世界の確かな歩みが始まる

「では僕達はいつそうしてもいいようにするための準備に戻りましょう、アニス」
「あ、その前に・・・ルーク、テレポーテーションの時に驚いてるように見えなかったけどもう慣れたの?」
「・・・あぁ、そう言えば確かに驚いてませんでしたね」
それで早速戻ろうと口にするイオンだが、アニスがふと口にした疑問に興味を示し立ち止まる。
「慣れたっていや慣れたのかな。時間があったから小宇宙の燃やし方だとか体の鍛え方だとか四人が色々教えてくれて、その中でテレポーテーションとかも含めて見せてくれたしな」
「そうなんだ・・・」
「・・・そう聞くと本当にルークはこの世界からカノンさん達の所に行くんですね・・・公爵やインゴベルト陛下にはその旨を伝えたと聞いたのですが、アッシュに対して思うところはないのですか?実際に顔を合わせて話し合いたい事だとか・・・」
「話し合いたいねぇ・・・別にねぇよ」
ルークはその声に至って普通に返すが、イオンが気まずげにアッシュの名を出したことにも平然と返す。
「あいつと会ってからそんなに長い時間も一緒にいなかったし言葉も交わさなかったけど、あいつが俺をいらねぇっていうか否定する事を選んだのは紛れもない事実だ。そして俺はそれを受け入れたし、兄上達と一緒に行くことを選んだ・・・話し合うどころかもう二度と会う気もないし、向こうも俺に会うことなんか望んでねぇだろ。それに何も俺からあいつに言うこともないから、別に無理に会う理由もない・・・って訳だ」
「・・・そう、ですか」
もう既にルークの心の中にはアッシュに対する気持ちは何もない。理由をつらつらと何事もないかのよう上げるルークの姿に、イオンはそれ以上何も言うことも出来ずに受け止めるだけに留める。
「・・・すみません、変なことを聞いてしまって。では僕達は戻ります、皆さんはまたゆっくりとしてください」
そして改めて失礼すると頭を下げて退出するイオンにアニスも会釈してその後に続く。
「・・・ま、自分に会ったら文句しか言わねぇ奴となんか誰だって会いたくねぇわな」
「まぁな。それにもうアッシュからしたって俺に会いたいなんて思わないだろうし、そう言うって事はろくでもないだろうってのも簡単に予測がつくしさ。俺に対して文句とか罵倒を言いたいだけだろうってな」
「だろうな。ろくでもないってのは間違いねぇ」
そして二人が出た後にデスマスクが愉快そうに笑みながらかけた声にルークも笑いながら答える。
「とは言えバチカルに行くことになったなら、アッシュが私達に突っ掛かってきてルークの事にまで言及してくる事も十分に有り得る。そう言った可能性を考慮してバチカルでは宿でジッとしてもらうぞ」
「あぁ、分かってる。今になって俺とアッシュの二人の事で問題を引き起こすなんて、俺は望んじゃいないしな」
カミュはそんな様子を戒めるようバチカルでの行動についてを口にし、ルークもすぐに理解していると表情を少し引き締めて返す・・・アッシュが暴走してしまうのは、当人が暴走と理解してないからこそ危険な物な為に。

















・・・そして数日後、再びイオンとアニスがカノン達の部屋へと訪れた。
「・・・アクゼリュスが魔界に降りた事をダアトの人々に伝えて数日になりますが、一先ずは受け入れていただいています。ですので三日後に人々に発表の場を設けたいと思います・・・ローレライの事を明かす為の場を」
「・・・分かりました・・・!」
それでイオンから口にされたいよいよの正念場の日の告知に、カノンは真剣に頷く。仕上げの為に失敗出来ない事態を前にし。









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