聖闘士の手より離れた世界
・・・そして数分後、許可を取ってきた公爵と共にカノンはインゴベルトの私室へと向かった。
「・・・久しいな、カノン。まさかこのような形で再び会えようとは・・・」
「突然このような形で押し掛けてしまい、申し訳ありません」
「いや、いい。目立たぬようにしていたとはいえ、かつてのこの世界を変えてくれた立役者を出迎えるのは当然のことだ・・・と言っても、今のキムラスカの内情はクリムゾンから大体は聞いておるのだろう・・・情けないことだ。親としても王としてもな・・・」
そして私室に入り互いに会話を交わすのだが、インゴベルトはすぐに顔を暗くして自虐的な言葉と共に首を横に振る。
「・・・その件についてですが私から打開案を申し上げたいと思っていたのですが、その前に一つ・・・お話ししたい事がございます」
「む・・・なんだ、話とは?」
「・・・実は我々は3年前の旅にて、ナタリア様の実父が誰であったのかを知りました」
「「!?」」
そんな姿を見て前置きを置いた上でカノンがナタリアの実父・・・つまりはラルゴの事実を知ったと切り出すと、インゴベルトに公爵の二人の目が驚愕に見開かれた。
「・・・カ、カノン・・・それは真だと言うのか・・・!?」
「はい・・・ですが当人がその事実を明かさないようにと願ったことと、よからぬ事を企てるような輩に話を聞かれればどのようなことになるか予想がつけられなかった為に今までその事実は口にはしませんでした。ですが当人の事は言えずとも、今の陛下達には必要な事と思いましたのでお話させていただきます」
「話・・・だと・・・!?」
インゴベルトはなんとか真実かと聞くが、カノンがラルゴの名を明かす気はないと言いつつ話すと言うと何事かと若干恐ろしげに声を漏らす。
「・・・3年前のある時、我々はとある事情によりある人物に話を聞いたところその人物がナタリア様の実父であると告白してくれました。ただその時には既にナタリア様が起こしたことに知られたことは取り返しのつくような状態ではなく、その人物も苦悩した様子ではありましたがナタリア様の事についてを諦めました」
「諦めた、とは・・・」
「預言により奪われた娘だからこそとも言えるのでしょうが、その人物はナタリア様への感情を捨てきれてはいないようでした。ですが我々が過度に干渉すべきではないと考えたことを伝えた上で、当人が起こした事の報いは当人の責任として受けてもらうようにすると言った時にナタリア様を救うようにとは懇願しませんでした・・・最早自分の関わるべきことではないと、覚悟を決める形で」
「そうか・・・だがその話を何故我々に・・・?」
「・・・お二方も両者と対すると決めた時に覚悟を決められたかと思いますが、これから覚悟を改まった形でするべきではと私は思いました。特に陛下はその人物もそうですが、その人物の妻から娘を知らないとは言え奪ってしまった身・・・だからこそその二人の為にも、陛下が心を鬼にするべき時が来たのだと感じていただきたいのです」
「っ!・・・心を鬼に、か・・・」
続けてラルゴの事を引き合いに出しつつ話をする中でインゴベルトは神妙に何故と訳を聞くと、カノンが本題とばかりにナタリアへの厳しい対処をするべきと言ったことに衝撃を受けたように身を引いた後に考え込むよう下を向く。
「陛下に公爵様がキムラスカの為に両者を抑えるため、苦渋の決断をしなければならぬという気持ちは重々に理解しています・・・だからこそいっそ、お二方は容赦を捨てる覚悟をするべきと思うのです。キムラスカの為にという大義名分もそうですが、一人の親として託された物・・・それがいかに重い物であるかを自覚した上で、改めて」
「託された物、か・・・確かにそうだな、今思えばわしは知らないままとは言え一組の夫婦から娘を取り上げて自らの子として育ててきた・・・そしてわしがその子を自らの手で裁かねばならぬと言うのに、引け目を感じてばかりでどう本当の親と向き合えるというのだ・・・!」
「陛下・・・!」
カノンの言葉にインゴベルトは徐々に気合いをみなぎらせていき、決意の言葉と共に顔を上げる。公爵もその固い決意に満ちた顔と話に感じ入っていたためか、同じような表情になっていた。
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「・・・久しいな、カノン。まさかこのような形で再び会えようとは・・・」
「突然このような形で押し掛けてしまい、申し訳ありません」
「いや、いい。目立たぬようにしていたとはいえ、かつてのこの世界を変えてくれた立役者を出迎えるのは当然のことだ・・・と言っても、今のキムラスカの内情はクリムゾンから大体は聞いておるのだろう・・・情けないことだ。親としても王としてもな・・・」
そして私室に入り互いに会話を交わすのだが、インゴベルトはすぐに顔を暗くして自虐的な言葉と共に首を横に振る。
「・・・その件についてですが私から打開案を申し上げたいと思っていたのですが、その前に一つ・・・お話ししたい事がございます」
「む・・・なんだ、話とは?」
「・・・実は我々は3年前の旅にて、ナタリア様の実父が誰であったのかを知りました」
「「!?」」
そんな姿を見て前置きを置いた上でカノンがナタリアの実父・・・つまりはラルゴの事実を知ったと切り出すと、インゴベルトに公爵の二人の目が驚愕に見開かれた。
「・・・カ、カノン・・・それは真だと言うのか・・・!?」
「はい・・・ですが当人がその事実を明かさないようにと願ったことと、よからぬ事を企てるような輩に話を聞かれればどのようなことになるか予想がつけられなかった為に今までその事実は口にはしませんでした。ですが当人の事は言えずとも、今の陛下達には必要な事と思いましたのでお話させていただきます」
「話・・・だと・・・!?」
インゴベルトはなんとか真実かと聞くが、カノンがラルゴの名を明かす気はないと言いつつ話すと言うと何事かと若干恐ろしげに声を漏らす。
「・・・3年前のある時、我々はとある事情によりある人物に話を聞いたところその人物がナタリア様の実父であると告白してくれました。ただその時には既にナタリア様が起こしたことに知られたことは取り返しのつくような状態ではなく、その人物も苦悩した様子ではありましたがナタリア様の事についてを諦めました」
「諦めた、とは・・・」
「預言により奪われた娘だからこそとも言えるのでしょうが、その人物はナタリア様への感情を捨てきれてはいないようでした。ですが我々が過度に干渉すべきではないと考えたことを伝えた上で、当人が起こした事の報いは当人の責任として受けてもらうようにすると言った時にナタリア様を救うようにとは懇願しませんでした・・・最早自分の関わるべきことではないと、覚悟を決める形で」
「そうか・・・だがその話を何故我々に・・・?」
「・・・お二方も両者と対すると決めた時に覚悟を決められたかと思いますが、これから覚悟を改まった形でするべきではと私は思いました。特に陛下はその人物もそうですが、その人物の妻から娘を知らないとは言え奪ってしまった身・・・だからこそその二人の為にも、陛下が心を鬼にするべき時が来たのだと感じていただきたいのです」
「っ!・・・心を鬼に、か・・・」
続けてラルゴの事を引き合いに出しつつ話をする中でインゴベルトは神妙に何故と訳を聞くと、カノンが本題とばかりにナタリアへの厳しい対処をするべきと言ったことに衝撃を受けたように身を引いた後に考え込むよう下を向く。
「陛下に公爵様がキムラスカの為に両者を抑えるため、苦渋の決断をしなければならぬという気持ちは重々に理解しています・・・だからこそいっそ、お二方は容赦を捨てる覚悟をするべきと思うのです。キムラスカの為にという大義名分もそうですが、一人の親として託された物・・・それがいかに重い物であるかを自覚した上で、改めて」
「託された物、か・・・確かにそうだな、今思えばわしは知らないままとは言え一組の夫婦から娘を取り上げて自らの子として育ててきた・・・そしてわしがその子を自らの手で裁かねばならぬと言うのに、引け目を感じてばかりでどう本当の親と向き合えるというのだ・・・!」
「陛下・・・!」
カノンの言葉にインゴベルトは徐々に気合いをみなぎらせていき、決意の言葉と共に顔を上げる。公爵もその固い決意に満ちた顔と話に感じ入っていたためか、同じような表情になっていた。
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