聖闘士の手より離れた世界

「さて・・・まずは何を聞きたい?」
「ではまずマルクトはあの後どのようになって、今日に至るまでをどのように動かれていたのかを教えていただけないでしょうか?」
「どのように、か・・・まぁこちらは特に問題はなかったな。元々預言の中身にはマルクトが滅ぼされるとあったのもあるだろうが、プラネットストームを止めて以降にマルクト内で預言に第七音素の復活を願うといったような動きというのは見受けられることもなかった。キムラスカにダアトはこちらとは違うようだったが、それは当事者達がカノン達が話を聞かせるだろうからこちらでは割愛しておこう」
「成程。ということはマルクトは概ね良好といった所でしょうか?」
「ま、一応な・・・つってもジェイドは今の状況に不満を大分滲ませてる所だと俺も聞いている」
そして話題についてを振ってアイオロスの声に表情は変わらずピオニーは答えるのだが、デスマスクの声に頭をかきながらジェイドの事を切り出す。
「前に言い渡した処置を覚えているだろう。研究職にやるといった処置を・・・それでなんだが、ジェイドは研究職に就いても成果を挙げた。音素を必要としない新しい技術であったり、音素の代わりのエネルギーなどについてな。だが最近になって、自分はもうここにいるべきじゃないだろうと言ったことを言い出しているらしい」
「らしい?ということは陛下もですが、大佐殿も互いに会いに行っていないと?」
「お前達の言葉があったからな・・・俺から会いに行けば処分の意味がないとたまに人伝に報告を聞くくらいに済ませていたが、この三年でジェイドは一度も会いに来なかった。不満についてを遠回しに口にすることもなくだ・・・多分あいつの性格を考えると、俺の方から戻ってくれと言いに来るまでは自分からは行きたくないんだろうな・・・俺の方には」
「そうでしょうね、大佐殿の性格を考えれば」
ピオニーはそのまま話を続けていくが次第に呆れに近い感情を浮かべていき、受け答えをしていたデスマスクも同意して頷く。
「・・・その様子ではもう大佐を特別扱いするつもりはないようですね。そして陛下自身、大佐に対して心情的な部分で見切りをつけている・・・と」
「・・・まぁな。ジェイドを自分の近くから離すように配置してから三年近く経つが、お前達の助けを借りてとは言え俺はようやく周りに目を向けることが出来るようになったと思える。だがそのきっかけとなった肝心のジェイドにはそういった兆候が見られない・・・その事にこうした張本人である俺が言うのもおかしな話だとは思うが、どうなのかと思ってしまうんだ。何故あいつは変わらないのか、と」
「だから大佐殿には申し訳無く思いつつも、少なからず呆れを感じてしまう・・・と」
「・・・そうだ。だからと言って俺が直に何か言っていいのかと思うのもあるが変わるかどうかも分からんし、聞いたとしても最後には言外に突っぱねるだろうと思ってな・・・」
アイオロスがそこに今のジェイドに対する気持ちの確認を取ると、区切りはつけてはいるが改めて考えてみれば心残りがあるとピオニーは漏らす。
「まぁいいんじゃないですか?一々気にするっていうか、相手をする必要もないでしょう」
「デスマスク?」
「プライドが邪魔してるのか何なのかはこちらには分かりませんが、言って聞かない相手に無理に話をするというか分かるまで聞かせなければならない理由もないでしょう。ましてや自分から近付こうとする事を止めているんですから、一層聞く耳なんて持つわけないでしょう。自分のとこに来れば話をする、それくらいでいいんじゃないですか?・・・ただ、命が終わるまでに絶対に思い直すとは限りませんがね」
「・・・ジェイド自身が直接何か言うか、心変わりをしていなければ自分から会いに行く意味はないか・・・分かった、そうしよう。俺もいつまで皇帝としての地位にいるかも生きていられるか分からんが、その時が来なければその時とでも思おう」
そこに肩をすくめながら声をかけたデスマスクにピオニーは訝しげな声を上げるが、その中身・・・特に最後の言葉を受けてそっと目を閉じて頷く、結局はジェイドが変わらなければ何も意味がないと感じてしまった為に。












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