聖闘士の手より離れた世界

もしそうだというなら、キムラスカはダアトと同じく後継者についてどうするかと四苦八苦せねばならぬ事態に陥るだろう。

今のキムラスカにとって見れば、後継者はアッシュとナタリア・・・正確にはアッシュ以外に次代の王族を産み出せる存在はいない。だがそのアッシュがまともに愛するというか、伴侶として認めるような存在はナタリア以外にいない。しかしその関係が子供のような純粋でいて性的な物が介在しない物であったとしたなら、更に言うならそんな状況がナタリアが子供を産めない年齢までに続いたとしたなら・・・もうキムラスカにとって、次代の王族を産み出す全うな機会は失われたも同然となる。

ただそれは杞憂ではないかと思われるかもしれないが、放っておけばそれこそインゴベルト達が言ったように子供を作る事を後回しにしようとする可能性も有り得なくはないのだ。その上で二人の後をどうにかして無理矢理にでも押さなければ、今の関係に酔ったままで性的な事はまだ早いだとか心の準備が出来てないと色々言い訳を言って避けようとする可能性も有り得る。

そうなれば流石に必要なこととは言え、第三者を介入させて夫婦の営みを無理矢理行わせるのはいくらなんでも二人から反発が起きるのは目に見えているし、誰がその役目を果たすのかという事にもなる・・・つまりはそうさせるのは実質的に不可能と見ていい。

そういった事態になってしまえば後になればなるほど取り返しがつかなくなるが、もしナタリアが子を産めない事態になっても一応は状況の打開の為の手段はなくない。それは側室を設けるか醜聞覚悟で隠し子と呼ばれるような存在を造る、と言った物だ。そこまでの事態となればいかに互い以外を見ていない二人と言っても、キムラスカ王室の存亡がかかっているとなれば嫌でもそうしないとならないと詰め寄られる受け入れざるを得なくなるだろう。例えどんなに不貞を行いたくないし行わせたくないと言った所で、王家が滅亡確定という状況となれば二人の立場が消えてなくなれば何の意味も無くなってしまうために。



・・・ただそれらについてはそれこそ、一番最後の最悪の状況を避けるための手であって最善の手とはとても言えるものではない。重要なのはそんな状況に至るまでを避けることだ。そしてそうするのを避けるのに一番手っ取り早く確実なのはどちらかでもいいからせっつかせ、性的行動へ導くこと・・・そしてそのせっつかせる相手がアッシュではなくナタリアなのは、インゴベルト達が決めたのもあるが元はと言えばカノンからの提案なのである。









「・・・それにだ。一応子供さえ出来てしまえばナタリアが女王という位置に着くのは磐石な物となると聞いた時は、わしもその言葉を少なからず魅力的な物と感じてしまったのだ。例えナタリアからすれば本意でないことをしなければならないことや、そこから先により辛い事が待っていようとな・・・」
「そうですか・・・心中お察しします」
と、そこでインゴベルトが途端に親としての情を滲ませながらホッとしたように話す姿にカノンは簡略に答える。









・・・一応言っておくなら、カノンはナタリアに対して温情をかけたと言うわけではない。ただキムラスカを最悪の状況に落とさない為、考えを煮詰めていった上でナタリアがアッシュの正妻という地位を確立させた方がいいと思った為だ。当然インゴベルトもそれを理解しているが、それでも親子としての情はまだ残っているからこそカノンに感謝したのだ。その案についてを。

その上で何故ナタリアをせっつかせ、女王としての地位を確立させた方がいいとカノンが考えたのかと言えば・・・結果的に二人を否応なしに縛り付け、がんじがらめの状況にしてしまおうと思った為だ。下手に自由にさせるよりはそうした方がいいと。









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