聖闘士と冥府の誘い
「・・・失礼ですが、昨日の件とは?」
「・・・あ・・・えっと、それは・・・」
「昨日導師にたまたまお会いしたのですが、やりたいことがあると言われ少し感情的になられていたので失礼を承知でお言葉をおかけしたのです。内容としては今言ったような事で、そこまで大きな違いはありませんよ」
「・・・そうですか」
「・・・」
そこにジェイドは探るような視線で何事かと問い掛けるとイオンは動揺でうまく言葉を出せずにいたが、アイオロスが大したことがないと取れるように表現をぼかしながら微笑を浮かべて答え、ひとまずジェイドは納得したよう頷く。だがその傍らで確かにイオンは神妙にうつむき、悲し気な表現を浮かべていた。
・・・ここで昨日に時間は戻る。日も落ち始め夕焼けに染まるエンゲーブに、アイオロスは戻ってきた。だがそのエンゲーブの入口にいたのは・・・
「・・・あっ、戻ってきたんですね!アイオロスさん!」
「・・・導師。ここでお待ちだったのですか?」
「えぇ、いてもたっても居られず・・・」
アイオロスを見つけて満面の笑顔を浮かべるイオンと、側で少し固い笑顔を浮かべたアニスに真顔のカミュだった。
そんなイオン達にアイオロスは首を傾げるが、それでも待っていたと聞いたことで瞬時に真剣な表情に切り替える。
「・・・なら早速報告をした方がいいですね。そろそろ夜になるので、遅くならない内に終わらせた方がいいでしょう」
「はい、お願いします」
それで報告と言ったアイオロスにイオンは嬉しそうに頷く。だが事が意外に大事だったとイオンが気付くのは話を全て聞き終わった後だった・・・
「・・・という訳です。チーグルが食料を盗んでいたのはライガが住んでいた森を子供のチーグルが焼き、その詫びとして住み処をチーグルの森の中に移して食料を用意するためでした」
「それでアイオロスさんの説得のおかげで、ライガはチーグルの森から出ていってくれた・・・そういう事だったんですね。ありがとうございます」
そしてあらかたチーグルの森で起こったことを話終わると、イオンは嬉しそうにアイオロスに頭を下げる。
「笑い事ではありません、導師」
「・・・え?」
だがそんな礼を突き放すような声を向けられ、イオンは何なのかとキョトンとした様子で頭を上げる。
「私がライガの前に行ったときライガは野性の獣として、警戒心を剥き出しにして全身で威嚇してきました。一つ間違えればいつ襲われてもおかしくないほどにです。例え貴方がチーグルの森に行かなかったにしても、我々が止めずに一人で行ったなら貴方はそのような場面に出くわしていたのですよ。そしてもし間違えれば貴方の命はなかったかもしれない」
「・・・っ!」
「私が成功した、というのを喜んでくださるのは一向に構いません。ただ先程も言いましたが貴方の判断で貴方だけでなく、貴方の周りの者達にも多大な影響を与える事になるのです・・・願わくはこれ以降は例え自分の中の良心が痛んだとしても、正しい判断を下すようにされてください。それが導師としての責任を果たすことであり、引いては他の者の為になります・・・よろしいですね?」
「・・・はい」
・・・厳しくも暖かく、何よりも優しい。
最初はライガの危険性ともしもの場合の死の可能性を告げられイオンは顔を青ざめさせ唇を噛み締めていたが、次第に自分をたしなめながらも自分のことを思って優しい目で見てくるアイオロスにイオンはその注意を受け入れる以外に出来ず、ただ頷くしかなかった。
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「・・・あ・・・えっと、それは・・・」
「昨日導師にたまたまお会いしたのですが、やりたいことがあると言われ少し感情的になられていたので失礼を承知でお言葉をおかけしたのです。内容としては今言ったような事で、そこまで大きな違いはありませんよ」
「・・・そうですか」
「・・・」
そこにジェイドは探るような視線で何事かと問い掛けるとイオンは動揺でうまく言葉を出せずにいたが、アイオロスが大したことがないと取れるように表現をぼかしながら微笑を浮かべて答え、ひとまずジェイドは納得したよう頷く。だがその傍らで確かにイオンは神妙にうつむき、悲し気な表現を浮かべていた。
・・・ここで昨日に時間は戻る。日も落ち始め夕焼けに染まるエンゲーブに、アイオロスは戻ってきた。だがそのエンゲーブの入口にいたのは・・・
「・・・あっ、戻ってきたんですね!アイオロスさん!」
「・・・導師。ここでお待ちだったのですか?」
「えぇ、いてもたっても居られず・・・」
アイオロスを見つけて満面の笑顔を浮かべるイオンと、側で少し固い笑顔を浮かべたアニスに真顔のカミュだった。
そんなイオン達にアイオロスは首を傾げるが、それでも待っていたと聞いたことで瞬時に真剣な表情に切り替える。
「・・・なら早速報告をした方がいいですね。そろそろ夜になるので、遅くならない内に終わらせた方がいいでしょう」
「はい、お願いします」
それで報告と言ったアイオロスにイオンは嬉しそうに頷く。だが事が意外に大事だったとイオンが気付くのは話を全て聞き終わった後だった・・・
「・・・という訳です。チーグルが食料を盗んでいたのはライガが住んでいた森を子供のチーグルが焼き、その詫びとして住み処をチーグルの森の中に移して食料を用意するためでした」
「それでアイオロスさんの説得のおかげで、ライガはチーグルの森から出ていってくれた・・・そういう事だったんですね。ありがとうございます」
そしてあらかたチーグルの森で起こったことを話終わると、イオンは嬉しそうにアイオロスに頭を下げる。
「笑い事ではありません、導師」
「・・・え?」
だがそんな礼を突き放すような声を向けられ、イオンは何なのかとキョトンとした様子で頭を上げる。
「私がライガの前に行ったときライガは野性の獣として、警戒心を剥き出しにして全身で威嚇してきました。一つ間違えればいつ襲われてもおかしくないほどにです。例え貴方がチーグルの森に行かなかったにしても、我々が止めずに一人で行ったなら貴方はそのような場面に出くわしていたのですよ。そしてもし間違えれば貴方の命はなかったかもしれない」
「・・・っ!」
「私が成功した、というのを喜んでくださるのは一向に構いません。ただ先程も言いましたが貴方の判断で貴方だけでなく、貴方の周りの者達にも多大な影響を与える事になるのです・・・願わくはこれ以降は例え自分の中の良心が痛んだとしても、正しい判断を下すようにされてください。それが導師としての責任を果たすことであり、引いては他の者の為になります・・・よろしいですね?」
「・・・はい」
・・・厳しくも暖かく、何よりも優しい。
最初はライガの危険性ともしもの場合の死の可能性を告げられイオンは顔を青ざめさせ唇を噛み締めていたが、次第に自分をたしなめながらも自分のことを思って優しい目で見てくるアイオロスにイオンはその注意を受け入れる以外に出来ず、ただ頷くしかなかった。
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