聖闘士の手より離れた世界

「・・・確かにカミュさんの言う通りかもしれませんね。この三年、色々と忙しかった・・・辛いと思うことも多々ありました。人々がダアトから出たり、教団はこれからどうするんだというように長い時間討論してきました・・・ですが本当に不思議と充実していたと思えます。今となっては・・・」
「そうですね・・・私もそう思えます。何て言うか、強制じゃないっていうか、自分達でやってるんだって感じがするんですよね・・・それが今となって考えてみるとイオン様と同じ気持ちって感じで・・・」
「そうですか・・・それは二人が共に一人で抱えていては辛くなるだけのしがらみをいい意味で解き放ち、本当に自由になれた上でやるべきことをやっているからでしょうね。心に引っ掛かる物を残したままでは、やるべきことをやったとしても達成感など得られませんから」
「カミュさん・・・そう、ですね。カミュさんがそう言うならそうなのかもしれませんね・・・」
イオンとアニスは二人揃って穏やかな様子で話をしていくが、カミュのどこか実感のこもった寂しさを感じる声にイオンは精一杯に笑顔を作り頷く・・・かつて弟子である氷河と一度目に対峙して自ら手を下した後に覚えた感情。それは今となって思い返しても苦い経験だったと思ったが故、滲んでしまった感情を前にして。
「・・・少し話は変わりますが、僕達は色々と動いてはきました。ですがそろそろ導師の地位を降りようとも考えています」
「導師の地位をって、どういうことだイオン?」
「ローレライ教団が教団として意味を為して来たのは預言の達成の為ではありますが、同時に導師の血脈がこれまで絶えてこなかったからでもあるんです。ただ本当なら被験者が死んだ時点でその血脈も絶えていたのでしょうが、今の僕がいることで一応それらを避けるような状況になりました・・・ですがこれ以上教団が教団としての形を為さない以上は、導師という代表を無理に立てる必要はないと考えたんです。それに僕はまだ成人の年齢にすら至っていませんからね・・・この辺りが潮時だと思ったんです。代表という立場に立って動くのは」
「歳か・・・思い出してみたら被験者も10にもならない内から導師をしてたんだったか?」
「はい、そうです・・・ダアトがキムラスカにマルクトと違い教団という形で成り立っていたからこそだと思うんですが、教団が教団でなくなる以上はもうレプリカということを差し引いても年若い僕が代表でいるよりは大人の人に任せるべきだと思ったんです」
「そうか・・・」
イオンはそんな気まずさを隠すために話題を導師を止めることについて切り出し、ルークの疑問の声にそう思った理由を真剣に語り重く頷かせる。
「ならアニス、君はどうする?教団が教団の形でなくなると言うなら導師守護役も役目がなくなるということになるのではないのか?」
「それはもう考えてます・・・イオン様と一緒にダアトを出るって」
「ダアトを出る?」
カミュがその流れからアニスに導師守護役についてを聞くが、ダアトを出ると迷いのない晴れ晴れとした表情で返す様子に眉を寄せる。
「理由は二つあるんですけで、まず一つはイオン様が旅をしたいって言い出したから。それでもう一つはさっき言ったことに少し関係があるんですけど、トリトハイムさん達と話し合っていつまでもイオン様って言うか導師の血脈がいたら頼ってしまうんじゃないかって出てきたんです。教団っていうかダアトを率いてきたのは導師の血脈だから、これからもそうしようみたいにダアトの人は思うんじゃないかって」
「そういう流れになったらこれからの為にもならないですから、僕はダアトを出ることにしたんです。後を他の人達に任せる為に」
「いや、それはわかったけど・・・なんでアニスも一緒に出るんだ?肝心のそこを聞いてないんだけど・・・」
「あぁ、そうでしたね・・・今まで話した中身を受けて僕を支えたい、そうアニスが言ってくれたんです・・・」
「あはは・・・」
アニスとイオンはそうする訳についてを詳しく話すが、ルークが肝心な所と指摘すると二人は共に恥ずかしそうに頬を赤く染める。







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