聖闘士の手より離れた世界

「んじゃお言葉に甘えて俺達は帰るが・・・何かアテナに言うことあるか?」
「俺だけ少し遅れることを伝えてくれればそれでいい。元々何かあった時の為に数日かかるのを見越して予定を立てていたからな」
「それはいいが、難儀な物だな・・・マルクトもダアトも世界に対して正面から向かい合っているというのに、キムラスカだけあの二人の問題が残っているとは」
「ということはマルクトとダアトは特に問題ないということか・・・だがそれも元はと言えば俺が起こしたことだ。その問題に関して俺が出来る限りの事をするのがここでの最後の俺の役目だ。難儀だなどとは思わん」
「そうか・・・ならいい」
それでデスマスクがカノンと会話をした後にカミュが難儀なと言った事にカノンは自信のこもった微笑を向け、同じように微笑み返す。カノンに対して心配はいらぬとばかりに。





















・・・それでカノンとアイオロス達はそこで別れ、カノンはバチカルに残った。そして翌日・・・



「・・・どうされたのですか、お父様?ルークと私をお呼びになられるとは・・・」
「うむ、少し話がある・・・心して聞くのだ、二人共」
「「・・・」」
・・・インゴベルトの私室に来た、ナタリアとアッシュ。
そこで呼び出された二人はインゴベルトの真剣な空気に何事かと表情を引き締める。
「ルークよ。そなたの歳は今年で20になるのだったな?」
「はい、そうですが・・・もしや伯父上・・・!」
「うむ、察しはついたであろう・・・そなたらももういい歳だ。そろそろ結婚という段階に差し掛かってもいいだろうと思ってな」
「本当ですか、お父様!?」
そこで歳についての話題を振るインゴベルトにアッシュが察したような声を上げ、それを肯定するよう結婚についてを切り出せばナタリアが喜色満面の顔で喜びに声を揺らす。
「本当だ・・・しかし20になったからといって即座に結婚という訳でも、ましてや結婚に付随して王座を譲るという訳でもない。近い内にそう言った方向で貴族達に向け、話をする・・・そういう予定だ」
「・・・少し待ってください、伯父上。そのような話をわざわざするのは何か理由があるのではないのですか?予定があるという事程度でわざわざ人を呼びつけるなどと聞いたことはありませんし、公務をわざわざ中断してまで伝えることとは思えませんが・・・」
「・・・」
その笑みに対して肯定をするインゴベルトだが、アッシュが理由についてを鋭い視線を向けながら聞いてくる。こんな小さな事で呼ぶなと批難するかのように思えるトゲを感じさせながら・・・そんなアッシュにインゴベルトはそっと目を閉じ、間を少し空けて目を開く。
「・・・確かに本来ならこの事は今言うべき事ではないし、わしも言うつもりではなかった。だが少し事情が変わったと言うか、変えざるを得ないのだ」
「・・・事情?」
「うむ・・・話に何度も聞いたしわし自身も注意はしたが、そなたら二人が公務の際に度々どちらかの部屋を行くことがあっただろう・・・このようなことをハッキリ言うのは心苦しいのだがその行動が積み重なっているせいで、そなたらの貴族達からの評判がすこぶる悪いのだ」
「なっ・・・!?」
そして重大な事と言わんばかりに話を進めた上で貴族の評判が悪いと言い切ったインゴベルトにアッシュは絶句した、そんなことになっていると思ってなかったとばかりに。
「な、なんでそんなことを言われているのですか・・・お父様・・・!?」
「最初、わしはクリムゾンとそなたら二人について今言った事についてを話していた。だがそこでクリムゾンより言われたのだ。貴族達より不満が噴出していると・・・流石にわしには立場的にも直接言い難い物があったからだろうが、それでもルークの父であるクリムゾンの耳に入るようなことにまでなるとは思ってはいなかったぞ。そして流石に王族に対して無礼であるとは言え、元々そなたらの勝手で起こった事で貴族達を罰する訳にはいかんとクリムゾンが思い黙っていたとの事だが・・・分かるか、二人とも?我らはこう言った下が言いにくいような不満が出てくることを避けるために何度も口酸っぱく注意をしてきたのだ。上に立つ者が勝手なことをしては示しがつかぬ為にな」
「「・・・っ!」」
ナタリアは何故と自分達の行動は批難される物ではないとばかりの声を上げるが、今まで黙っていた理由に加え察せなかったのは二人のせいと厳しく言い切るインゴベルトに二人はたまらず視線を背けた。全くそんな不満が出ていることなど考えてなかったのを白状するかのように。










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