世界の確かな歩みが始まる

「では私はこれで失礼します・・・ローレライからの話を人々に聞かせるための話を舞台の準備を整えてきますので」
「はい、お願いします」
それで言うべき事も言い終わった為、トリトハイムはカノン達の礼を受けながら部屋を退出していく。
「・・・どうしたんだよ、アニス?お前も戻らないのか?」
「あ~、いや、その・・・私の両親についてはどうなるのかなって・・・」
「あぁ、そういうことか」
だがアニスが残った事にルークが疑問を向けるが、言いにくそうに両親と言う姿にカミュが納得の声を上げる。
「それだったら次にキムラスカに向かう際に二人に帰ってきてもらうようにとこちらから伝言をしよう。大詠師がいなくなった今、両親を盾にして従属を強いてくる輩はもういないだろうからな。それで君の両親は無事にダアトに戻れるようになる」
「そうですか・・・」
「・・・」
「・・・えっ・・・?」
カノンがならと両親についてこうすることを示すが、どこか浮かない様子で頷くアニス・・・そこにカミュがおもむろに近づき、アニスの両肩に優しく手を添えて顔を向き合わせてきたことに思わずアニスは戸惑いに声を上げる。
「・・・今少なからず不安を感じているのだろう?また両親に何かが起きるのではないかと、そういった不安を」
「っ・・・はい、そうです・・・ファブレの屋敷で一緒にいる時間の中、パパ達は私に謝ってくれました・・・辛い想いをさせたし、もしかしたら今まで以上に辛い目に合わせてしまうかもしれなかった状況にいさせてしまうかもしれなかった・・・そういったことになるかもしれなかったことを気付けず、考えもしなかったって後悔しながら言ってくれて・・・」
「そう両親が考えてくれていると言うなら心配することはないだろう。だが人のいい両親についてを不安に思う気持ちが拭えないと言うなら、何かあれば自分や周りに相談してほしい・・・そう両親に言うんだ」
「周りにって・・・」
「前は君の言葉を聞いてくれなかった、そういった不安があるのだろう。だが今なら聞いてくれるともと考えているからこそ、迷っている・・・ならばこそ、もう一度自分達がいると言うのを強調するべきだ。その事を言わねばまず何をするにしても始まらない」
「・・・そう、ですよね・・・確かに、そうしないと始まりませんもんね・・・!」
カミュはそんな戸惑いの理由を両親についてと察して話をし始めると、アニスも苦い様子で頷き返す。だがカミュの微笑からの励ます声に、アニスも次第に表情を明るくさせていく。
「ならいい・・・だが忘れるな。私達はもういなくなるが、君には両親だけではなく導師を始めとした人々が周りにいる。一人で悩むことはない。君は一人ではないのだからな」
「っ!・・・はい、ありがとうございます・・・」
そして最後とばかりに言葉を送ると共に頭をなでたカミュに、アニスは一瞬で顔を赤く染め上げて視線を反らしながら礼を告げた。
「・・・じゃあ、私はこれで失礼します・・・まだゆっくりしていてください・・・!」
そのままアニスは誤魔化すように早口で部屋を退出していった、居たたまれなくなったように。
「うわぁ・・・初めて見た、あんな場面・・・」
「まぁカミュは優しいからな。女性からしたら魅力的に思うのは間違いないだろう」
ルークはその光景を唖然としたように見つめ、アイオロスは笑顔で答える・・・年齢や体系的にアニスは子供に寄っているとは言え、女性が恥ずかしさに逃げるという状況について。









7/31ページ
スキ