聖闘士の手より離れた世界

「・・・済まぬな、カノン。お前のおかげで覚悟が決まった」
「お役に立てたのでしたら何よりです」
そして改まった様子で頭を下げるインゴベルトにカノンは恐縮するでもなく平然と返す。
「さて陛下・・・カノンの話を聞いて私も心が決まりましたが、早速二人に話をするべく呼び出しますか?」
「うむ、そうするか」
「お二方、少々お待ちを」
「・・・なんだ、カノン?」
公爵もまた表情を改めやる気をにじませながら話を進めようとするが、カノンから制止がかかったことにインゴベルトはなんで止めるのかと首を傾げる。
「聞けばお二人の様子からすると、単に処分だけを持ち掛けたとしたなら一時大人しくはなってもいずれは気を持ち直すでしょう。例えナタリア様の事実を明かしたとて、聞いた話の様子からすれば二人寄り添う形で乗り切ろうと互いを励ましあいかねません。そうなれば以降の状況によってはより一層お二人の結束が強まり、お二方の言葉も次第に聞かなくなるばかりかもし公爵様に陛下のどちらもが逝去されたなら・・・牢から解き放たれた獣のよう、自分達の思うままに行動をしかねません」
「っ・・・むぅ・・・否定したいが、否定出来んな・・・だがナタリアの事実を最終手段とするべきと言ったのは他ならぬそなた自身であろう、カノン」
「はい・・・ですからその案に後付けという形でではありますが、打開案を申し上げたいと思っています。ただ、私の案に賛同していただけるというのであれば数日程の時間が必要ですが・・・」
「数日・・・それだけの用意が必要ということか。ただ話を聞かねばどうすることも出来ぬ。まずは話をしてくれカノン」
「はっ、かしこまりました」
そこで今の状況では二人について不安が残ると言うカノンに納得すると同時にならどうしろと言わんばかりのインゴベルトの言葉に、打開案はあるとカノンは告げる。しかし時間が必要という事にまずは話を聞かせろという公爵にカノンは了承して頭を下げた。


















・・・そして夜になり、カノンはバチカル城から出て街の宿を取って部屋に入った後にテレポーテーションで部屋を抜け出た。

それでテレポーテーションの先は夜の原野なのだが、そこには各地に行っていたアイオロス達の姿があった。



「すまんな、少し遅れたようだ」
「いや、それはいいが・・・何があった?」
「その事についてだが、俺はまだ数日程時間を取ってバチカルに滞在する。お前達は先に地球に帰ってくれ」
「・・・なんかあったのか?」
早速と話し掛けるカノンにカミュから遅れた理由についてを問われ、先に戻るように言うのだがデスマスクから目を鋭く細められた上で向けられた再度の問い掛けにふぅと息を吐く。
「・・・簡潔に言うならアッシュとナタリアの二人の最後の後始末をつけるためだ。そして陛下と公爵様も俺の案を聞いて、そうすると決断した。多少苦い顔をしていたがな」
「苦い顔って・・・どういうことですか、兄上?」
「事が事なだけにあの二人を制御するにはそれ相応の手段を用いねばならぬ・・・そうあちらに分かるように言ったらそうなったということだ」
「・・・成程、カノンはそこまでせねばならないと判断したということか。あの二人に対して」
「あぁ、そうだ」
それでカノンが簡潔に経緯だけを話すとルークが詳しい訳を求めるよう聞いてくるが、続けた言葉にアイオロスもそれだけの物だと察する。
「と言うわけだ。俺はそれを済ませるまではここにいるから、お前達は先に帰ってくれ」
「一人で大丈夫か?」
「あぁ、むしろ今の状況じゃ一人の方がやりやすい。大勢いると矛先が俺だけでなくお前達にまで向かって、話が長引きそうだからな」
「・・・ま、そういうことなら仕方ねぇ。俺達は先に帰るか。いても邪魔になりそうだしよ」
「あぁ、そうしよう。ルークもそれでいいな?」
「うん、兄上の邪魔になりたくないし」
そして改めて帰るように言いカミュからの確認に一人の方がいいと言えば、アイオロス達はその考えに賛同して帰ると決めた。カノンの邪魔をするまいと。









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