兄弟として、仲間として向かい合う

・・・カノンは地球に戻った。ルークも連れて。話はそこから始まる・・・












「・・・仕事が欲しい、と?それも聖闘士としてではなく、一個人として」
「はい・・・アテナにこのような願いを申し出るのは失礼かと思いましたが、私には貴女しか頼れる方はございません。城戸沙織という人間の顔を持たれているアテナ以外に・・・」
・・・教皇宮の中、両脇にシオンとサガの二人をつけて椅子に座るアテナの前でカノンは膝だちで頭を下げながら真剣に答える。
「理由は・・・ルークですか?」
「はい・・・ルーク自身は聖闘士になることを望んではいますが、元々ルークはオールドラントにいた身でまだ地球には慣れていません。修業の中で地球の文化に触れてもらうようにするのもよいかとは思いましたが、二年・・・いえ、せめて一年は地球の勉強の為にも市井の中にいさせてやりたいのです。勿論修業もつけてやれるなら本人の希望でつけてやろうとは思ってはいますが、市井の中に入るなら保護者が必要になると思ったのです」
「そう思うのはいいとは思いますが、一応知っているでしょうが城戸財閥には孤児院など身寄りがない人物に対する施設もあります。私が一言言えば、ルークにそういった心配はなくなりますが・・・」
「いえ・・・今言ったようにルークは地球に来たばかりで、右も左も分からぬ状況になります。そのような状態で放っておく事は出来ません。それに私自身、アテナにただルークを預かってほしいなどと願うだけというのはどうにも気分がよくありません・・・知らなかった事とは言え、私は貴女から目を背けていたのですから・・・」
「だからただ頼るだけということはしたくない、と言うことですか・・・」
そう願った理由をルークと察するアテナに肯定を返すカノンは話を進めるのだが、過去の所業を心底から悔いるような声にアテナも納得すると同時に傍らで見ていたサガは苦く辛そうな表情を浮かべていた。
「・・・分かりました。そこまで言うのでしたらルークと貴方の受け入れ先に働き先を用意しましょう。幸い貴方にはファブレという貴族の屋敷で執事として働いていた経験がありますから、城戸の屋敷でも執事として十分な働きは出来ると思います」
「お待ちを、アテナ・・・と言うことはカノンとルークは日本に滞在させるおつもりですか?」
「えぇ。私が日本に行く時には大抵黄金聖闘士の誰かに護衛についてもらう事が多いですが、カノンなら実力としても問題はないでしょう。ただオールドラントの言語は大体英語と変わりがなかったので英語圏に置いた方が良かったのかもしれませんが、私の目の届く範囲であれば十分にルークに色々と勉強を行ってもらうことも出来るでしょうからね」
「・・・そういうことですか。では私からは反対することはございません」
そしてその要望を受け入れるとしたアテナだが、日本に限定した行き先にシオンが何故との声を上げる。ただ訳を聞いてすぐに納得して反論はないと下がる、考えなしの物ではないと明らかになったために。
「ただ、すぐにそれらが用意出来るという訳ではありません。色々と手続きがありますからね・・・ですから用意が出来れば呼びますので、それまでは聖域で過ごしていてください。では下がっていいですよ、カノン」
「ハッ、では失礼しますアテナ」
「・・・」
それで話は終わりと退出を言い渡すアテナにカノンは立ち上がり頭を下げてから退出をしていくのだが、その後ろ姿をサガは複雑そうに見詰めていた。








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