世界の確かな歩みが始まる

「それより俺として意外だったのは謡将がこの道程の中で全く反感だとか行動を見せなかったことだ。あの男はよく言えば気骨があり、悪く言えば諦めがよくなさそうに思えた。いかにカノン達の力を見たからと言って、この旅で何も起こそうとしないのは妙な気もするんだが・・・」
「確かにあぁいったタイプは諦めは悪いだろうね。だが同時にそういったタイプは精神的な意味で支えを失えば、その諦めの悪さは反転して潔さに変わるものだ。おそらくカノン達が自分達が望んだ事を形が大分違うとは言え成し遂げようとしていることが大半を占め、残りは彼の妹を含めた彼に関する者達の様々な変遷があったから心変わりをしたのだろう・・・もう諦めるべきなのだろう、と」
「成程・・・そういった理由か」
続けてミロがこれまでのヴァンについてを疑問に思うが、アフロディーテの推測を聞いて納得する。



・・・セフィロトを巡る中でミロ達、と言うよりはミロはヴァンに対して警戒心を抱いていた。まだ計画を諦めきれてはいないのでは、この旅で何か起こそうとしてくるのではないかと。だがミロの予想に反して、ヴァンは何の行動を起こすどころかそんな素振りを見せることはなかった。素直にミロ達の行動に付き従って来たのだ。これまでの旅で。

ただミロより三つ歳上で考え方も柔軟なアフロディーテからしてみれば、ヴァンに対して必要以上に警戒を持つ必要はなかった。最早ヴァンが計画の建て直しを物理的と精神的な面の両方から見て計れるとは到底思えなかった為に。故にミロ程アフロディーテは警戒をしてはいなかった、ヴァンが何かをすることに関しては。



「まぁどちらにせよ後残るセフィロトもそう数は多くない・・・そこまで済ませれば私達の役目も終わりで、カノン達に後を任せるのみだ。警戒をしないでいいとまでは言わないが、気楽に行こう。ミロ」
「そうだな・・・お前の言うとおりだ、アフロディーテ」
・・・そんな二人だからこそ、アフロディーテがミロの舵を取るという形になる。
普段の交流はあまりないのだが自然と年上として引っ張るアフロディーテに、ミロもまた自然と笑顔を浮かべて頷いた。














・・・そんな風にしてミロ達がセフィロト巡りをする中、カノン達の元にトリトハイムとアニスが訪れた。



「・・・後はラジエイトゲートを操作すれば全てのパッセージリングの操作は済み、アクゼリュスの降下を待つだけになる・・・とミロさん達からの手紙を受けとりました」
「そうですか・・・ちなみにアクゼリュス降下の件はダアトの人々には受け入れてもらっているのですか?」
「おおむね順調です。キムラスカにマルクトからも同じような内容の手紙が来ていますが、まだ実際には信じきれないといった人も中にはいるようです。ただそう言った人達はやはり実物というか、実際に体験してみないことには変わらないでしょう」
「そうでしょうね」
そこで事態の経過についてを話し合うカノンとトリトハイムだが、二人共に気負いだとかいった様子はなく穏やかな空気があった。
「とりあえず、後数日程でラジエイトゲートのパッセージリングの操作も終わりアクゼリュスの降下もミロさん達が行う事でしょう・・・そこから先は、貴殿方の仕事です」
「はい、それは分かっています」
しかしすぐにトリトハイムが表情を引き締める姿にカノンもまた同じように応える、ここからが本番だと分かっているからこそ。










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