世界の確かな歩みが始まる

「・・・すまんな、時間を取らせてしまった。明日に向けて今日はもう休んでくれ・・・ではな」
「はい」
それでピオニーは空気を一新し、戻ると口にして部屋を退出していく。
「・・・ジェイドは大人しくするだろうってのはデスマスクの話で大体分かったけど、あいつそんなに軍属って言うか部下を引き連れて行軍する方が性に合うようなタイプか?それこそ研究職にって言うか、人前に立たない方が良さそうな感じもするし合うと思うんだけどな・・・」
「ん~・・・多分こう仕事をしろって最初に割り当てられたのが研究職になってたんなら、そうなってたろうよ。ただ前に聞いた話を思い出すと大佐殿は今の家に養子としてもらわれたんだったか、アイオロスよぉ?」
「あぁ、そう記憶している。その幼少時代から優秀だった姿を見込まれてと、大佐の妹が言っていたな」
ピオニーがいなくなったところでふとルークがジェイドの適性についての疑問を口にし、デスマスクが少し考え込んでから答えつつアイオロスに補足を求めると詳細について淡々と返ってくる。
「そうか・・・まぁ大佐殿を引き取ったカーティス家が軍属にしたかったからってのがあったから軍に入ったんだろうが、それでも大佐殿は大佐って地位になれるくらいには能力があった・・・この辺りに関しちゃどっちもこなせる才能があったからって事だが、なまじそんな風にこなせたもんだから大佐殿の中には大層な自信があっただろうことも想像がつくぜ。『自分はうまくやれてる、軍人として何一つ申し分無い力量を見せている形で』・・・ってな感じに思ってな。そしてそう言った自分に自信があるからこそ、軍人として求められず研究職で求められる事をプライドが許さない筈だ。軍人としての自分が否定されるような気持ちになる形でな」
「・・・でもそれって、結局は自分が何に向いてるとか考えてないって事だよな・・・?」
「ま、平たく言えばな。けど今更あの大佐殿はそれを自覚するとは思えねぇし、他の誰かに言われたってそんな素直に受け入れるはずもねぇ・・・なもんだから研究職に没頭するより、なんで自分を元の配置に戻さないんだって不満に思うまんまだろうよ」
「・・・そんな感じに考えるのか、ジェイドは・・・」
その返答を踏まえた上で話を進めジェイドの考えを推測するデスマスクに、ルークは何とも言い難い表情を浮かべる。変わる事は難しい、そうとしか言いようがない推測を前にして・・・


















・・・そのような形でジェイドという人物に微妙な気持ちをルークが抱くのだが、その他は特に何か起こることもなく夜が過ぎた。

その上でカノン達はグランコクマでの演説も特に問題は起きることなく進ませ、晴れて三ヶ所で外殻大地降下後の事についてを説明し終えた。



「・・・では後はよろしく頼むが、本当に船を出さなくていいのか?」
「はい・・・我々はテレキネシスを使えば空に浮くことは出来ますし、時間も船で行くより大幅に軽減出来ますから」
「そうか・・・」
それで使っていた部屋に戻ってきた一同の元にごく自然にピオニーが来て、この後の流れについて話し合う。
「・・・本当なら事が終わったら今までの礼にと宴でも開きたかった所だが、事が終わったらすぐに帰ると言うんじゃ仕方がない。だがもしお前達が元の場所に戻った後、また何かあってこちらに来ると言うなら遠慮なくグランコクマを訪れてくれ。誠心誠意もてなさせてもらおう」
「ありがとうございます・・・では我々はこれで」
「あぁ、ではな」
そしてピオニーが少し名残惜しそうにしている様子にカノンはそっと頭を下げてからルーク達と共に部屋を後にしていく、見送る視線を背にして・・・











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