聖闘士の手より離れた世界

「確かにわしは事実を知ってからもそなたに実の娘のように接してきた・・・だがならばこそ実の娘のようにと言うなら、甘やかすだけではなく時には叱り罰を与えるのも親の役目と言える」
「叱るって・・・」
「そうだ。そなたはわしの言うことを聞かずに何度も独断の行動を繰り返してきた。そしてもう言葉だけで説得が出来ないと考えたからこそ、こういった行動に出たのだ」
「ですがこの状況は!・・・あまりにもナタリアにとって酷すぎます・・・せめて貴族達には言わず、我々の中だけで納める事は出来なかったのですか・・・!?」
インゴベルトはそこで親としての責務を果たすためと話を続けていくが、そこにアッシュが今にも飛び付きたそうな程の感情を押さえ付けながらそこまでやる必要はなかったと訴えかけてくる。
「陛下も言われたはずだ、最早そんな領分を越えてしまったと。それにだ・・・お前も私達の言うことにかまけず自分勝手な判断を繰り返したからこその結果だと言うことを忘れてはいないか?」
「そっ、それは・・・」
だがすぐに公爵が横入りしてきて自分の行動を思い出すように言われれば、アッシュは勢いをすぐに削がれ目を反らしてしまう。
「・・・どちらにせよ、だ。我々が今この場を設けた最大の理由は今のそなたらの状態ではわしらの後にキムラスカを任せるなど、無条件ではとても出来ん・・・そう思ったから、そなたらの秘密を貴族達に明かしたのだ。これ以降の身勝手な振る舞いに考えは、そなたらの破滅を招く・・・そうさせるためにな」
「まっ、まさか!?・・・お父様は王族の蒼い血を絶つとでもおっしゃるつもりなのですか・・・!?」
「いや、わしらはあくまでもそなたらに対する牽制を述べ上げているだけだ・・・本来言う必要も講じる必要もなかった牽制をな」
そんなアッシュに触れることなく話を不穏な方向へ進めるインゴベルトにナタリアは自分達の排除にかかると感じて泣く寸前の声を上げるが、一応は牽制だけと厳しい目付きで告げる。ここまでするつもりはなかったと強調しながら。
「今までに言ったことから分かるだろう・・・そなたらに対する信頼はわしらの中には存在しないと言ってもいい。だがだからと言って今更そなたらの存在をどうにかしようとしたなら、それこそキムラスカの王族の血脈の終わりの時が訪れてしまう・・・だから一応はそなたらにはこれまで通り、次期キムラスカ王と女王の座についてはもらおうとは考えている。公務もまともにこなしてもらう形でだ。だがもしそなたらが無為に驕り偉ぶるような態度を取ることもそうだが、私心を押し通すようなやり方をするようであれば・・・即刻そなたらの政治に携わる権限を剥奪の上、この者らが政治を主導してそなたらは飾りの王と女王となる」
「「!?」」
・・・そしてインゴベルトから次に過ちを犯した場合の最終的な処置が告げられた、二人にとって最も最悪な未来が訪れる処置が。
王と女王としての権限剥奪までもが視野にあるとの言葉に二人は愕然とした表情を浮かべるが、インゴベルトはそれでもなお全く表情を崩さない。
「無論、これはあくまで最悪の場合だ。わしらとしてもそのような事態にしたい訳ではない・・・が、そうしたくないからと言って目の前の問題を看過してしまうような事にはもっとしたくはない。今のそなたらの状態を放っておいたならまず間違いなく貴族達と衝突するばかりか、従者や兵士達にも無遠慮な態度で当たり散らし最終的には民にまで被害が及びかねんからな」
「そ、そこまでだと言うのですか・・・私達に対する不安は・・・!?」
「そうだと言っている」
そこで補足こそするが全く二人を信じてないといった中身の言葉にアッシュが動揺に声を揺らすが、インゴベルトは全くぶれずに頷く。










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