聖闘士の手より離れた世界

「行ったか・・・」
「はい・・・では我々も戻りましょう。これよりの未来をより良い物とする為にも」
「うむ、そうしよう」
インゴベルトはカノンのいなくなった場を見て呟き、公爵の声に振り向き頷く。例え困難が待ち受けていても立ち向かうと、そう強く決めた表情で・・・















・・・かつて、預言という繁栄を詠まれた未来を夢見、そしてそれこそが唯一無二の未来であるべきと預言を盲信する者が多数を占める世界があった。だがもう今はそんな考えはその世界から失われていった。

その世界の中の大国の一つの国はいち速く預言という風習から離れた。その預言という物に滅びるとの定めが詠まれていた事も相まってどこよりも早くだ。今となってはどこよりも自由でいて、住みやすい場として名を上げられている。

そして預言という物を神聖化して崇め奉り、実行に移していた教団もまたどんどんと形を変えていった。かつてのように預言がその地の絶対の目的ではなく、今はその過去を振り返りつつ確かな歴史として残す場に。それで預言が無くなり、導師という存在もいなくなったその地から一時期人が離れていったが、次第に時が進むにつれ緩やかに人が増えていって以前ほどとは行かないがまた人が集まる場所となっていった。

そしてその世界の最後の国は下部はそこまでの混乱はなかったが、上層部はいつ予期せぬスキャンダルが起きるかと戦々恐々する緊張感に満ちていた。次代の王に切り替わって何が起こるのかと、内外ともに警戒しなければならない程の理由という暗黙の了解があったために。だが一応表向きとしては国外はおろか、国内にも大きく残念なニュースが流れたことはなかった・・・そうなりかけたことは実は何度かあったが、それらは何とか取り返しがつかない状態になる前に止めた為に。まぁとにかく、その国もまた一応は大した問題も起こらぬ形で国をまとめあげることは出来てはいた。












・・・三者三様、各々が違う状況にありながらもそれぞれの道を模索しながら前へと進んでいる。だがそんな風に世界を変えてくれた者達が影にいて、どんな存在だと呼ばれているのかを知っている者は数は少ない・・・



「・・・この世界も大分変わってしまったが、もしガイラルディア様が何かの弾みでも復讐を成し遂げてしまったならこうはなっていなかったのでしょうな・・・聖闘士・・・すごい方々だ・・・」
・・・とある街の一角。そこにファブレを辞めて、小さな家で一人暮らすぺールがいた。
そこでペールは天井をそっと見上げながら、思い出すように言葉を漏らす。デスマスクから告げられた聖闘士という呼び名を・・・



「・・・戻ったぞ、ムウ」
「あぁ、お帰りなさいカノン」
「アテナは教皇宮においでか?」
「えぇ。後帰ってきたらデスマスクが連絡をくれと言っていましたよ。話を聞きたいし打ち上げ用にパーっと料理を作るから早目に頼むと」
「そうか・・・ではアテナへ報告に向かう道すがら連絡を取ろう」
「そうしてください」
・・・そしてそんな聖闘士であり、一番世界の改革に関わっていたカノンは地球に戻ってムウと会話を交わしていた。事は終わったと、穏やかに落ち着いた様子で・・・












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