世界の確かな歩みが始まる

「・・・ではそういったモースの復活を阻止する為、一輝は手を下したと言うのだな?それも再起不可能と言えるようなレベルで」
「・・・再起不可能、か。おそらくそれは間違いないと見ていいだろう。もはや預言がどうとかを考える事はおろか、食べ物を食べることすらロクに出来るような精神状態ではない。現にこの数日で食べた食事も正確には無理に粥を掬った匙を口の中に入れ、顎を上に上げて口を開かせ押し流す形でしか食えなかったようだ」
「っ・・・そこまでなのか、今のモースの状態は・・・」
カミュがそこからモースの状態について核心を求める問いを向けると、いかに重症なのかを語るカノンにルークは若干顔を青ざめさせながら声を漏らす。
「ただ、今の状況を考えるとモースに無駄にでしゃばられるような事態になったならそれこそ取り返しがつかないことになっただろう・・・預言の中身を本当だとは認めず、都合のいい繁栄が詠まれた未来でなければ認めない。先の会談で話したような者達の代表者として台頭し、行動するといった結果になりかねない事もな」
「確かに十分有り得るだろうな・・・徐々に意識を取り戻す中で周りが預言を詠まない事に体制を移していくということを知ったなら、モースからしたらとても認められる物じゃないはずだ。特に自分がそうすると決めた場にいないことから尚更にそう思うだろう」
「まぁいたところでプラネットストームの事を含めて、まともに信じて協力してくれるなんて可能性は相当に低かっただろうけどな。それこそ嘘だ、の一点張りで話を聞かなかっただろうよ」
「・・・そう考えたら、モースに一輝が幻魔拳を打ったのはやり過ぎだって言えない感じがするよな・・・」
「・・・一輝がやったことは私達に相談もなく起こした行動だが、結果として見れば後の禍根を絶った・・・確かにやり過ぎと見るかどうかは難しい所ではあるな・・・」
「「「「・・・」」」」
・・・一輝の行動。それがもたらした物を考え場のデスマスクを除いた四人がなんとも言いがたい空気を漂わせる。見ようによってはやり過ぎと取れるからこそどう言っていいかわからない為に。
「・・・ちなみに導師はどう言ってたんだ?その状態の大詠師サマについてもだが、元々どういった処分をするかについても聞いてないのか?」
「導師か・・・」
そんな時に一人平常のデスマスクが向けてきた問いに、カノンも少し気を取り直す。
「・・・モースの状態を確認したら複雑そうな顔はしたが、この方がいいのかもしれないと言ってはいた。話によれば詠師陣と話し合いをした結果、大詠師の地位の剥奪をすることにしたらしいが・・・それを回復したモースがまずすんなり受け入れるとは詠師陣含め、思っていなかったようだ」
「そりゃそうだろ。あの大詠師サマが地位もだし預言が詠めなくなることなんて望むわきゃねぇ・・・まぁ一輝が見せたらしい幻からの言葉じゃ、大詠師って地位は誰かにやろうとしてたっぽいがな」
「・・・そこについては置いておいて話を続けるが、地位剥奪にすんなり頷かないだろうこともそうだが預言が詠めなくなることを享受出来るかも疑問だったそうだ。だからこそ導師自身はいい顔はしていなかったが、今までの行動を裁判にかける予定だったらしい・・・まぁそれも今のモースの状態を見て、どうするのかというのを協議し直すと言っていたがな」
「ま、そうするってんなら大詠師モース様は大病を患われたので退位しました・・・みたいに言うのが一番収まりがいいだろうな。んで適当に看護してポックリいくまで面倒を見るで、問題ねぇだろ。大詠師サマの処分はな」
それでカノンから話されるイオンから得た情報に、デスマスクは気楽に頭をかきながら予測する・・・もうモースの未来は精々そんなものだろうと。










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