聖闘士の手より離れた世界

「・・・済まない、少しいいか?」
「っ、お前は・・・カノン・・・久し振りだな・・・!」
「あぁ、三年程になるな・・・」
そしてファブレ邸前に着き入口の兵士達に話し掛けると嬉しそうに声をかけてきたことに、カノンもまた微笑で返す。
「しかし今日はどうしたんだ?まさかお前が来るとは思っていなかったし、来るとも連絡を受けていなかったが・・・」
「・・・いきなりで済まないが、公爵様に会うことが出来るか執り成しをしてくれないか?出来るなら公爵様にだけ俺が来たと内密に伝える形でだ」
「どうしてだ?公爵様は今屋敷にいて、カノンなら今もファブレの中に入ってもいいとすぐに許可を出すと思うが・・・」
「・・・個人的にお話したいことがあってな。それに記憶を取り戻してからのルーク様には俺はあまり快く思われていなかったからな・・・」
「あぁ・・・そう言えばそうだったな・・・前はカノンの事を大層気に入っていたが、記憶を取り戻してからのルーク様はお前の名前を持ち出そうものならすぐにお怒りになるしな・・・」
そこで兵士のもう一人から用向きを問われ訪問の訳について答えるが、中に入れと言わんばかりの流れに『記憶を取り戻してからのルーク』とカノンは少し悲し気に持ち出し兵士も気まずげに納得する。
「・・・よし、分かった。ちょっと待っててくれ、すぐに掛け合ってくる」
「あぁ、すまん」
そしてそれ以上は言うまいと兵士が話題転換とばかりに屋敷内に入っていき、カノンは礼の言葉をその背にかける。









・・・そして数分後、兵士が屋敷内から戻ってきた。
「・・・話をつけてきた。ちょうど時間を空けていたから今から外に出るとのことだ」
「本当か?」
「あぁ。それでだが城の前で待つようにしてくれとの事だ。ゆっくり腰を据えて話をしたいとのことで、城の中の部屋を使うとおっしゃっていた」
「わかった・・・ではな」
そこで兵士から今すぐという返答が返ってきた事に礼を言い、城の前の方へと歩き出す。









「・・・カノンが来たと聞いてここまで来たが、本当にこちらに来ていたのだな・・・カノン」
「公爵様・・・お久しぶりです」
それで待つこと数分、城の前で待っていたカノンの元に公爵が現れた事で頭を下げる。
「・・・話があるということだが、ちょうどいい。こちらも状況をどうにかするための決め手がほしいと思っていた所だ。話に付き合うからには、こちらにも付き合ってもらうぞ」
「はい、それは勿論」
「では行くぞ」
「はっ」
そして言葉少なく会話を交わした後に二人は城に向かう、主従関係があった頃の名残そのままに・・・












「・・・よし、この部屋なら話を聞かれることもないだろう」
「大丈夫なのですか、お時間は?」
「時間については問題ない。本来なら今日は陛下に伺いを立ててじっくり時間をかけて話をしようとしていた所だ・・・アッシュとナタリア殿下についてな」
「・・・事情は少なからず聞いていたので多少は覚悟していましたが、二方はどうにもならなかったというところですか・・・しかしよろしいのですか?今この場でのみでも、アッシュの名で呼ぶとは・・・」
「・・・最早私は、アッシュを公の場以外で『ルーク』の名で呼ぶことは出来ん。この三年アッシュがファブレに戻って共に暮らしてみて分かった・・・アッシュは完全に貴族としての本分を神託の盾として活動していた時の心構えと混同してしまっている。それも今更元に戻すのは不可能と言える段階までだ・・・」
そして城に入った二人はある部屋に入室するのだが、早速のカノンからの話題と指摘に公爵はアッシュに対しての諦めを心底から滲ませていた。












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