兄弟として、仲間として向かい合う

「浮かない顔だね・・・この数日、カノン達と顔を合わせて話をしなかったことがそれほど悔やまれるのかな?」
「っ・・・あぁ、情けないことに気を使われてしまった・・・この数日はシオン様は教皇宮に泊まれと命令されたが、私の心の内をおもんばかっての事だと分からなかったわけではない・・・そしてそれを拒否出来なかった私自身に情けない気持ちで今は一杯だ・・・」
アフロディーテはその顔を見て早速核心を突き、サガは認めるしか出来ずに重く頷く。シオンの気遣いに甘んじる事しか出来なかった事を。
「・・・思えば貴方はカノンがただ一人、魂すら見つからず行方不明と聞いた時から誰よりもカノンの事を案じていたな・・・」
「あぁ・・・フッ、情けない事だ。カノンが生きていたこと自体を喜びはしたものの、いざ会うとなった時には気後れしているということに気付いた時にはな・・・」
続いたシュラの言葉にサガは自嘲の笑みを浮かべて答える。自分が誰よりも会いたいと思ったその実、会う時の事を考えていなかったという事に。
「・・・だがそれではいけないと思ったからこそ、貴方は悩んでいる・・・違うか?」
「っ・・・そうだ、確かにその通りだ・・・私はカノン、そしてルークという少年と向き合いたいのだ・・・!」
「・・・そう思えるのなら後は時間の問題だろう。とは言え勢いに任せたままでは何もならないだろうから、せめて今日くらいはゆっくり双児宮に戻る道すがらや戻ってからでいいから色々考えるといい。短慮で行動を起こせば後悔する事になるよ」
「っ、そうだな・・・では私は双児宮に戻ろう、邪魔をしたな二人とも」
だがシュラからの指摘にハッとしたようにサガは自分の気持ちを燃え上がらせていくのだが、アフロディーテからの冷静な戒めにまたハッとして気持ちを引き締めた上で礼を言ってから下の方へと向かう。そのサガの後ろ姿を二人は微笑を浮かべながら見送った。









・・・双魚宮の下はカミュの守護する宝瓶宮になるのだが、サガが来た時には主のカミュの姿はなかった。なのでシュラの守護する磨羯宮共々、足を止めることなくサガは下の宮へと向かった。



「・・・おぉ、サガか。今戻りか?」
「あぁ、アイオロス」
・・・そして磨羯宮の下の人馬宮に降りてきたサガが会ったのは、主であるアイオロスである。
かつての次期教皇の選択を告げられる前同様の笑顔を浮かべ応対するアイオロスに、サガもまた笑顔を浮かべる。かつての殺し殺されという関係性はもうリセットしたからこそと、そう示さんばかりに。
「ちょうどよかった・・・聞きたいことがある」
「俺にか?」
「あぁ・・・少しルークの事について考えていたんだが、カノンと一緒に旅をしてきたお前の視点から話を聞きたい」
「・・・成程、そういうことか」
それでサガから質問とルークの事を切り出され、アイオロスは納得したよう頷く。
「それで、ルークとはどういう少年なんだ?」
「そうだな・・・俺の目から言うなら星矢達とは共通している部分はあるが、別の意味での強さがある少年だな」
「別の意味?」
「話に聞いたなら知っているだろう・・・元々のルークが生まれた、正確に言えば造られた理由はアッシュという被験者の身代わりの為だと」
「っ!・・・あぁ、それは聞いている・・・」
そして早速と質問をするのだが、アイオロスが前置きを置いた上でルークがレプリカである事を持ち出した事にサガは苦い顔を浮かべる。サガからしてもあまりに身勝手で残酷な理由で産み出された物だと感じた為に。











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