離れることはない。故に天秤宮に老師の姿はなく、サガは上の誰もいなかった宮同様に天秤宮を素通りしていった。



「・・・サガか」
「シャカ、通らせてもらうぞ」
そして次の処女宮にて、宮の主で座禅を組んで座っていたシャカと会ったことにサガは軽く一言かけて通り抜ける。
「・・・神のような男と言われ、完璧な存在として見られていたサガ・・・だが今は普通の人間として悩み、苦しむ・・・サガとしては誰の理解も得られず神のように崇められるよりは、一人の人間になれたことが救いだったのであろう・・・」
シャカはその後ろ姿を閉じた目で見送ることもなく、ただサガについて感じたことを口にする。こうなってよかったのだろうと・・・






「・・・おぉ、サガじゃねぇか」
「あぁ、獅子宮にいなかったと思えばアイオリアも一緒だったのか」
「訓練生達の稽古をつけに行った後なのだが、デスマスクに呼び止められてな。さっきまで食事を馳走になっていたんだ」
「そうなのか?」
「飯を作ったんだが、一人で食う分にしちゃちょいと量が多くなりすぎちまったんでな。ちょうどその時にアイオリアが通りかかったんだよ」
「そういうことか」
そして獅子宮にアイオリアを確認出来ずに巨蟹宮に降りてきたサガはデスマスクと共にいたアイオリアの姿を発見し、会話を交わす。日常的な他愛ない会話を。







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