聖闘士の手より離れた世界

・・・外殻大地の降下、障気の中和、ローレライの音譜帯行き、そしてプラネットストームの停止・・・これらの出来事はオールドラントにとって大きな契機となり、各地で預言や音素に頼らない生活が始まるきっかけとなる物であった。

そしてそんな契機から三年・・・緩やかに動く世界の中、契機をもたらした者達が再びこの地に現れた。









「・・・失礼します、陛下」
「どうした、アスラン?何か用か?」
謁見の間で玉座に座るピオニーの元にフリングスが来て、至って通常通りにピオニーは返す。
「・・・アイオロス殿にデスマスク殿のお二方がこのグランコクマを訪れて参りました」
「何っ、あの二人がだと・・・!?」
だがフリングスからの報告にすぐに驚きに表情を変えた、まさかの予想していなかった中身に。
「どうしてあの二人がここに・・・?」
「何でもマルクトがどうなっているのかの経過を聞きに来られたとの事ですが・・・いかがしますか?」
「・・・ちょうどいい。今日はもう特に仕事があるわけではないからな。どこにいる、二人は?」
「今は客室で待っていただいていますが・・・陛下が自ら向かわれるのですか?」
「あぁ、あの二人なら護衛などについては特に心配もいらんだろう。俺は客室に行く・・・何か急用があればそちらに来てくれ」
「はっ、かしこまりました」
すぐに訳を問いフリングスからの返事が返ってくると、ピオニーは自ら部屋に向かうと意志を固めて譲らない旨を示す。フリングスはその言葉に反論せず、頭を下げた。






・・・そして客室にて、ピオニーが部屋に入室するとそこには三年前と変わらぬ元気そうな二人の姿があった。
「久し振りだな、二人とも」
「はい、陛下も壮健のようで何よりです」
「しかし、自らよくこちらに来られましたね」
「まぁそう言うな。お前達はマルクトにとってもだが、このオールドラントに生きる全ての者にとっても恩人なんだ。そんな存在を玉座に偉そうにふんぞり返って呼びつけるなどというのは礼に欠ける行為だ」
そして嬉しそうに笑顔を浮かべるピオニーにアイオロスも爽やかな笑みで返し、デスマスクの何処か含みが入った言葉にも些細な事だと返す。
「それで、どうしてここに来たんだ?それにカノンにカミュにルークは一緒ではないのか?」
「こちらに参ったのはオールドラントがどのように変わったのかと気にかけていたカノンに我々が付き合うためです。ただそうするにしても我々全員が一つ一つの場を回るのは、少し時間がかかるということになりまして・・・」
「だからこの際また五人で分かれて、各国に行こうとなったんです。この通り俺達はマルクト、カミュとルークはダアト、キムラスカにはカノンといった割当てでです」
「そうなのか?俺としてはアフロディーテ達も含めてお前達を全員歓迎したかったのだが・・・」
「今回の目的はあくまでもこの世界がどうなったかという確認ですからね・・・そう長く滞在するつもりはありませんし、カノン自身があまり乗り気ではありませんでしたので。ただ、アテナは喜んでアフロディーテ達も行けばいいとは言ったでしょうが・・・」
「成程、それはカノンの事を考えて止めておいたということか」
「そういうことです」
そして早速用向きと何故二人なのかと問うと、アイオロスとデスマスクが交互に話していきその中身に苦笑気味な笑みを浮かべる。らしいと言えばらしい理由に。
「まぁいいだろう。そういうことならお前達だけでも歓迎するし、何でも話に付き合おう。今日はもう特に仕事もないから、火急の用がない限りはな」
「心遣い、感謝します」
そして笑みを新たに自分が相手をするというピオニーに二人は頭を下げる、一国の王が直々に相手をするという本来であれば破格の対応に。







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