聖闘士の手より離れた世界

「大方クリムゾンが言ったが、そなたの態度はあまりにも目に余る行動が多かった。三年ほど前のバチカルから勝手に脱け出した件からもそうだが、そなたは自分の判断で勝手を起こしすぎる・・・だが最早もう言葉で注意するだけに留めておくにはもう無理な状況にまできた」
「なっ、何故そこまで言うのですか・・・!?」
「そなたがわしらの忠告を聞かずに来た事の限度もあるが、先に言ったようにそなたとルークはそう遠くない内には結婚してもらわねばならん。が、そこで次代の王に女王ともあろう二人が私心のみでプライベートな時間を過ごすこともそうだが、何より政治にまでそのようなやり方を通そう物なら最早それは政治ではない・・・独裁だ」
「どっ、独裁!?」
「そうだろう・・・故あれば自分達の気に入らぬ物は自らの考えだけで排除をし、反対に気に入ったのであれば周りの反対を押し切って取り入れて押し付け・・・賛同に否定を自らの気分に考えだけで強要し、行動に移すのは正しい事と言えるか?それこそそなたが勝手にバチカルから脱け出したあの時の事を思い出して答えてみよ、ナタリア」
「・・・っ!」
・・・インゴベルトに一方的にやり込められていくナタリアに、周りの貴族達から同情の目が向けられることなどなかった。
過去の事例を引き合いに出されても何とか反論しようとしたナタリアだが独裁という言葉に加え、その過去の事例を否定出来ない問いを持ち出されてたまらず視線を背けた。下手な言葉など返せないと感じ。
「・・・返す言葉が出てこないようですので話を戻しますが、お二方のそのような態度についてをこの数日で調査した結果として私と陛下は話し合いをした上である決断を下しました。それは」



「貴殿方二人の秘密についてをこの場にいる貴族の者達に明かすことです」



「「!?」」
・・・そしてそこに公爵から二人にとって、最も望ましくない言葉が出てきてしまった。秘密をバラしたと、本来なら闇に葬られた方がいい事実が知られたとの言葉が。
反射的に二人は公爵に疑いの目を向けるが、そこには揺れることのない淡々とした顔があるだけである。
「というわけだ・・・アッシュ」
「なっ・・・っ・・・ま、まさか父上・・・本当に・・・!?」
「あぁ、そうだ。嘘や冗談などでこのようなことを易々と言うはずはない」
「「っ!」」
そして『アッシュ』と『ルーク』から平然と呼びかえる公爵にアッシュは絶句しかけるが、周りの貴族達が動揺した素振りの全くない様子を見せていることに本当に事実なのかと恐る恐る確認を向け・・・肯定が返ってきた事に、ナタリア共々青い顔色になって息を呑んだ。
「一応言っておくが、事実を知っているのはここにいる面々だけだ。流石に事が事なだけに事実を知る者が増えれば増えるほど漏洩の危険性が高くなる上、そうなった場合終わったはずのヴァン達の件でダアトとの順調な国交がこじれることになりかねんのでな」
「そ・・・それは、そこまでして私の行動が目に余ったという事ですか・・・!?」
「あぁ、その通りだ。本来ならお前の事を言うつもりはなかったが、私達の言葉ですらまともに聞かずどういった事情があるのかを深く考えないばかりか、従者に対してまで横暴を繰り返す様子にはもう口で言っても何にもならぬと思ったのでな」
「だ、だからと言って・・・っ!」
それで一応の注意を告げるとアッシュはそこまで言うほどの事かと確認し、厳しく肯定を返す公爵に反論しようとするが途端にハッと言葉を止める。
「ま、まさか父上に伯父上・・・ナタリアの事も、伝えたというのですか・・・?」
「えっ・・・!?」
そして恐る恐ると口にしたナタリアの名に、当人は不安そうにアッシュを見る。自分に何があるのかと。








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