世界の確かな歩みが始まる

『すげぇ人の数だな、これまた』
『やはりそれだけ人々の関心も高いということだろう・・・その分、私達に対しての視線もまた集中しているが』
『そりゃそうだろ。俺からしてもこんだけの人の前に聖衣を着て顔を出すなんざなかったが、こんな目立つ格好をしてりゃ当然だ』
デスマスクが小宇宙により声を上げ、カミュが返した声に当然と返す・・・そう、イオンの後ろを歩いているカノン達に対する人々のざわつきがあるのだ。好奇の視線を集める形で。それは鋭い感覚を持つデスマスク達でない事でも分かるくらいだった。



・・・そんな注目を人々から集める中で、イオン達は祭壇の前に来た。
「・・・皆さん、今日はお集まりしていただきありがとうございます。今日は事前に知らせていたよう、我々が知った事実・・・それらを皆さんにお知らせしたいと思います」
それで祭壇の拡声器越しに真剣に始まりを告げるイオンに、自然と人々は言葉を抑えて壇上に集中し出す。















・・・そこからイオンは現在の状況を細かに述べ上げていった。アクゼリュスは無事に魔界に降ろせたが他のセフィロトにより支えられたこの外殻大地もそう遠くない内に預言の中身など関係無く限界を迎える事、その為にいずれ魔界に外殻大地を降下させねば外殻大地は形を保てず崩れ落ちるという事、そして障気の発生を防ぐためにはプラネットストームの停止をしなければならないという所まで。



「・・・皆さんの生活に多大な恩恵をもたらす音素。特に預言を詠むには第七音素が必要な為に戸惑う人もいるかもしれません。ですが障気を出さないようにして、それでいて預言も詠めるままといったような両立は望めないというよりは出来ないのです」
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
それでイオンがプラネットストームの停止についてを毅然と口にすると、人々が一斉にざわざわとし出す・・・やはりいきなり預言を詠めない状況に陥ることは安全の為とは言え、どちらが大事かとは天秤にかけづらいのだろう。いや、正確には第七譜石という存在があるからこそ僅かな希望にすがりたいと、そういった気持ちも少なからず人々の中にはあるのだろう。
「少し静粛にお願いします・・・皆さんが動揺する気持ちも分かります。ですのでこれより私から後ろのアイオロスさんに話をする役目を代わらせていただきたいと思います。是が非でもそうしなければならない理由を彼から語っていただきます」
「・・・お話を代わらせていただきます、アイオロスと申す者です」
そんな様子にイオンがバトンタッチとアイオロスを呼び、カノン達と入れ替わるように後ろに下がって発言する様子に注目する。



・・・さて、ここで何故カノンが話すのではなくアイオロスが話をするのかと言えば、単純にバチカルでも同じことをする場合を考えてだ。カノンはかなりの年数をバチカルで過ごして来たのだ。今現在こそ顔を見えないようにとヘッドパーツで誤魔化してはいるが、声でカノンが話をしているのではとバレてしまう可能性も十分に有り得る話ではある。

そうなればこれからの話の流れがあるからというのもあるが、今までファブレで働いてきた事の意味がなんなのかといった声が出て話がこじれれば妙な事になるかもしれない・・・そういったもしもを考え、アイオロスにカノンは役割を頼んだのだ。自分がやるべき事ではあるが、それで意地を張って失敗しては何にもならないと思い。

ちなみにその人選に関しては三人の中で一番アイオロスが適格だとアイオロス自身を除き、全員が考えた為だ。次期教皇として選ばれた人格に加え、その言葉が誠実でいて強く人々に受け入れられると考えた為に。










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