聖闘士の手より離れた世界

「あぁ、伝えた。本物のナタリアは・・・もう死んでいる事はな」
「!?」
「おっ・・・伯父上・・・!」
そんな様子に対してインゴベルトは事実をハッキリと口にし、ナタリアが言われた事の意味に理解を拒むかのように固まりアッシュはそれを見て何故言ったのかとばかりに強く抗議するような目と声を向ける。
「そこまで言うほどの事ではなかったとそう言いたそうな顔をしているが、そもそもわしらとしてもナタリアの事実を言うつもりはなかった。当人の為にもだが、キムラスカを無闇に混乱させぬためにもな・・・だがその事実を隠してその当人がキムラスカを混迷に導くと言うのであれば、我々としても見過ごす事は出来ぬ」
「でしたら!私にこういった事があるを言ってくだされば・・・!」
「自分は自重した、もしくはナタリアを自重させたとでも言うつもりか?・・・そうは言ってもそなたがナタリアをなだめたり言うことを聞かせる事もそうだが、それを聞いて自分が焦らなかったとの確証はあるのか?そなたも事実を知っていたからこそ、わしらは焦ると踏んだが・・・」
「そ、それは・・・」
「お、お待ちになってください!・・・お二人の話を聞いていたら気になったのですが、まさかルークも・・・私の事をそうだと、知っていたと言うのですか・・・?」
「っ!?・・・ナ、ナタリア・・・」
インゴベルトは必要はあったことと返すが、アッシュはそれでも違うやり方はあったと訴える。しかしすぐさま知っていたからこそ冷静にはなれないだろうとの予想にすぐにうろたえるが、そこにナタリアが泣きそうな表情で自身の方を見てきたことにアッシュは気付いた。自身もナタリアの事を知っていたとインゴベルトにバラされた事に。
「・・・あまりアッシュを責めてやるな、ナタリア。アッシュはそなたの事実を単に黙っていたというのではなく、わしらが言わないようにとしていたのだ。アッシュの事を貴族の皆に言わぬようにしていたようにな」
「っ・・・で、では本当に私が『ナタリア』ではないというなら・・・何故私が『ナタリア』となったのですか・・・!?」
「・・・こちらもまた今更公になればダアトと面倒な事になるから言えぬことだが、本当の『ナタリア』は死産で生まれ預言に詠まれた中身に従いそなたと入れ換えたとのことだ。そしてわしらがその事実を知ったのはそなたが先程言ったバチカルから出た時、そなたを何とか連れ戻そうとした我らを当時の大詠師であったモースから明かされた為だ。その証拠として本当の『ナタリア』の亡骸が埋まっているという場所を調べたら赤子の亡骸が見つかった・・・本来人が埋まっているべきではない場所にだ」
「!?・・・で、では・・・私は、本当に本当の『ナタリア』ではないと・・・!?」
「・・・そうだ」
「!!・・・嘘・・・嘘ですわ、そんなこと・・・!」
「「「「・・・」」」」
「ナタリア・・・」
そんなアッシュを助けるためではないが声をかけたインゴベルトにナタリアは本当かと恐る恐る確認していくが、次第に真実だと重い口調から否応なしに理解させられて事実を認識したくないとばかりに瞳に涙を盛大に溢れ出させて泣き出した。周りの貴族達も知って時間がそう経ってないからか複雑そうにその光景を見つめ、アッシュも知っていたからこそ下手に慰めも出来ずに複雑そうにナタリアを見詰める。
「・・・慰めになるかは分からんが、わしは事実を知ってからもそなたの事を本当の娘として接してきた。その事についてだけは間違いないとだけ言っておく」
「・・・で、でしたら・・・何故その事を今更言うのですか・・・私はこんなにも辛く、悲しい思いをしているのに・・・!」
「・・・娘と思っているかどうか、そんな領分をそなたが越えてしまったからだ」
「・・・っ!?」
その姿に親としてのフォローをインゴベルトは入はれるがナタリアがならいっそ言うなとばかりに辛いと口にしたことに、威圧感を持たせた口調で返しビクリとさせ泣くのを止めた。











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