双子の片割れの焔への従事
・・・茶の用意をするため、ルークの部屋を出たカノン。だがその背中には確かにある視線を感じていた。何処からなどとは言わないがガイの恨みがましい視線を。
「・・・手は出させん」
そんな状態にカノンは視線を向けることなく、ただ強い意志を込めた瞳で前を向き一言残し歩いていく。
・・・この屋敷内で暮らす最初の内、カノンはルークの世話係と言った立場の使用人のガイがルークと共にいる姿をよく見ていた。しかしそれもカノンが来ればルークはカノンにすぐ寄り付き、カノンがルーク専属の執事となった際にはガイはただの使用人と成り下がった。その時ガイから恨みがましい視線を向けられた事は何度かあり、当初はその名誉ある位置を奪われた恨みと思っていた。しかしその考えは間違いであると、その数日後に気付いた。
数日後の夜カノンは屋敷内でわずかながら殺気の漏れる気配を感じ、その気配の行方を内密に探った・・・そこでカノンはその殺気の持ち主と狙われている者が誰かを知った。その殺気の持ち主とは短剣を身に付けたガイであり、狙われているのは向かうであろう場所からルークの部屋以外に有り得なかった。
そのルークの命が危ういという状態に気付いたカノンは暗殺を防ぐため咄嗟にガイに近付き、声をかけた。いきなりのカノンの登場にガイは持っていた短剣を慌てて仕舞って、何をしていたのかという問いに眠れなかったから外に出ていたなどと言い慌てながら誤魔化すようにさっさと逃げていった。
・・・本来ならそこでガイの悪行を明かし、真実を白日の元に晒したかったカノン。だがファブレ邸に来て日が浅く、現行犯で誰か他にいなければ自分の方が疑われかねないと信用のない自分の現状からガイを捕らえるのは難しいと見ていた。下手に告げ口をしても雇われた年月の差がある分、自分の言うことを聞いてくれる可能性は低いとも。
故にカノンはそこではガイを捕らえる事を諦め次に尻尾を出せば有無を言わさず捕らえようとしていたのだが、カノンを警戒してなのかガイは実際に行動を起こすような事はなかった。それもカノンが事前にその気配を察知してさりげに妨害して、未遂に終わったのを差し引いての事ではあるが・・・
(・・・前から思うが解せんな。殺そうとしている相手に信頼を得ることは確かに有効な手段ではあるだろう。懐に入ればそれだけ隙が見えてくるからな。だがだからと言って自分が記憶を失った後甲斐甲斐しく育てたからと言って、気安く接していい理由にならん。現に公爵や俺がいない場ではルークと対等な言葉遣いで話しているらしいが、当の本人はそれを当然の物としている。ルークに不審がられているとも考えずな・・・)
茶の用意を整え部屋に戻り、ルークに茶を提供したカノンはそっとガイの事を考える。その行動の是非を。
・・・ただそんな殺意を持っているにも関わらず、ガイは表向きはルークにやたら明るく接してきた。それも誰の目もない時は決まって口調を崩し、いかにも自分はお前の育ての親でわかってやっているんだといった上から目線な具合でそれも勝手に窓から室内に侵入してきたりなどしてだ。
ただそんな態度は臣従の態度は崩さずとも真摯に自分に向き合ってくれるカノンを持つルークにとって、なんであんなことをするのかわからないといった物だった・・・身近に比較対象があると人は比べてしまう物だ。ましてや言い方は悪いがそれが最高と最低では余計に目を引くだろう。
そんなルークの話を受けカノンは一瞬思考がストップしかけたが、ルークの本心を聞くいい機会だと丁寧に話をその先へと誘導していった。そうしたら出るわ出るわのガイへのルークの不満・・・正直色々鬱陶しいとか上から目線はなんでだとか押し付けがましいだとか、他にも沢山あるがあくまで一部だけを抜粋しても従者としては失格と迷いなく言えるほどに酷い有り様の言葉をルークに吐かれていた。そしてそんな感情を向けられていることを知らないガイは態度をけして改める事はない、それがより一層ルークとの距離を開かせているとも知らず。
(ただ・・・どうなるにせよこの現状ではあまり大事に出来ん上に、大事にしたらどう転ぶかわからんからな・・・やはり今は慎重に進めるしかないか。ガイにあの男・・・ヴァンの真意を見極める為にな)
・・・欲目を差し引いたとて明らかに自分とガイの間にはルークの信頼という点で、今なら実績も踏まえた上で大きな隔たりがある。そう確信出来るカノンでもまだ行動に移るべきではないと考え、思考を横に置きルークに集中して視線を向ける・・・ヴァンという存在を警戒する気持ちを置きながら。
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「・・・手は出させん」
そんな状態にカノンは視線を向けることなく、ただ強い意志を込めた瞳で前を向き一言残し歩いていく。
・・・この屋敷内で暮らす最初の内、カノンはルークの世話係と言った立場の使用人のガイがルークと共にいる姿をよく見ていた。しかしそれもカノンが来ればルークはカノンにすぐ寄り付き、カノンがルーク専属の執事となった際にはガイはただの使用人と成り下がった。その時ガイから恨みがましい視線を向けられた事は何度かあり、当初はその名誉ある位置を奪われた恨みと思っていた。しかしその考えは間違いであると、その数日後に気付いた。
数日後の夜カノンは屋敷内でわずかながら殺気の漏れる気配を感じ、その気配の行方を内密に探った・・・そこでカノンはその殺気の持ち主と狙われている者が誰かを知った。その殺気の持ち主とは短剣を身に付けたガイであり、狙われているのは向かうであろう場所からルークの部屋以外に有り得なかった。
そのルークの命が危ういという状態に気付いたカノンは暗殺を防ぐため咄嗟にガイに近付き、声をかけた。いきなりのカノンの登場にガイは持っていた短剣を慌てて仕舞って、何をしていたのかという問いに眠れなかったから外に出ていたなどと言い慌てながら誤魔化すようにさっさと逃げていった。
・・・本来ならそこでガイの悪行を明かし、真実を白日の元に晒したかったカノン。だがファブレ邸に来て日が浅く、現行犯で誰か他にいなければ自分の方が疑われかねないと信用のない自分の現状からガイを捕らえるのは難しいと見ていた。下手に告げ口をしても雇われた年月の差がある分、自分の言うことを聞いてくれる可能性は低いとも。
故にカノンはそこではガイを捕らえる事を諦め次に尻尾を出せば有無を言わさず捕らえようとしていたのだが、カノンを警戒してなのかガイは実際に行動を起こすような事はなかった。それもカノンが事前にその気配を察知してさりげに妨害して、未遂に終わったのを差し引いての事ではあるが・・・
(・・・前から思うが解せんな。殺そうとしている相手に信頼を得ることは確かに有効な手段ではあるだろう。懐に入ればそれだけ隙が見えてくるからな。だがだからと言って自分が記憶を失った後甲斐甲斐しく育てたからと言って、気安く接していい理由にならん。現に公爵や俺がいない場ではルークと対等な言葉遣いで話しているらしいが、当の本人はそれを当然の物としている。ルークに不審がられているとも考えずな・・・)
茶の用意を整え部屋に戻り、ルークに茶を提供したカノンはそっとガイの事を考える。その行動の是非を。
・・・ただそんな殺意を持っているにも関わらず、ガイは表向きはルークにやたら明るく接してきた。それも誰の目もない時は決まって口調を崩し、いかにも自分はお前の育ての親でわかってやっているんだといった上から目線な具合でそれも勝手に窓から室内に侵入してきたりなどしてだ。
ただそんな態度は臣従の態度は崩さずとも真摯に自分に向き合ってくれるカノンを持つルークにとって、なんであんなことをするのかわからないといった物だった・・・身近に比較対象があると人は比べてしまう物だ。ましてや言い方は悪いがそれが最高と最低では余計に目を引くだろう。
そんなルークの話を受けカノンは一瞬思考がストップしかけたが、ルークの本心を聞くいい機会だと丁寧に話をその先へと誘導していった。そうしたら出るわ出るわのガイへのルークの不満・・・正直色々鬱陶しいとか上から目線はなんでだとか押し付けがましいだとか、他にも沢山あるがあくまで一部だけを抜粋しても従者としては失格と迷いなく言えるほどに酷い有り様の言葉をルークに吐かれていた。そしてそんな感情を向けられていることを知らないガイは態度をけして改める事はない、それがより一層ルークとの距離を開かせているとも知らず。
(ただ・・・どうなるにせよこの現状ではあまり大事に出来ん上に、大事にしたらどう転ぶかわからんからな・・・やはり今は慎重に進めるしかないか。ガイにあの男・・・ヴァンの真意を見極める為にな)
・・・欲目を差し引いたとて明らかに自分とガイの間にはルークの信頼という点で、今なら実績も踏まえた上で大きな隔たりがある。そう確信出来るカノンでもまだ行動に移るべきではないと考え、思考を横に置きルークに集中して視線を向ける・・・ヴァンという存在を警戒する気持ちを置きながら。
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