世界の確かな歩みが始まる

「さて・・・これからラジエイトゲートまで飛ぶが、用意はいいなルーク?」
「はい、兄上・・・でも本当に邪魔をしに来る人はいるのかな・・・?」
「可能性は低いだろうが、有り得ん訳ではない。ただ来るのなら容赦は出来ん・・・それは覚悟しておくんだ。他者を重んじる事なく自分の安寧だけを求め世界の在り方を歪めるやり方を選べる人物は、生半可な言葉で説得など出来るはずもないからな」
「・・・うん」
それでグランコクマから出た平野部でカノンが少し屈みながらルークに話し掛けるとその背中に身を預けながら重く疑問を口にするが、翻してはいけないと強く断言する背に顔を預けながら寂しげに声を上げる。
「・・・じゃあ行こう、カノン」
「あぁ、そうしよう」
そしてアイオロスの呼び掛けにカノンは頷き、四人は空を飛んでいく。ラジエイトゲートに向けて・・・


















・・・そして数時間後、カノン達はラジエイトゲートへと辿り着く。



「・・・さて、俺達は実際にこうやって制御板の前に立つのはほぼ初めてな訳だがどう操作すればいいローレライ?」
『心配はいらん。ミロ達により大方の操作は済ませてある・・・制御板のここを押せば後は外殻大地の降下は無事に行える。そして数時間後には外殻大地は魔界に無事に着地する』
「そうか・・・なら早速押させてもらおう」
・・・それで特に道中で立ち止まることもなくパッセージリングの制御板の前に来たカノンはルークの持つ鍵へと話し掛けると、ローレライがその身を現し制御板の部分にそっと第七音素の欠片を置きカノンはそこに指を伸ばす。
‘ポチッ’
「・・・っ、これが大地が下に降りる感覚か・・・初めて経験する感覚だが、何とも言い難い粟立ちを覚えるな・・・」
「空に大地が浮いてるってのを実感したからだろうな・・・セフィロトのおかげで普通に大地を踏み締める感覚ってのに違和感なくいられたが、それが無いから妙な感覚を抱いてしまう・・・」
「そう思うと、人はやはり大地が無ければ生きてはいけないのだろうな・・・飛行機にロケットなど様々な手段を使い空に飛び立ち空にいようとしても、結局人は空を飛び続けたままでは生きられない・・・外殻大地は障気から逃れるためという意味合いが強かったのだろうが、それでも不自然に空に留まり続けようとする事はもう無理な領域に入っていたんだろう・・・この世界の本来見られていた寿命に合わせて」
『だがそれもお前達のおかげで我らの見た未来を覆す事が出来る・・・その事は驚嘆に値すると共に、感謝をさせてもらう。この星に生きる生命の一つとして、星の終わりを変えてくれたことを』
「気にするなローレライ・・・最初こそはこのようなことになるとは思いもしていなかったが、事実を知っていく内に引かない方がいい・・・そう思うようになって動いた結果だった、それだけの事だ」
『・・・それでもだ』
そのまま制御板を押したことから足元が妙な感じになってきたことにカミュが気付き話が始まって徐々に大きくなっていき、終いにはローレライの切なる声が場にいる面々の間に響く・・・もうそろそろ終わりの時間に近付くからこそ、その上でルークも含めたメンバーとローレライはもう揃って会うことはない。だからこその言葉だった。









・・・そんな風に別れの空気を多大に滲ませながらも一同は思い思いに会話を交わしていった、外殻大地が魔界に降下しきるまで。












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